閑話.佐藤 さくらのミーリア基礎講座 -ミーリアの世界地理(1)-
オマケの説明会。地図を書いたのでご紹介です。
さ く ら:「と言う訳で東悟さん!! 護身術も良いですけど、ミーリアの基礎知識についても勉強しましょう!!」
東 悟:「……また唐突に始まったなオイ」
さ く ら:「どんなに強くても、右も左も分からないんじゃすぐのたれ死んでしまうのです!! そんな迷える子羊である東悟さんに、最高神であるわたしが一肌脱ごうじゃありませんかヤッター!!」
東 悟:「言いたいことは分かったし、言ってる内容も至って妥当だけど、その奇妙なテンションはどうにもならんのか……?」
さ く ら:「なりません」
東 悟:「ならないんだ!?」
さ く ら:「ハイそう言う事で始めましょう!!
『第1回 ミーリア基礎講座:初級編』はっじまるよ――――――――っ!!」
東 悟:「…………わーい(この後中級編や上級編があるのかとげんなりしている)」
第1回 ミーリア基礎講座:初級編 ――ミーリアにある国々――
さ く ら:「――――これが東悟さんが赴く異世界、剣と魔法のしろしめすミーリアの世界地図です」
東 悟:「……これは、なんというか……」
さ く ら:「……まあ言いたいことは分かります。
ごらんの通りミーリアは、まるで『龍』を象ったように配置された大陸や群島によって成り立っています。地名などもそれにちなんだ物が多いですね」
東 悟:「しかし、いかにもゲーム的というか、『ぼくのかんがえた異世界』的というか……」
さ く ら:「趣味全開で世界創造したような創造神に一体なにを期待してるんですか」
東 悟:「なんつう身も蓋もないことを」
さ く ら:「とにもかくにも、ミーリアはこんな形に寄り添って、それぞれが狭い地峡で繋がった3つの大陸と、3つの群島からなる島嶼部からなっています。
今日はまずこれらの大陸と群島、そしてそこにある国々について、ざっくり説明していきますね♪」
東 悟:「まあ、ミーリアに渡るにあたって必要な知識ではあるな……」
さ く ら:「でしょー!?」
1:『龍の大陸【Terra Corps】』
さ く ら:「まずは大陸中央部、その名もずばり『龍の大陸』ですね。龍の頭から尻尾の付け根までに当たる大陸で、3つ大陸の中では一番大きく、そして一番豊かな大陸でもあります。
ちなみに命名は創造神で、ラテン語で『身体の大陸』と言う意味になるらしいですよ?」
東 悟:「この世界って、大陸は基本陸続きなんだな」
さ く ら:「ですね。東隣にある『翼の大陸』とは翼の付け根部分で繋がっていますし、南の『尾の大陸』とは本当に僅かな地橋で繋がっています。
ただ尾の大陸との付け根には近年パナマ運河みたいな大運河が出来て龍のお腹側と背中側の海が繋がったので、厳密には陸続きではなくなってしまいました」
東 悟:「? そう言えば首のところがちょうどぶった切られたように離れているが、この頭のところも『身体』に入れるのか?」
さ く ら:「ええ。頭のところも『龍の大陸』に入ります。その海峡は通称『断頭海峡』と呼ばれていますが、実は200年前に大規模魔法で人為的にぶった切られたんですよね」
東 悟:「わあー……。さすがのファンタジーだよ」
さ く ら:「ですねえ」
●大陸の地理
さ く ら:「先ほども言いましたが『龍の大陸』は一番豊かな大陸と言えます。
『翼の大陸』との付け根部分に『龍の心臓』と呼ばれる火山があり、そこから南に向かって『背骨山脈』と言う3000m級の山々が連なりますが、頭の部分と山脈西側は基本的に農耕に適した平地が広がっています。3つの大陸の中で単純に耕地面積が広く、気候も比較的温順でもあるため農業生産性は1番ですね。主に小麦やお芋をたくさん作っています。ミーリアの穀倉地帯と言ったところでしょうか。
