階段の行方
第一章「奇妙な間取り」
新しい家への引っ越しは、人生を立て直すための小さな賭けだった。
だが玄関を閉めた瞬間、私は思った。
この家は、私を歓迎していない。
廊下の途中にある階段は、途中で終わっていた。
二階へも屋根裏へも続かず、ただ空に向かって立ち止まっている。
子供部屋と書かれた部屋には窓がない。
昼でも薄暗く、外の気配が一切届かない。
そして家の奥、屈まなければ入れないほど天井の低い部屋。
理由の分からない違和感が、そこには溜まっていた。
「……変な家だな」
最初の夜、私はその低い部屋に引き寄せられた。
床に落ちていたのは、古い日記。
《階段は、上に行くためのものではない》
《窓は、外を見るためのものではない》
肝心なページは、破り取られていた。
第二章「隠された真実」
真夜中になると、家は音を立て始めた。
壁が軋み、どこかで誰かが階段を上るような音がする。
「……誰かいるのか?」
答えはない。
音のする壁を押すと、隠された通路が現れた。
その先にある階段は、昼に見たものとは違っていた。
上るにつれ、距離の感覚が曖昧になる。
辿り着いたのは、この家にあるはずのない部屋。
本棚と机、そして一通の手紙。
《この家は、過去と現在が重なる場所だ》
《窓のない部屋は、守るための場所》
《天井の低い部屋は、留めるための場所》
読み終えた瞬間、家は静まり返った。
第三章「時を超える家」
天井の低い部屋で、時計が逆に動き始めた。
気づくと私は、過去のこの家に立っていた。
階段は正しくつながり、子供部屋には明るい窓がある。
幸せそうな家族。
私は、ただ眺めることしかできない。
だが父親だけが、いつも窓の外を警戒していた。
ある夜、私は見た。
窓の外に立つ、形の定まらない影を。
影は、子供の首を見つめていた。
翌日から父親は家を変え始めた。
階段を断ち、窓を塞ぎ、低い部屋を作った。
「……守るためだったんだな」
そう理解した瞬間、私は現代へ戻された。
第四章「影の中の答え」
家の一番古い場所で、私は最後の日記を見つけた。
《家は守れた》
《だが、誰かがここに残らなければならない》
玄関の鍵は開いている。
逃げることはできた。
それでも私は、階段を見上げた。
「……分かったよ」
私は日記に、自分の言葉を書き足した。
《今日から、私が残る》
灯りを消すと、家は静かに息を整えた。
翌朝、この家は
「少し間取りが変なだけの家」になっていた。
私は、家の中に満ちる温かい空気を感じながら、家族の絆の大切さを改めて実感した。
そして、私もこの家の一員として、
新たな歴史を刻むことを決意した。




