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階段の行方

作者: 虫松
掲載日:2026/02/05


挿絵(By みてみん)


第一章「奇妙な間取り」


新しい家への引っ越しは、人生を立て直すための小さな賭けだった。

だが玄関を閉めた瞬間、私は思った。

この家は、私を歓迎していない。


廊下の途中にある階段は、途中で終わっていた。

二階へも屋根裏へも続かず、ただ空に向かって立ち止まっている。


子供部屋と書かれた部屋には窓がない。

昼でも薄暗く、外の気配が一切届かない。


そして家の奥、屈まなければ入れないほど天井の低い部屋。

理由の分からない違和感が、そこには溜まっていた。


「……変な家だな」


最初の夜、私はその低い部屋に引き寄せられた。

床に落ちていたのは、古い日記。


《階段は、上に行くためのものではない》

《窓は、外を見るためのものではない》


肝心なページは、破り取られていた。


第二章「隠された真実」


真夜中になると、家は音を立て始めた。

壁が軋み、どこかで誰かが階段を上るような音がする。


「……誰かいるのか?」


答えはない。


音のする壁を押すと、隠された通路が現れた。

その先にある階段は、昼に見たものとは違っていた。


上るにつれ、距離の感覚が曖昧になる。


辿り着いたのは、この家にあるはずのない部屋。

本棚と机、そして一通の手紙。


《この家は、過去と現在が重なる場所だ》

《窓のない部屋は、守るための場所》

《天井の低い部屋は、留めるための場所》


読み終えた瞬間、家は静まり返った。


第三章「時を超える家」


天井の低い部屋で、時計が逆に動き始めた。


気づくと私は、過去のこの家に立っていた。

階段は正しくつながり、子供部屋には明るい窓がある。


幸せそうな家族。

私は、ただ眺めることしかできない。


だが父親だけが、いつも窓の外を警戒していた。


ある夜、私は見た。

窓の外に立つ、形の定まらない影を。


影は、子供の首を見つめていた。


翌日から父親は家を変え始めた。

階段を断ち、窓を塞ぎ、低い部屋を作った。


「……守るためだったんだな」


そう理解した瞬間、私は現代へ戻された。


第四章「影の中の答え」


家の一番古い場所で、私は最後の日記を見つけた。


《家は守れた》

《だが、誰かがここに残らなければならない》


玄関の鍵は開いている。

逃げることはできた。


それでも私は、階段を見上げた。


「……分かったよ」


私は日記に、自分の言葉を書き足した。


《今日から、私が残る》


灯りを消すと、家は静かに息を整えた。


翌朝、この家は

「少し間取りが変なだけの家」になっていた。


私は、家の中に満ちる温かい空気を感じながら、家族の絆の大切さを改めて実感した。


そして、私もこの家の一員として、

新たな歴史を刻むことを決意した。




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