追憶02:天然は鈍感とは違う?
「空琉ちゃん。今日、カラオケ行こうよ。」
帰りのHRが終わり、教室を出ようとすると美波ちゃんが話しかけてきた。
うわぁ.........。マジか。疑問符がついて無いんだけど。
拒否権無しって感じじゃんか。
まぁ、いつもなら行くけど……。
今日は、ねぇ………?
「あ、うん。行きたいのは山々何だけど、今日はどうしても外せない用事があって……。また今度、誘ってくれるかな?」
申し訳なさそうに謝ると、美波ちゃんは少し驚いたように目を見開いた。
普段は行くから、大方珍しいとか思ってんだろうなー。
「珍しいね!!分かった。また今度行こうね。バイバーイ。」
そう言うと、美波ちゃんは他の"オトモダチ"達と教室を出ていった。
私は笑顔で手を振りながらそれを見送ると、鞄を持って僕も教室を出た。
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「んー……。ここ、だよね?」
今僕が立っているのは、噂の教室。
今日夜十神君に言われた場所。
……中に人の気配がある。
こんな場所に来るの人はなかなかいないし、夜十神君かな。
って言うか"オトモダチ"曰く、夜十神君しかここには来ないらしい。
だから夜十神君は皆から、気味悪がられているみたいだけど。
まぁ、人が寄り付かない場所を好むのは僕にも分かる気がするけど。
僕がその教室の扉を開けると、案の定夜十神君がいた。
机に座って、歌を歌っていた。
……こいつ歌上手いな。
僕が来たことに気がついて、夜十神君は嬉しそうに顔をこちらに向けた。
「あ。来てくれたんだ。」
それに僕は、笑顔を張り付けた。
「うん。でも来たのは、さっきの事聞きに来ただけだよ?」
そう言うと夜十神君は、何故か残念そうな顔をした。
何で残念そうな顔をしたのかは謎だけど、さっさと聞いて帰りたい。
「んー……。そっか。だって、あれだよ。あれ。」
.........いや、どれだよ。
あれ、これ、で伝わるほど親しくないわ。
って言うか、話すのが今日で初めてだし。
「……えっと。どれ?」
そう言うと、夜十神君は首を傾げた。
こいつ天然入ってんのかよ。面倒何だけど……。
「んーと。だからさ、演技的なやつのこと?」
........天然は天然らしく、鈍感でいろよ。
本当ウザい。こいつは僕が自分の心を殺してまでして、築き上げたものを簡単に壊す可能性がある。
「演技?何の事?」
僕は溢れる感情を抑えて、笑顔を崩さずに答えた。
それに夜十神君は僕の顔を指を指した。
「その笑顔とか?」
…………完全にバレてるな、これ。
そのまま放っておくと、誰かにバラされる可能性があるかな。
まぁ、気味悪がられているみたいだし、こいつの言うことを信じる奴はいないだろうけど……。
念には念をって言うし、口止めをしておいた方が良いよね。
ここら辺一帯人にいないし、素を出しても問題は無い。
「.........夜十神君さ、いつ気がついたの?」
そう言って、僕は笑顔を浮かべるのを止めてた。
それに夜十神君は満足そうに笑った。
「あはは。俺の思った通り。俺的にそっちの方が好きだなぁ♪」
僕は、その言葉に思わず顔をしかめた。
……思った通り?僕の演技は、今まで見破られたこと無いのに。
「あっそ。でさ、僕の質問に答えてよ。」
僕が若干睨みながら聞くと、そんな事は気にしていないようで笑顔で頷いた。
「あ、うん。良いよー。」
それを聞くために、僕は近くの机に座った。
夜十神君は僕が座るのを待っていてくれていたようで、僕が座ると話始めた。
今回の挿し絵は、夜十神君です。
ちなみに、フルネームは夜十神黒桜です。




