表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/296

6月15日(日):生姜の日

日曜日の朝。台所からは、すりおろした生姜のさわやかで少しピリッとした香りが、家の中にふわりと広がっていた。


「お、これはもしや…」と新聞を置いた翔太が鼻をくすぐる香りに反応する。


「正解。今日は“生姜の日”よ」と結衣が笑う。


「生姜の日?」と愛がカップを手にリビングに現れる。


「6月15日は、生姜の守り神が祀られている“波自加彌神社はじかみじんじゃ”の例祭日なの。それに合わせて、“生姜の収穫と健康への感謝の日”として制定されたんだって」と結衣。


「なるほど〜、今日は生姜三昧かな」と翔太が楽しげに呟く。


「ということで、お昼は“特製・生姜焼き定食”に決定!」と結衣が宣言。


庭の一角で細々と育てていた家庭菜園の葉生姜も、今朝早く澄江が収穫してくれていた。


「新生姜、やわらかくて香りがいいわよ。やっぱり採れたては違うわね」と澄江。


海斗は「ちょっとピリピリするけど、おいしそうなにおいだね!」と興味津々。


昼、食卓には、結衣の特製・甘辛生姜焼き、澄江の浅漬け、炊きたてのごはん、そして愛が盛りつけた青じそサラダが並んだ。


ジュワッという音とともに湯気が立ち上り、家族は一斉に「いただきます!」


「うわ、これ最高…」と翔太が思わず声を漏らす。


「この香りが、なんか“夏が来た!”って感じするよね」と愛も笑う。


「生姜ってさ、体温めるって言うけど、こうして食べると元気出てくる!」と海斗がモリモリ食べる。


「昔はね、風邪のひき始めや疲れたときに、生姜湯を飲んだのよ」と澄江。


「今でも時々作ってるけど…今日は、特別なものをご紹介します」と、にこにこしながら瓶を持ってくる。


「じゃーん、自家製ジンジャーシロップ。おばあちゃん秘伝よ」


「すごい…売り物みたい!」と愛が目を丸くする。


「炭酸で割ると爽やかなジンジャーエール。お湯で割れば、生姜湯に。ケーキにも使えるのよ」と澄江が説明すると、翔太が「じゃあ、俺は午後のドライブに向けて“スパイシードリンク”いただこうかな」と言いながらグラスを掲げる。


勝も「生姜は“香りの薬”だな。体も心も整う…うん、これは詩になりそうだ」と、つぶやきながらニヤリ。


その日の夕方、愛がスマホで撮った食卓の写真を眺めながら言った。


「生姜って、料理にも飲み物にもなるし、思ってた以上に主役だったんだね」


「ほんと。今日の主役は、間違いなく“香り”だったわね」と結衣も微笑む。


「また作ってね!」と海斗が元気よく言うと、結衣と澄江は「もちろん!」と声を揃えた。


「ぴりっと香って、じんわり温まるね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