表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/197

12月31日(火):シンデレラデー

リビングには家族全員が集まっていた。いつもは誰かしらがいないこともあるのに、今日は特別だ。暖房の効いた部屋に鍋の湯気が立ち上り、大晦日の夕食が賑やかに進んでいる。


「お姉ちゃん、あけおめって0時過ぎに送るんでしょ?今年は誰に送るの?」

弟の海斗がニヤニヤしながら言う。


「別に。友達に普通に送るだけだし。」

愛は少し赤くなった顔を隠すように鍋の具材を混ぜる。


「いやいや、気になるねぇ~!」

翔太がからかうように笑うと、結衣がすかさずフォローする。

「ほら、からかわないの。愛、気にしなくていいよ。」


祖父の勝が静かに微笑みながら口を開いた。

「今日はシンデレラデーだそうだな。」

一同が「シンデレラデー?」と声を揃える。


「12時を過ぎると年が変わる。だから、夜の時間が気になる日。お前たちも、12時を過ぎてカボチャに戻らないようにな。」

勝の冗談にみんなが笑った。


「おじいちゃん、それなら僕はネズミのままがいいな!だって、ネズミって自由そうじゃん!」

海斗が満面の笑みで言うと、祖母の澄江が笑いながら続ける。

「その代わり、ネズミになったら自分でチーズを探すのよ?」


「えー、家のチーズ全部僕のものにしちゃう!」

海斗の子どもらしい発想に、またみんなが笑い声をあげる。


夕食が終わり、紅白歌合戦が静かに流れる中、家族はそれぞれの時間を過ごし始めた。愛は部屋でスマホをいじり、海斗はおじいちゃんと一緒にカードゲーム。結衣と翔太は後片付けをしながら話している。


「ねえ、今年も家族全員で無事に年越しできるってありがたいね。」

結衣が小さくつぶやく。


「ああ。本当にそうだな。」

翔太も穏やかに答える。


11時50分。勝がリビングでみんなを呼び集めた。

「さあ、年越しそばの準備だぞ。」


「まだお腹いっぱいだよ!」と海斗が文句を言いながらも、みんなで机を囲む。澄江が茹でたばかりのそばを盛り付け、結衣が薬味を用意する。


「よし、来年の抱負でも話そうか。」

翔太が声を上げる。


「お姉ちゃんから!」

海斗が指差す。


「え?私?うーん……デザインのコンテストに挑戦したい。」

愛が少し恥ずかしそうに答える。


「いいじゃないか!応援するぞ。」

翔太が力強く言うと、愛は照れたように笑った。


「じゃあ僕!昆虫博士になる!」

海斗の元気な声に、勝が嬉しそうにうなずく。

「それなら、もっと勉強して知識を増やさないとな。」


ついに時計の針が12時を指す。テレビの画面にカウントダウンが映る。

「3、2、1……ハッピーニューイヤー!」

家族全員で声を合わせ、笑顔で新年を迎えた。


「さ、シンデレラの魔法は解けなかったみたいね。」

澄江が柔らかく微笑む。


「そうだな。でも、こうして家族で過ごす時間が、何よりも魔法みたいだ。」

勝の言葉に、家族全員が静かに頷いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