6月28日(土):貿易記念日
曜の午後。山本家のリビングには、世界地図がテーブルいっぱいに広げられていた。
その上に、レシピ本、スマホ、そして結衣の手書きの「今夜の献立メモ」が並んでいる。
「今日は“貿易記念日”なんだって!」
海斗が地図を指さしながら説明する。
「1859年の今日、日本がアメリカ、イギリス、オランダ、ロシア、フランスと“貿易を開始した日”なんだよ!」
「横浜港が開かれて、日本が“世界とつながった日”なのよね」と結衣が補足。
「じゃあ今夜は“世界の食卓”で、我が家もつながっちゃおう!」と愛が盛り上がる。
---
夕方、キッチンはまるで料理番組のスタジオのように活気づいていた。
【今夜の“山本家・世界ディナー”メニュー】
* **アメリカ**:ミニハンバーガー(海斗担当)
* **イタリア**:カプレーゼサラダ(愛の盛り付けセンスが光る)
* **中国**:焼売(澄江の手作り!昔習った点心レシピ)
* **フランス**:バゲットとチーズ(結衣が選んだマイルドなブリーチーズ)
* **メキシコ**:ミニタコス(翔太がスパイスを調整)
* **日本**:枝豆と冷やし茶碗蒸し(勝のリクエスト)
「まるで“国際交流フェス”だな」と翔太が笑う。
「世界旅行はできなくても、味覚ならどこへでも行けるのよ」と結衣がにっこり。
「私、いつか“世界の屋台”をテーマにしたイラスト展を開きたいなぁ」と愛がつぶやけば、
「そのときは、ぼくが料理解説書くね。“これはイタリアの伝統の味!”とか」
と海斗がノリノリ。
食卓に並んだ料理は、色とりどりの異国情緒。
でも、手づくりの温かさがどれにも共通していて、不思議と調和していた。
「これが“食でつながる世界”ってやつだな」と翔太が感慨深げに言えば、
「人と人がつながるって、文化を知ることでもあるのよね。お互いを理解しようっていう心から始まるの」と結衣。
勝が一つ一つの料理をゆっくり味わいながら、ぽつりと語る。
「貿易とは、“物をやりとりすること”じゃが、実のところ“心の橋をかけること”じゃよ。」