追憶01:似た者同士?
空ちゃんが"リアル人生ゲーム"をGAME OVERする前のお話です。
決して目立ち過ぎず、周りに合わせて、敵は作らない。
それがこの理不尽な"リアル人生ゲーム"を上手く進める方法。
だから僕は今日も、興味の無い上っ面だけの"オトモダチ"と上っ面の笑顔を顔に張り付けて、皆が望む"私"を演じる。
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廊下で"オトモダチ"と話して歩いていると、視線を感じた。
最近感じる視線と同じ。
でも僕は無視して、歩みを進めた。
「ねぇ、あんたは疲れねーの?」
不意に声をかけられて、僕は足を止めて振り返った。
そこには、視線の正体の男の子が笑って立っていた。
男の子の瞳は真っ直ぐ僕を見ていて、まるで僕の歪んだ心を見透されているようで、柄にもなく動揺した。
動揺を顔になんとか出さずに僕は、笑って答えた。
「.....何の事?」
僕が答えると僕の周りにいた"オトモダチ"達は、僕と男の子が話してる事に気付いたようだった。
「げっ。夜十神かよ.........。」
"オトモダチ"の1人の夕凪ちゃんが、嫌そうな声を溢した。
どうやら彼は、夜十神君と言うらしい。
.........そういえば、クラスの端の席にいたかも知れない。
関わりがないから、記憶してなかった。
「夜十神、私達になにか用?」
美波ちゃんが、僕達の前に立って代表するように言った。
それに同調するように、周りの"オトモダチ"も口々に文句を言い始めた。
「別に。あんた達に用は無いよ?自己意識過剰なんじゃねーの?」
そう言って、夜十神君は僕の"オトモダチ"の言葉を鼻で笑った。
"オトモダチ"達は、顔を真っ赤にして怒りに震えだした。
僕的には、夜十神君の意見に激しく同意な訳だけど。
ここで夜十神君の味方をしたら、僕の"リアル人生ゲーム"が滅茶苦茶になっちゃう。
「美波ちゃん、気にすること無いよ。
こんな子放って置いて、行こうよ?」
僕がそう言うと、美波ちゃん以外の"オトモダチ"がまた同調した。
あははっ。馬鹿っぽーい。
この子達、本当に皆空っぽ。人の意見に同調しかしない。
僕よりも、空っぽだったりしてね。
「そ、そうね。こんな奴相手にする価値も無いわね!!」
そう言って、"オトモダチ"達は夜十神君を無視して歩き始めた。
僕はもう一度夜十神君の方を見た。
すると、夜十神君は僕の視線に気付いて笑って手を振ってきた。
「ね。もし、あんたが俺に興味が少しでも湧いたらさ。放課後、会おうよ。」
「…………。」
僕が返事に迷ってると、そんなこと気にし無いで
笑ったまま言葉を続けた。
「あはは。噂の空き教室で待ってるよ。」
……噂の空き教室。
自殺者が出た教室の事だろう。
皆気味悪がって、あそこら辺一帯誰も近寄らない。
僕が素で話しても、誰も聞く人はいないってわけね……。
僕はそれを聞くと、"オトモダチ"の方に歩いていった。
"オトモダチ"に作り笑いを浮かべる僕の後ろで、夜十神君が僕とは対照的に楽しそうに笑って呟いた。
「きっと俺とお前は、ベクトルが違うだけで本当は似た者同士。」
追憶編は、これから少しずつ追加していく予定です。