ただし背骨山脈の東側、外海と山脈に挟まれた地方は雨が少なくステップや砂漠の広がる不毛の地となります。そこに位置する国々は、点在するオアシス都市を主な生活の場としていますね」
東 悟:「山ひとつを挟んで穀倉地帯と砂漠が隣り合うとか」
さ く ら:「はいはい。ファンタジーファンタジー」
東 悟:「先に言うなよ」
●龍の大陸にある国々
さ く ら:「龍の大陸にある国として外せないのは『オルゴ=サクレ神聖法皇国』ですね。創造神を信仰する『始祖神信仰』を国教とする政教一体の封建国家です。通称は『法国』といいます。
主な国民はヒト族で構成され、かつては異種族に喧嘩を売りまくり一時は龍の大陸の全部と『翼の大陸』の一部、そして『尾の大陸』の8割近くまでをその版図に治めたことがありました。
古代ローマ的な『奴隷が居ないなら拉致してくればいいじゃない』を地でいくヒト族至上主義を掲げて他種族に対する侵略を重ね、それで得た労働力によって繁栄を誇りましたが栄耀栄華は今は昔、おごれるヒト族は久しからずと言うことで現在は喧嘩を売った他種族、主に『夜鬼族』や『獣人族』に逆ネジを食らって龍の頭のところまで押し返されてしまいました。
そしてこのところ100年は対外戦争に連戦連敗で『法国』周辺にある貴族領国や緩衝用に建国された衛星国家群が次々と切り崩されて青色吐息、ヒト族に圧倒的な影響力を誇った『始祖神教会』も凋落の一途を辿っています。
その上内側ではせっぱ詰まった国内貴族達による小さなパイの取り合いが激化して内憂外患、かつての大帝国の姿は見る影もありません」
東 悟:「しかし、聞くだにいかにもファンタジー定番の悪役と言った風情の国だな。すでにこてんぱんにやられているけど」
さ く ら:「少なくともヒト族以外にはそうなんじゃないでしょうか。それにかの国のお陰で他の国に住むヒト族はいわゆる風評被害で一時期ずいぶん辛い目にも遭っていますし、他の大陸のヒト族からもずいぶん嫌われていますね」
東 悟:「もしかして、今もヒト族って白い目で見られたりするのか?」
さ く ら:「今はそれほどでもありませんよ。後で説明する南の大国である『連邦』で差別を禁止したので一応は落ち着いています」
東 悟:「そりゃあ良かった」
さ く ら:「法国はそれでいいとして、あと龍の大陸にある国家は先に言った法国系の衛星諸王国、あと東の砂漠に点在するオアシス都市国家群があります。
そして後もうひとつ、尾の大陸の端まで一度は追いつめられ、そこから法国を押し戻した諸種族の連邦国家である『ドラゴンテイル汎人類連邦王国』、通称『連邦』があります。さっき言ったヒト族の差別を禁止した国ですね。今現在世界で最大版図を占める大帝国ですが、詳しい説明は尾の大陸の時にしましょう。
ちなみにオアシス都市国家群は『連邦』と通商友好条約を結んだ同盟国になります。したがって現在連邦は大陸のほぼ半分をその影響下に治めていると言うことになりますね。
現状『龍の大陸』は、落日の『法国』と上り龍の『連邦』がほぼ半分ずつ分け合っている状態と言えましょうか」
東 悟:「なあ。じゃあこの龍の胸のあたりにある『ドール自由都市』っていうのは?」
さ く ら:「ドールですか? ドール自由都市はつい数十年前に始祖新教会と袂を分かち、都市単位で法国から独立を勝ち取り対外中立を宣言した都市国家になります。
連邦の支援と屈強な傭兵に守られ法国の軍勢を退けた『奇跡のドール』として、いまや内海貿易の一大拠点のひとつに成長しました」
東 悟:「中世ヨーロッパの自由都市とか、そう言うイメージで良いのかな」
さ く ら:「どちらかというと立ち位置はフェ○ーン自治領に近いんじゃないでしょうか?」
東 悟:「銀○伝!?」
さ く ら:「以上、龍の大陸でした♥」
2:『翼の大陸【Terra Ala】』
