6月15日(日):生姜の日
日曜日の朝。台所からは、すりおろした生姜のさわやかで少しピリッとした香りが、家の中にふわりと広がっていた。
「お、これはもしや…」と新聞を置いた翔太が鼻をくすぐる香りに反応する。
「正解。今日は“生姜の日”よ」と結衣が笑う。
「生姜の日?」と愛がカップを手にリビングに現れる。
「6月15日は、生姜の守り神が祀られている“波自加彌神社”の例祭日なの。それに合わせて、“生姜の収穫と健康への感謝の日”として制定されたんだって」と結衣。
「なるほど〜、今日は生姜三昧かな」と翔太が楽しげに呟く。
「ということで、お昼は“特製・生姜焼き定食”に決定!」と結衣が宣言。
庭の一角で細々と育てていた家庭菜園の葉生姜も、今朝早く澄江が収穫してくれていた。
「新生姜、やわらかくて香りがいいわよ。やっぱり採れたては違うわね」と澄江。
海斗は「ちょっとピリピリするけど、おいしそうなにおいだね!」と興味津々。
昼、食卓には、結衣の特製・甘辛生姜焼き、澄江の浅漬け、炊きたてのごはん、そして愛が盛りつけた青じそサラダが並んだ。
ジュワッという音とともに湯気が立ち上り、家族は一斉に「いただきます!」
「うわ、これ最高…」と翔太が思わず声を漏らす。
「この香りが、なんか“夏が来た!”って感じするよね」と愛も笑う。
「生姜ってさ、体温めるって言うけど、こうして食べると元気出てくる!」と海斗がモリモリ食べる。
「昔はね、風邪のひき始めや疲れたときに、生姜湯を飲んだのよ」と澄江。
「今でも時々作ってるけど…今日は、特別なものをご紹介します」と、にこにこしながら瓶を持ってくる。
「じゃーん、自家製ジンジャーシロップ。おばあちゃん秘伝よ」
「すごい…売り物みたい!」と愛が目を丸くする。
「炭酸で割ると爽やかなジンジャーエール。お湯で割れば、生姜湯に。ケーキにも使えるのよ」と澄江が説明すると、翔太が「じゃあ、俺は午後のドライブに向けて“スパイシードリンク”いただこうかな」と言いながらグラスを掲げる。
勝も「生姜は“香りの薬”だな。体も心も整う…うん、これは詩になりそうだ」と、つぶやきながらニヤリ。
その日の夕方、愛がスマホで撮った食卓の写真を眺めながら言った。
「生姜って、料理にも飲み物にもなるし、思ってた以上に主役だったんだね」
「ほんと。今日の主役は、間違いなく“香り”だったわね」と結衣も微笑む。
「また作ってね!」と海斗が元気よく言うと、結衣と澄江は「もちろん!」と声を揃えた。
「ぴりっと香って、じんわり温まるね」