5月20日(火):世界ミツバチの日
朝のリビングに、甘いハチミツの香りがふわりと漂っていた。
「今日は“世界ミツバチの日”なんだって!」
海斗が、図鑑を抱えてリビングに飛び込んできた。
「へえ、そんな日があるの?」と愛がパンをかじりながら問いかけると、
「うん!国連が決めたんだよ。ミツバチは、花の受粉を助けてくれて、食べ物が育つのに欠かせない存在なんだって。つまり、ミツバチがいないと、僕たちのごはんが困るんだよ!」
「それは大変だ」と翔太が新聞をめくりながら頷き、結衣も笑いながら「じゃあ今日はハチミツ入りヨーグルトね」とキッチンで声をかける。
「でね!」と海斗が目を輝かせる。「今日は僕、“ミツバチ博士”になるから、夜にクイズ大会やるよ!」
夕方、家に帰ってきた翔太と愛を迎えたのは、黄色い工作紙で作られた「ミツバチ博士登場!」の貼り紙。そしてリビング中央には、クイズボードが立てられていた。
「第1問!ミツバチが1匹、一生のうちに集めるハチミツの量はどのくらいでしょう?」
「うーん…バケツ一杯?」と翔太が冗談まじりに答えると、
「ぶっぶー!正解は“ティースプーン1杯分”です!」
「そんなに少ないの⁉︎」と結衣が驚くと、勝が静かに頷いた。
「だからこそ、大切な命なんだな。小さな努力が、世界を支えてるんだ。」
「じゃあ第2問!ミツバチの女王様は、何をするために生きているでしょう?」
「えっと…みんなに命令する?」と愛が言うと、
「それもあるけど、正解は“卵を産むこと”!女王バチは1日に2000個以上の卵を産むんだよ!」
澄江が「まあまあ、働き者ねえ」と感心しながら、ハチミツ入りのスコーンをテーブルに並べた。
クイズの最後は、こんな問題で締めくくられた。
「最後の問題です!ミツバチに感謝するには、どうしたらいいと思いますか?」
家族が顔を見合わせる中、翔太が口を開いた。
「自然を大事にすることかな。農薬を使いすぎないとか、花を育てるとか。」
愛も続けて、「デザインの授業でも、ミツバチと生態系の話が出たよ。だから私は、ミツバチの絵を描こうかな。」
「正解は…みんなの答え全部!ありがとう、家族のみんな!」と、海斗が笑顔で締めくくった。
夜、庭の花壇に水をまいていた結衣と澄江に、海斗が駆け寄ってきた。
「ママ、おばあちゃん、ミツバチが来てくれるように、この辺にもお花植えたいんだけど…いい?」
「もちろん。ハーブも植えようか。ミツバチが好きなんだって」と結衣。
「じゃあ明日はホームセンターに行こうね」と澄江がにっこり。
星がまたたく夜、勝がぽつりと呟いた。
「小さな蜂の働きに感謝できる子は、大きな心を持った大人になる。」