追憶04:話すきっかけは?
「……ケータイ。どこだろう。」
僕は駅でケータイを鞄から出そうとして、ケータイが無いことに気が付いた。
夜十神君から逃げるように教室から出てきたから、その走っている間に落としたのかな。
……どこで落としちゃたんだろ。
別に無くても困らないけど、"オトモダチ"から連絡来てたら後が面倒くさいなー。
まぁ、きっとあの教室だろうな。
でも、今戻っても学校閉まってるし……。
「……明日、かな。」
僕がそう呟くと、駅のアナウンスがちょうど鳴った。
電車が来たみたい。
僕は電車に乗り込むと、イヤホンをつけてゲームの電源を入れた。
今日中にここは、クリアしたいなー。なんて、思いながら。
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「……新しく買わないとかな。」
僕はいつもより早く学校に来て、あの教室に来ていた。
教室をいくら探しても、僕のケータイは結局見つからず。
そろそろここを離れないと、誰かに見られるかもしれないし……。
この教室に来る人は気味悪がられるし、僕の"リアル人生ゲーム"が滅茶苦茶にならないように早く教室に行こう。
辺りに気を使え、絶対に見つかるな。
このゲームはセーブもリセット出来ないんだから……。
まぁ、こんな時間だし校舎にいるのは朝練をやってる人くらいかな。
今日は外で運動部が、中で吹奏楽部。
ということは、音楽室の前さえ通らなければバレる心配は低いってことだね。
あ、後は窓から運動部に見られないように気を付けないと。
僕はそう決心すると、教室の外に人がいないことを耳をすませて確認してから教室を出た。
「あれ?ケータイ探しに来たの?」
そんな声が聞こえて、僕は慌てて振り返った。
そこにいたのは、夜十神君だった。
僕は教室の外に人がいないことを確認したはずなのに……。
どうして、こいつがいるわけ?
「んー?あ、俺?俺は、朝はここに来て本読んでるんだ。」
……朝は、本読んでる?
ということは、毎朝ここに来てるってことか。
……会いたくない奴と会っちゃたなー。
「……ふーん。じゃ、僕は行くから。」
そう言って僕は、ここから立ち去ろうとした。
すると夜十神君は、笑って僕の教室を指差した。
「ケータイなら、落ちてたから机の中に入れといたよ。」
「え。」
僕が驚いて目を見開くと、夜十神君は悪戯に笑った。
「だからさ、話そうよ。ケータイ届けたお礼だと思ってさ。どうせ暇だろ?」
……暇だけど、あんたと話すほど暇じゃねーよ。
それに、あまり関わりたくないっていうのが本音。
こいつと話してると、まるで心を見透かされてるみたいで落ち着かない。
それに、こいつが本当にケータイを届けてくれたかも定かではないわけだし。
……でも、ケータイを探してるって事が分かってるってことは本当のことなのかな?
「あ、俺。嘘はつかないよ?」
「……だから?」
「話そうよ。まだ朝のHRまで時間あるんだしさー。」
しつこいな。
でも、時間があるのは本当だし。
ここで断って、教室で何か言われても面倒。
そう考えると僕は、再び教室に入った。
それに夜十神君は、ご機嫌になって僕に続いて教室に入ってきた。
「……別に僕は君に話すことなんて何もないけど。」
僕がそう言うと、夜十神君は笑った。
「別に無理して話すことは無いよ?俺の話に付き合ってよ。」
そう言って夜十神君は、笑って話始めた。
その話を僕は顔を背けつつ、聞いていた。
_______これが僕達が話すきっかけ。