さ く ら:「次は『翼の大陸』、『龍の大陸』の東側にある大陸です。その名の通り龍の翼の部分に当たる大陸で、名前もまんまラテン語で『翼の大陸』です。
龍の大陸にある活火山『龍の心臓』から東に向かい『翼の山地』と言う高山地帯がちょうど翼の付け根を中心に広がり、その裾野から何本もの川が翼の先端に向かってまるで羽根の模様のように網目になって流れています。そして山の周辺や河川の流域には深い森が広がっており、大陸を無骨な山と深い緑の2色に彩っていますね。
気候的には寒冷気候に近く、大陸の半分は山、平地のほとんどは森なので農業生産性は龍の大陸に劣ります。ただし山間部には優良な鉱山を有し川からは砂鉄や砂金が取れるし、森林からは天蚕や珍奇な薬草、紙の原料になる不思議な葦の仲間など様々な特産品が産出されます。そう言う意味では豊かな資源に恵まれた大陸、と言えるかも知れませんね」
東 悟:「……長科白ご苦労(すっ、とお茶を差し出す)」
さ く ら:「ああ、ドーモドーモ(ごくごくと飲み干している)」
●大陸の地理
さ く ら:「…………先に言っちゃいましたね全部」
東 悟:「山と森だろ?」
さ く ら:「ええ。山と森です。
後はまあ、大陸北端には氷河が作ったフィヨルド地形があります。寒いです」
東 悟:「ここらの主食は何なんだ?」
さ く ら:「山間部では芋におソバですね。おソバと言っても、あそこに住む人達はソバを粒のまま茹でてお粥にしたり粉にしたのをパンケーキにしたりしてますが。
森では一部を開墾してライ麦に大麦、エン麦そして稗に粟と言った雑穀類が育てられています。それと、実は翼の先端部分の河川流域では一部でお米が作られているんですよ」
東 悟:「おお、ライス来たよライス」
さ く ら:「メイドインジャパンの定番ですから」
東 悟:「定番だな」
さ く ら:「と言っても粘りけの少ない長粒種で、現地での食べ方はピラフやパエリヤに近いんですけどね」
東 悟:「それは日本人的には生殺しと違うか……?」
●翼の大陸にある国々
さ く ら:「『翼の大陸』はエルフ・ドワーフと言った『精霊族』の大陸で、そこには世界の開闢にまで遡る精霊族の2大大国、『モリニア=ドワーフ16部族連合王国』と『エルダール=エルフ国』があります。
なのでこの大陸は別名『精霊の大陸』なんて呼ばれたりもして、実際人口における『精霊族:その他の種族』の割合は『7:3』で圧倒的に精霊族が多く、特に新緑の民と赤鉄の民達のほとんどは、この大陸の出身なんですよ」
東 悟:「なあ。この『モリニア』に『エルダール』って、名前の由来って例の指輪なアレか? 餓鬼の時分に図書館で読んだり、大人になってからは映画で見たりしたけどさ」
さ く ら:「さすが東悟さん、よくご存じですね。
名前の由来はもちろん創造神の趣味で、原典はご想像通り某『指○物語』です。『モリニア』は某ドワーフの鉱山の名前から、『エルダール』は確かエルフの種族というか、ある一派を示す名前のはずですよ?」
東 悟:「さすがは創造神。古いタイプのマニアだけのことはあるな……」
さ く ら:「趣味全開ですからねえ」
東 悟:「あ、と言うことは、もしかしてステレオタイプに仲が悪かったりするのか?」
さ く ら:「ご明察ですね。お察しの通りミーリアでは伝統的にエルフとドワーフは仲が悪いですよ。なのでモリニアとエルダールは常にいがみ合っては小競り合いを繰り返しています」
東 悟:「こりゃまた定番と言うべきか」
さ く ら:「そもそも創造神も両者の対立をお約束として公認してた節がありますからね。彼らの祖先に創造神が授けたという伝説のある家紋と旗印が、エルフ達は『エルフの赤旗』に蝶々に似た『天蚕紋』、ドワーフ達は『ドワーフの白旗』と歯車を模した『赤鉄車』なんですよ」
東 悟:「ああー、紅白の旗って源氏と平氏か。それに平氏の家紋は蝶々だったはずだし、じゃあドワーフの歯車の元ネタは家紋の『源氏車』か?」
