6月4日(水):虫歯予防デー
朝の食卓で、翔太がコーヒーをすすりながら新聞をめくると、ぽつりとつぶやいた。
「今日って“虫歯予防デー”なんだってな。」
「6月4日で、“むし”の語呂合わせね」と、結衣が笑いながら応じた。
「じゃあ、今日は特別に“歯みがき強化デー”にしよう!」と海斗が元気に宣言した。
「まさか、夜に磨き残しチェックとかしないよね?」と、愛が苦笑いする。
「するに決まってるじゃん!」と、海斗は張り切って親指を立てる。
夜——
夕食のあとのリビングには、なぜか洗面所から歯ブラシを持ち込んだ家族全員が集合していた。
「さあ、山本家恒例!“歯みがきチェック大会”を開催しま〜す!」と、海斗が司会役を名乗り出る。
「いつから恒例になったんだ…」と翔太が突っ込みつつも、まんざらでもない様子で鏡の前へ。
「ちゃんと鏡で確認するんだよ?照明は完璧にセット済み!」と、海斗が得意げにLEDスタンドをつける。
翔太が真面目に歯を磨き始めると、海斗がのぞき込んで言った。
「あ〜、パパ、奥歯のところ、ちょっと残ってる〜!」
「えぇ!?うそ、ちゃんとやったぞ?」
「残念ながら、減点です!」と、海斗はホワイトボードに「パパ −1点」と書き込んだ。
「まるで学校の保健指導みたいね」と、愛も笑いながら加勢。
そのあと、結衣、澄江、そして勝もそれぞれ丁寧に歯磨きをして、「よし、私の歯は文句なし」と澄江が得意そうに笑うと、翔太が「おふくろ、意外と負けず嫌いだな」と言ってみんなで笑い合った。
一番厳しかったのは、実は海斗だった。自分の磨き残しも厳しくチェックし、最後は全員から「優勝!」と拍手されて照れ笑い。
「じゃあ、賞品は何かな?」と翔太がからかうと、結衣がにっこり微笑んだ。
「明日の朝、私がスペシャルパンケーキを焼いてあげるわ。」
「やったー!!」
その夜、寝る前のリビングでは、勝がぽつりとつぶやいた。
「昔はな、歯ブラシが今みたいに良くなかったから、虫歯も多かったんだよ。でも、こうやってみんなで楽しみながら歯を大事にできるって、いい時代になったもんだな。」
「おじいちゃんの言うとおりだね。歯は一生ものだもんね」