表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王候補のお姫様  作者: B.A.R
第一章 『虚仮の一念』
4/24

プロローグ

 大劇場は満員だった。

 荘厳たる内装は今から行われる何かの、その格調高さを物語っていた。

 事実、暗闇の中、万を超えるであろう来場者の誰一人として、声を発する事はなかった。


 もっとも、声が出せる者だけではないのだが。

 その大広間にいる者は皆少し、おかしかったのだ。

 誰も彼もが、異形。

 御伽噺に出てくる、人を食べる怪物のような姿のものが大半であった。

 中には人のような姿のものも見受けられたが、やはり皆、どこかが違う。

 耳の長いもの。

 毛むくじゃらなもの。

 魚のような鱗の生えたもの。

 他より少し、大きすぎるもの。

 そうそれは、人外たちの集まりであった。


 そうして、長い沈黙を破るかのように大劇場の幕が上がる。それと同時に雷鳴のような歓声が湧く。

 まるで一世一代の大舞台が始まるようだった。

 壇上には光が灯り、そこに並び立つ六つの影を顕にする。

 観客たちは其々の影に向かって、思い思いに叫び声を上げた。

 「諸君! 静粛に、静粛に!」

 何処からともなく流れるアナウンスの声に、観客たちはゆっくりと冷静さを取り戻していく。


 「諸君。今宵、我らが二百年に一度の儀。【魔王決定戦】の開幕を、ここに宣言する!」


 再び沸く、劇場が割れんばかりの歓声。

 それもまた次第に収まった頃、再びアナウンスの声が聞こえた。


 「諸君らの中には、今宵、この時を憎むものや、関心を持てぬものも、いるやもしれぬ。しかし、数多くのものは、それぞれの想いを持ってこの場に集ったはずだ。見よ、彼らを! 彼らこそ、諸君らの熱き想いを乗せて戦いに臨む、六人の魔王候補たちである!」

 三度沸く歓声。しかし、今度は誰も止めようとしない。

 始まるのだと、誰もが感じていた。

 始まるのだ。

 戦争が。


 「ルールは説明した通り! では行け、王候補たちよ! 『世界の果て』より最初に戻った者こそが、次なる王だ!」

 その言葉が放たれた時、並び立つそれぞれの足元から青白い光が溢れる。それは回転を続けながら勢いを増し、やがては劇場全域を包み込んだ。誰も彼もが声だけとなり、光と共に静まった時、壇上の影は消えていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