さ く ら:「あれって『源氏物語』から取って『源氏車』と言うのであって、それ自体は源氏の家紋じゃないんですけどね」
東 悟:「創造神の勘違いはともかく、確かに両者の確執を煽ってるとしか思えないなあ」
さ く ら:「まあ創造神の意図は別にして、そもそも隣り合った実力伯仲の大国同士が心の底から仲良くしてる例なんて地球にだって無いですけどね。
あの人が何かしたと言うよりは、ふたつの国が利権を争って小競り合いをしているうちにそれが日常化して、今はもう開戦の理由も定かではないままにいがみ合っているだけなんですよ。エルフやドワーフ達にしても数千年もそんなことをしていれば、子々孫々に伝わって種族的な敵対心になろうというものですし」
東 悟:「炎の匂いが染みついて噎せるような話だなオイ」
さ く ら:「でも基本的に実力は拮抗していているのがせめてもの救いで、戦争に発展しないままここ数百年は不毛な睨み合いを続けていますけどね」
東 悟:「不毛だが、無駄な血が流れないだけマシなのか」
さ く ら:「最高神としてもそう思いますよ」
東 悟:「ところで、この北端のフィヨルド地帯にある『法国』系の国の範囲は?」
さ く ら:「ああ。そこは法国の羽振りが良かった頃に調子に乗って海から攻めてきた名残です。一時期はもっと内陸まで占領していた時期もありましたが、その時ばかりはエルフとドワーフが手を組んで法国の軍勢をこてんぱんにしてそこまで追い落としたんですよ。
法国軍10万に対してエルフドワーフ連合軍5万は敢然と立ち向かい、法国側はドワーフ重装絡繰歩兵を前面に押し出されて前線を押しつぶされた挙げ句、見事な連携で後方から放たれたエルフ長弓部隊の飽和射撃を受けて敢えなく壊滅。倍の敵を敗った連合軍は普段の不仲が嘘のように肩を並べて進軍して、翼の大陸の法国軍を徹底的に潰して回ったんです。
今は生き残った法国出身のヒト族達がエルフやドワーフ達の住まないフィヨルドの縁に張り付いて、交易の利益を条件になんとかお目こぼしを頂いているという状態ですね」
東 悟:「何と言うか、法国がいっそ哀れになる話だよな」
さ く ら:「それ以来、他の国でも『翼の大陸には手を出すな』が一種の不律文になりました。エルフとドワーフは混ぜるな危険、とか」
東 悟:「水と油どころかトイレの洗剤じゃねえか」
さ く ら:「そんな訳で『翼の大陸』は、今も昔も変わらずエルフやドワーフを中心とした精霊族の大陸なのです」
3:『尾の大陸【Terra Cauda】』
さ く ら:「3つの大陸のうち最も南に位置するのが最後に紹介する『尾の大陸』です。名前の由来はやはりラテン語から。
立地的には『龍尾地橋』と呼ばれる幅10㎞に満たない陸地によって龍の大陸と繋がった東西に長い大陸になります。大陸の南側を東西に1~2000m級の高山が連なる『尾骨山地』があり、その裾野に森林が広がってそれが切れると平地、そして内海へと至ります」
東 悟:「そう言えば今はその大陸の付け根に運河が出来てちょん切れたんだっけ?」
さ く ら:「はい。内海と外海を繋ぐ『マーレ運河』の完成によって尾の大陸は龍の大陸と地続きではなくなりました。そしてかつて軍事・交通の要衝として法国の大要塞があった地橋には、今は世界最大の交易都市『カプトマーレ』があり繁栄を謳歌しています」
東 悟:「確かに、素人がみても重要な立地だしな」
さ く ら:「なにより飛ぶ取り落とす勢いの『連邦』が第2の首都として築き上げた大都市ですからね。勢いが違います」
東 悟:「そうか。尾の大陸は例の『連邦』の本拠地なんだったけか」
さ く ら:「ですね。その名も『ドラゴンテイル汎人類連邦王国』。
夜鬼族の王を盟主とし諸種族の王達の連名によって建国を宣言され、今や世界最大の国家に成長したこの国は、『尾の大陸』をその発祥としています」
●大陸の地理
