凄くビックリッ!?
声を掛けた瞬間と同時に有栖川に全力で飛びついた。自分でも驚くほど強く飛び掛った為に2メートルは奴との距離を離せたはずだ
「ちょっと!イキナリなにすんのよっ!」
何か怒っているようだが問題ない。ただ背中を強く打っただけだろう、あの爪で切り裂かれるよりは数倍ましの筈だ
「俺だってやりたくてやったわけじゃ・・・ゲッ」
いや・・・問題はあった。無我夢中で飛びついたからか有栖川に覆いかぶさる形になってしまっている、これはマズイ。しかも右手がちょうど胸のところを掴む様になってしまっていたのだ
「わ、悪ぃ・・・」
お互いの顔が異様に近く有栖川の息遣いを肌で感じることができる。こんな場所ではなくベッドの上などでこの状況になれたらどんなに嬉しいか、アキラは煩悩を必死に振り払いすばやく起き上がる。乱れた呼吸を整えることに徹する。
「あ、その、・・・・」
駄目だ。言葉が見つからない。呼吸も荒い。これじゃ有栖川でなくても怒るよな・・・
「虎神アキラぁ!今日という今日は許さないわよっ!」
有栖川が批難の目をしながらガバッと立ち上がる。ほのかに紅く火照った顔をこちらに向けて鋭く睨み付けてくる、有栖川の得意技だ。また罵倒してくるのだろう。今はそんな悠長な時間はないというのに。
だが違った。アキラを見た瞬間有栖川は凍りついたように動かなくなった。正確にはアキラの背後、数秒前自分がいた場所を見て感情が停止した、床が砕けていた。あるのは無残な三本の爪跡とバラバラになった椅子や机だけだった。
「え・・うそ・・」
もしかして助けてくれたの?コイツが?何で?そんな義理なんてない、作った覚えもない。でも助けてもらわなかったら・・・確実に・・・自分もバラバラになっていた。
有栖川の様子が少しおかしいことに気付きアキラは後ろを振り返る。
「!!」
床や椅子が無残に切り裂かれていたのだ。たった一振りでこの威力・・・・・・体が震えだしそうだ。今考えると良く助けられたものだと思う。
「ほとんど反則じゃねえか・・・痛っ!!」
今になって気付いた。やはりアキラはさっきの攻撃を無傷で避けていたわけじゃなかった。左肩から背中に掛けてズバっとやられていたのだ。だが傷自体は浅いものらしく派手に血が出ているわけでもない。
「くそ・・・」
傷は浅い。でも痛いことには変わりはない。それを我慢して奴と対峙する。逃げはしない。もうばれてしまった筈だ。今までは見えない振りをしていれば騙し通せたかもしれない。でももう無理だ。有栖川を助けたことによって自分が奴にとっての極上の餌だと気づかれたはずだ。奴が言っていた、これだけ人間がいると上物のが誰か解らないと、もうそんなの関係ない。その証拠に避けられたことに驚いて嘘のように止まっていた怪物がギラっと目を向けてくる。
「自分から身を明かすなんて粋な事しやがるぜヒャッッッヒヒャ!気が変わったゼエエ!!兄貴にこんな旨そうな魂半分だってやるもんかァァ!!全部俺が食らい尽くしてやるウウウウぜッッ!!」
「ウルセーよ鳥っ!!でかいからって粋がってんじゃねーぞ!」
と脱兎のごとく教室から抜け出る。奴の様子からしてもう俺しか視界に映ってない。ならこんな狭い教室から抜け出てもっと自分が動きやすく立ち回れる場所をさがすべきだ、そうしたほうが被害が少なくすむ。せめて何十人・・いや何人かがこの異常に気付き逃げ出すまでは奴を引き付けなくてはならない。俺は死体なんか絶対に見たくない・・・。
だが怖い。だがそれ以上に腹が立つ、ムカつく!!
アキラにしてみれば街中で変態にいきなりナイフで切りつけられケンかを売られたようなものだ。だからムカつく腹が立つ。売られたからには買う!あんな奴絶対に倒す!これはアキラにとってケンカみたいなものだ。ただ今回は相手は人間ではなく悪魔、人知を超えた怪物、たったそれだけ。たまたまナイフを持っていたのが悪魔だったってだけ。人間か悪魔かだなんてそんな些細で小さなことはこの少年には関係なかったのだ。
「くそ!大事な制服に穴あけやがって!見てろ!アイツの鼻っ柱を絶対に砕いてやる!!」
やるからには倒す!ただそれだけを心で繰り返しながらでカマイタチを巻き起こしながら追ってくる悪魔から全速力で逃げていた。
アキラとベルルがいなくなった教室は妙に静かになっていた。アキラが教室から抜け出すと同時に物凄い旋風が起こりソレがアキラを追って行く様に消えていったのだ。何もしない、何もすることができない。見ているしかなかったのだ。ただ一人、どんな理由事柄か知らないが自分を助け、そのせいで負った生々しい背中の傷を見せられた少女はぼそっとつぶやいていた
「あんな傷見せられて・・・これからどうやってアイツを叱れって言うのよ・・・・」
今までアキラに掛けていた言葉を思い出す。結構酷いこと言っていたのかなと・・・。
だがそんな考えはすぐに吹き飛んだ。今は「ここにいてはいけない、いたらいずれ死ぬ」少女の頭脳はもうこれしか考えられなくなっていた
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