アーマー
激しい燐光と共に腕輪から伸びた無機物の触手が全身を包み込んでいく。体を包み終わるとただの無機物だったそれは形を変え始めアーマーを形成していった。肌が露出しているところは一つもない。アーマーの外観はまるで特撮のヒーロー変身後って感じだ、全身の色が赤と橙で構成されていて獣じみた刺々しい外殻だった。まるで百獣の王ライオンをモチーフにしたような。
「これが腕輪の力・・・・」
熱い。体中が熱い。経験したことはないが40℃以上の高熱になるとこんな感じになるのだろう。これじゃまともに体が動きそうにない。
「おお・・・・ずいぶん変わったじゃねえか人間。そんな切り札持ってやがったのか。だが足元がふらふらだぜ・・ヒヒッャ!。っと、お互いこんな狭いところじゃやりづらくねえか?ちょっと場所を変えようぜ!!」
ドゴっ!っと奴の動きに全く反応できず腹に蹴りを食らってしまった。浮いた体は窓を簡単に突き破り校舎の外まで吹っ飛ばされる。受身を取れず4メートルほど転がってようやく体を起き上がらせることができた
「くそっ!!これじゃまともに動けない・・・・」
だがダメージは薄い。見たところ15,6メートルは吹っ飛ばされたのに口から少し血が出ただけだ、もちろん腹は強烈に痛いがこれは凄いことだと思う。普通の状態なら確実に即死していただろう
しかしおかしい。まるで全身に重りを付けらさらに鎧に縛り付けられた感覚がある。立ち上がっただけでも相当筋肉が疲労しているのが分かった
「リース!なんか凄く熱っぽくなってきたし、体がうまく動かなくなってきたぞ・・・・」
いつの間にやら隣にいるリースに問いかける
「うーん・・・・初めての変身だから多少体温が上がるのは仕方ないけど・・・体が動かないって言うのはおかしいかも・・・」
「おいおいマジかよ・・・・」
防御力が上がってもこれじゃまともな戦いになる筈がない。
奴がゆっくりと近づいてくる、まだ10メートルは距離があるが時間がないのも本当だ
「ちょっと調べてみるからじっとしててね」
すると何を思ったのかリースが額に手を当ててきて何か真剣な表情でブツブツと呟いている、それが終わったと思うと今度は申し訳なさそうな顔でじっとみつめられた
「リースどうした?」
何か良くない事が分かったらしいリースの気落ちした顔をみてるとこれから何を言われるか不安になってくる。もしかして重大な欠陥が腕輪にあったのかもしれない
「・・・実はね・・・言いにくいんだけどアキラが身に着けてるアーマーを動かすには「魔力」っていうのが必要でね、ほんのちょっとの魔力があればちゃんと機能するはずなのにそのアーマーには魔力が全然供給されてないみたいで・・・・・もしかしたらアキラには魔力がないのかもしれないの・・・」
「その・・・魔力がないって・・・・どんな人間にも多少はあるって朝言ってなかったか?」
朝いろいろなレクチャーを受けたときに確かに言っていた。どんな人間生物にも「魔力核」、つまり魔力を生み出すジェネレーターが必ず一個は存在していてそれは生きていく上で重要な生命エネルギーになるらしい。
「普通の人ぐらい魔力があれば機能するアーマーがちゃんと動かないって事はアキラはやっぱり生み出せる魔力が極端に少ないのよ・・・生きているのが不思議なくらいにね」
「さらっと言ってるけどそれって凄いまずいことなんじゃないのか?・・・・・!?」
その時奴の必殺技はすでに完成していた
「そんなこと気にしてる暇ないぜえええ!今すぐ切り裂いてやるからよ!!ヒッッ!」
ごおっ!!!!!!!!!
急に辺りの風圧が強くなってくる。それもそうだ、奴の近くにはありえない物が存在していた。
巨大な竜巻。直径十数メートルは達しているであろう
しかも四つ
「カマイタチだけじゃなくあんなモンまで作り出せんのかよ・・・・」
今の状態では100パーセントあの竜巻を避けられない。あんなのに巻きこまれたら死ぬまで切り刻まれるか上空に巻き上げられて地面に落下して死ぬかどちらかだろう
「けけけ馬鹿共が!何のために場所を変えたと思ってんだよ!?これを食らってさっさとバラバラになっちまえ!ヒィィィヒヒヒヒヒ!!」
何このグタグタな展開・・・・やる気なくすわ・・・