さ く ら:「気候的には東は温帯性気候で、西に行くほど乾燥し暑くなっていきます。主に人が住むのは大陸北側の平地部分で、森林や山岳地帯にはそこでの生活に適した一部種族の集落がある程度です。
大陸東側は雨が多く農耕に適していますが西側は乾燥が厳しいため土地は痩せています。なので東側では小麦などを普通に作っていますが西に行くと主食はトウモロコシが主体になりますね」
東 悟:「龍の大陸よりやや暮らしにくそうな感じがあるな」
さ く ら:「土地の豊かさ、と言う点では確かにそういえるかも知れませんね。龍の大陸ほど農業に適しておらず、山や森からは資源は取れるものの翼の大陸ほど潤沢には取れない。さらにこの大陸には野獣と呼ばれる強力な野生動物が他の大陸に較べて多く生息しており、そこに暮らす人々は彼らから身を守って暮らさなければならないんです。
なので尾の大陸には、古来から身体能力や戦闘力に秀でた『獣人族』や『夜鬼族』が多く暮らしていたんですよ」
東 悟:「なるほど」
さ く ら:「でも悪いことばかりじゃありませんよ? 野獣は確かに驚異ですが、彼らの皮や各種素材はミーリアでは立派な資源ですからね」
東 悟:「モンスターを狩って素材をゲット、って言うことか?」
さ く ら:「ぶっちゃけるとそう言うことです。ある意味一番『最近のファンタジーらしい』暮らしの出来る大陸かも知れませんね。ゲーム的というか」
東 悟:「野獣を狩って素材剥ぎとか、どれだけヤクザな商売だって思わないでもないがなあ」
さ く ら:「――――ただいまの東悟さんの発言は、決して特定のゲーム等を揶揄、または貶める目的で発せられたものではありません。最高神からのお知らせでした――――」
東 悟:「誰に対して言ってるんだよ!?」
●尾の大陸にある国々
さ く ら:「これまでの説明に何度も出てきていますが、尾の大陸と言えば『ドラゴンテイル汎人類連邦王国』つまり『連邦』のお膝元に当たります。
法国に大陸西端にまで追いつめられた夜鬼族、獣人族を中心とした多種多様な部族の軍事的な連合体が『連邦』の前身にあたり、奮闘の末に法国を追い返したあと『蒼鬼族』の王が盟主となって各種族の代表者を王や貴族として建国が宣言されました。これも前に言いましたが、今現在は法国を圧倒して世界最大の国家になっています。
政治形態は各地の公王や貴族達による連合王国ですね。国の最高機関は8人の公王と10人の大貴族、そしてその盟主である王による枢密院で、その下部組織に貴族や大商人と言った有力者243人からなる評議会があります。外交・軍事など国家規模の懸案に対する決定権は枢密院が持ち、評議会は枢密院に対する意見具申と一部司法や立法にその権限を持ちます」
東 悟:「評議会って言うのは初期的な議会政治みたいな感じなのか? ギリシャとか古代ローマあたりの」
さ く ら:「封建制度と議会制度が絡まった政治システムなので一概に同じとも言えませんが似たところはあるかも知れませんね。ちなみに連邦の初代盟主である蒼鬼族の王が代々盟主の座を世襲していますが、その権限は必ずしも強くはなく諸侯の調整役に留まっています」
東 悟:「絶対王政以前の封建制と議会政治のハイブリットというところか」
さ く ら:「連邦の理念が法国のヒト族至上主義に対するアンチテーゼですから。『ありとあらゆる全ての種族を平等に』と言う理念に則ると、多頭制の連邦国家にならざる得なかったんだと思いますよ」
東 悟:「でもそれだと船頭多くして船山を昇る、みたいなことにはならないのか?」
さ く ら:「今のところは上手く機能していますね。ただしどうしても物事を決めるのに時間が掛かりがちになることと、内部での政治闘争が激しくなるのは避けられないようですが」
東 悟:「まあ、そりゃ制度的にしかたがないか」
