愛遠ー独白ー
独白形式の短編小説です。
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それはほんの些細な事が始まりだった。
1日に数え切れないほどしていたメールが、週に数回になった。
隙さえあればかけていた電話が、用事がなければかけなくなった。
『おい』『なぁ』
――名前を呼ばれなくなった。
付き合い始めから約5年。これは仕方のない事なのだろうか。
こういう時、男同士の付き合いという特殊な関係は困る。
誰にも相談など出来やしないし、周りの目が気になり迂闊な事が出来ないからだ。
でも最初からこうだった訳じゃない。
ただ一緒にいる事が嬉しかった。
胸を高鳴らせ交わした約束が楽しかった。
友達の陰に隠れ、互いにしか通じないサインを送るのは少し緊張した。
今はもう鳴らない携帯が手の中で冷たく沈黙する。
約束を素っ気ないメールで断られる事が増え、最近ではあまり目も合わせなくなった。
徐々になくなる2人の決め事に、少しずつ心が遠のくのを感じた。
淋しいと口に出来たら、どんなに楽になれるだろう。
一緒にいたいと素直に言えたなら、こんな事にはならなかっただろうか。
この頃よく考える。
鳴らない携帯を握りしめ、繰り返し繰り返し、独りで考える。