6月17日(火):砂漠化と干ばつと闘う国際デー
火曜日の夜、山本家のリビングでは、夕食の後片づけが終わると同時に、家族が自然と円になって座り始めていた。
「今日って、“砂漠化および干ばつと闘う国際デー”って知ってた?」と、愛がスマホを見ながら話し始めた。
「へえ、そんな日があるんだ」と翔太。
「国連が1995年に制定したんだって。乾燥地帯の拡大や、気候変動の影響を世界中に知ってもらうための日だって書いてある」
結衣がうなずきながら、
「雨の多い日本にいるとあまり実感ないけど、世界の多くの場所では“水がないこと”が、生活そのものを脅かしているのよね」
「そうだよね…植物も育たないし、食べ物も作れないし」と海斗が神妙な表情でつぶやいた。
勝がそっと言葉を添える。
「昔、わしが理科の教師だったころ、生徒に言っていた。“日本の水は、山が生み出す贈り物だ。でもそれを当然と思ってはいけない”と」
「…たしかに。私たちも、できることを考えないといけない時代なのかも」と愛。
そこで翔太がパチンと手を打った。
「よし、今日のテーマは“デジタルでできる地球環境への貢献”。名付けて、“山本家・未来のための家族会議”!」
「パパ、ネーミングがかっこいい!」と海斗が乗ってきた。
愛が早速ホワイトボードを持ち出して、「“やれること”を書いていこう」と仕切り役を買って出る。
まず出たのは、**「ペーパーレス生活」**。
「学校のプリント、PDFでもらえるやつは印刷しないようにしてる」と愛。
次に翔太からは、**「オンライン会議で移動を減らす」**。
「俺たちの工場でも最近、地方工場とのやり取りはリモートになった。出張の回数が減って、ガソリンやCO₂の削減になってる」
澄江がそっと手を挙げた。
「最近、デジタルでレシピ検索して、食材を無駄にしないようにしてるの。冷蔵庫の中身とにらめっこしながら、ぴったり使い切るのよ」
「それって“食品ロス”の削減だ!」と海斗。
海斗からは、「デジタル図鑑で絶滅危惧種を調べて、守られてる場所を見つけてる」と発表。
「すごいね、ぼく“調べて学ぶ”の名人になれそう!」
勝は静かにまとめた。
「便利さの裏で、どこかに負担をかけてしまう時代じゃ。けれど、テクノロジーをうまく使えば、“守る道具”にもなる。それを忘れずに使っていければ、未来は変えられるかもしれん」
最後に、家族全員で「1人1アクション」の目標をホワイトボードに記入した。
・翔太:職場でもペーパーレス推進を提案
・結衣:家庭菜園の記録をアプリで管理
・愛:SNSで“環境と暮らし”の投稿を週1で発信
・海斗:毎月1種類、絶滅危惧種を調べてノートにまとめる
・澄江:月1回“冷蔵庫一掃デー”を企画
・勝:環境問題をテーマにした掌編を書いて孫に読ませる
「なんか…すごく大人の話をしてた気がする」と海斗。
「うん。でも、こういう時間、大事だと思うよ」