さ く ら:「そんな訳で連邦は、夜鬼族や獣人族、またヒト族に虐げられて尾の大陸まで落ち延びてきた様々な諸勢力によって構成された連邦国家になりました。さっきも言いましたが国是は『みんな仲良く』。
あらゆる種族、むろんヒト族も含め法に触れない限りは差別をしない、と言うのが連邦の基本方針です。なので連邦内には全ての種族が暮らし、全ての種族の自治区があり、そして全ての種族の代表者が最低1人は評議会に名を連ねています」
東 悟:「日本人的な感覚からすると、法国の悪役っぷりと見事に対比する善玉の匂いがするな」
さ く ら:「それがゴブリンさんやオークさんを含む、普通なら敵役に分類される夜鬼族側なのがミーリアクオリティですけどね。
あと連邦では法国との兼ね合いで創造神を祀る『始祖神信仰』は廃れています。何と言ってもヒト族至上主義を思想的に支えたのが法国発祥の始祖神教会ですからね。
現在連邦では建国時やそれ以降に優れた活躍をした個人を神としてささやかな神社に祀る『英霊信仰』が盛んです。故人の御霊を鎮めて神様にする神道に近いでしょうか。その他にも種族ごとに守り神を祀っていますし、基本連邦は多神教国家ですね」
東 悟:「聞けば聞くほど連邦の方がしっくり来るな。日本人的には」
さ く ら:「ちなみにわたしはその英霊信仰で祀られて神になったクチです。で、連邦がミーリア最大勢力になったお陰で天界の勢力図も塗り変わって、わたしが最高神をやる羽目になったんですけどね」
東 悟:「人智を越えた成り上がりっぷりと言うべきか……」
さ く ら:「忙しいだけでなにひとつ良い事なんてないんですけどね。最高神なんて」
東 悟:「……ご愁傷様?」
さ く ら:「でも『ヒト族以外はみんな奴隷だー』とか言う法国が幅を利かすよりはいい結果なんでしょうね。一応生前のわたしが最後に所属した国でもありますし、これからも良い方向に発展して貰いたいとは思っていますよ?
……発展すればするほどわたしの仕事も増えるんですが」
東 悟:「うん。ご愁傷様」
さ く ら:「はあ……。まあそれはいいですけどね。
纏めると、尾の大陸は基本的に多民族の連合国家である連邦の治める大陸で、今現在は様々な種族が平和に暮らす大陸であると言うことです。一応、東悟さんの第1移住予定地でもあります」
東 悟:「あ、そうなのか?」
さ く ら:「内乱渦巻く法国で血にまみれながら成り上がりたい、とか言うなら話は別なんですけどね」
東 悟:「うん。もちろん連邦でお願いします」
※ ※ ※
さ く ら:「……以上で、ミーリアの主要3大陸の説明は終わりましたね」
東 悟:「あとは、3つの群島部分の説明か? いい加減疲れてきたから早く済ませようぜ……?」
さ く ら:「ではさっそく、と言いたいところですが……」
東 悟:「? なにかあるのか?」
さ く ら:「いや。それがですね?
『書いてたら文章がちょうど1万字になったので続きはまた後日』とわたしのさらに上位の神様からお達しがありまして」
東 悟:「何たるメタ発言!?」
さ く ら:「『ほんのオマケのつもりで書きだしたらこんなにクソ長くなったでござる。番外編までくどいとか、いっそ死にたい……』と上位神は訳の分からないことを供述しており――――」
東 悟:「オイ作者いい加減にしろ!!」
さ く ら:「まあそう言う訳なんで、『ミーリア基礎講座:初級編』、第2回へ続く!! 待て、次号!!」
東 悟:「オタッシャデー!?(一体どこまで続くのかと愕然としている)」
俺たちの戦いはこれからだ!! と言う訳で数日後にミーリア基礎講座後編が始まると思います。
第2章は今のところ開始予定は未定なんですが、今月中に始められればいいなあと愚考いたす次第でして……。気長にお待ち頂ければ幸いです。
ところで、本文中の噎せるネタは一体どれほどの方が分かって頂けるのか心配です。アス○ラウス銀河の話って、知名度どれぐらいあるんでしょうか……。