5月15日(木):沖縄本土復帰記念日
夕方のリビングに、ほんのりスパイシーな香りが漂っていた。今日は「沖縄本土復帰記念日」。夕食は沖縄料理にチャレンジしようという結衣の提案で、山本家の台所はすっかり南国ムードに包まれていた。
「タコライスって、“たこ”が入ってるの?」と海斗が不思議そうに聞く。
「“タコス”のご飯バージョンなのよ。タコは入ってないの」と愛が笑いながら説明する。
勝は新聞を広げながら、「沖縄が返還された日じゃな。あのころはテレビで大騒ぎだったのを覚えておる」と懐かしげに語り、澄江も「平和って、当たり前じゃないのよね」としみじみうなずいた。
そのころ、キッチンでは結衣がレタスをちぎりながら、「ひき肉炒めるのは得意だけど、このタコスミックスの香辛料…ちょっと強いかしら?」と心配顔。翔太はエプロンを付けて、「今日は俺も戦力になるぞ!」と頼もしく宣言し、炒め具合や香辛料の加減を一緒に確認していた。
「トマトは皮をむいた方がいいのかな?」と海斗が包丁を持って相談すると、澄江が「お湯にちょっとつけるとむきやすいのよ」とアドバイス。家族全員が台所に立ち、まるで小さな料理教室のような賑わいだった。
愛は彩りにこだわり、「レタスはシャキシャキのままで盛りつけたいな〜」とサラダのように野菜を並べ、彩り豊かな一皿を完成させた。
「ミミガーとかゴーヤチャンプルーも気になるけど、まずはタコライスからね!」と結衣が笑顔で言うと、「次はラフテーに挑戦しようよ!」と翔太がすかさず返す。家族の笑い声が台所にあふれた。
そして、ようやく完成した色とりどりのタコライスが、リビングのテーブルに並ぶ。レタスの緑、トマトの赤、チーズの黄色が目にも鮮やかだ。
「いただきます!」の声のあと、しばらくはもくもくと咀嚼音だけが響く。
「うん、うまい!」「なんか、旅行に来た気分!」
「ちょっとピリッとするけど、それがクセになるね」と、愛もにっこり。
勝は口を拭きながら「沖縄にはまだ行ったことがないのう。行くならやっぱり美ら海水族館と首里城か?」と話題を振ると、海斗が「それとヤンバルクイナも見たい!」と目を輝かせた。
「それから青の洞窟ってところも綺麗なんだって」と愛がスマホで検索しながら教えてくれる。
「来年の夏、みんなで行けたらいいね」と結衣が笑うと、翔太も「うん、少しずつ計画立てていこう」と真剣にうなずく。澄江は「海ぶどうって食べたことある?プチプチして面白いのよ」と付け加え、家族の会話はどんどん広がっていく。
食後は、勝が沖縄の歴史を簡単に説明。「返還されるまで、沖縄はアメリカの統治下にあったんじゃ。日本に戻ることを願って、多くの人が動いたんじゃよ。復帰は、希望と葛藤が入り交じった出来事だったんじゃ」
「でも基地の問題とか、今もいろいろあるんだよね」と愛がつぶやくと、勝は「そのとおりじゃ。だからこそ、こうして知ること、考えることが大切なんじゃ」と語った。
翔太も「歴史を知ってこそ、旅行ももっと意味のあるものになるね」と言い、結衣が「旅先で見える風景が、違って感じられる気がする」