12月16日(月):電話創業の日
今日は12月16日、月曜日。「電話創業の日」
朝の食卓では、山本家のにぎやかな声が飛び交っていた。
「海斗、牛乳こぼすなよ!」
愛が弟を注意すると、海斗は「あー、わざとじゃないよ!」と不満げに返す。翔太がその様子を見ながら笑っている。
「でもさ、今はLINEとかメールばっかりで、電話ってそんなに使わなくなったよな」
翔太が呟くと、澄江が優しく微笑んだ。
「昔は電話が家に来た時、なんだか魔法みたいだったわね。受話器を取るだけで誰かと話せるなんて、すごいことだと思ったわ。」
「おじいちゃんの時代はどうだったの?」
海斗が興味津々に勝に尋ねる。勝は少し懐かしそうに頷いた。
「初めて電話を使ったのは、確か学生の頃だったな。家にはなかったから、学校の職員室で使わせてもらったんだよ。緊張して声が震えたのを覚えてるよ。」
愛がスマホを指でくるくる回しながら言った。
「今なんて、電話よりチャットだよね。正直、電話するのってちょっと気まずい時もあるし。」
「そんなこと言うなよ。直接声を聞くのって、大事なこともあるだろ?」翔太が反論する。
「まあ、確かに。でも、電話番号を知らない人とも簡単に連絡取れるって、やっぱり便利だよね」
愛が淡々と話すのに、結衣が頷いた。
「便利さが増えるのはいいことよね。でも、たまには声を聞くのもいいものよ。特に遠く離れた家族とか。」
その日の夜、勝が一家をリビングに集めた。
「今日は『電話創業の日』らしい。だから、みんなでちょっとした実験をしよう。」
そう言って勝が取り出したのは、なんと糸電話だった。
「これ、作ったの?」
「いやいや、昔ながらの遊びさ。カップと糸さえあれば、こうやって話せるんだ。」
勝が糸電話を持って説明すると、海斗が目を輝かせた。
「え、やりたい!お姉ちゃん、受話器持って!」
「えー、やだよー。」と言いつつ、愛もカップを手にする。
「おーい、愛ちゃん聞こえるかー?」
「聞こえるけど、近いし普通に話せばいいじゃん!」
愛が笑いながら答えると、海斗は得意げな顔をした。
それを見ていた澄江がポツリとつぶやいた。
「こういうの、いいわね。声を届けるって、こんなに素敵なことだったのね。」
結衣が「糸電話なんて懐かしいわね。昔、お母さんも子どもの頃やったことがあるわ。」と微笑むと、翔太も「俺もやったな、なんか新鮮だな。」とうなずいた。