5月11日(日):母の日
朝、リビングに飾られた小さなカレンダーには、赤い字で「母の日」と書かれていた。窓から差し込む柔らかな陽射しに、家族の気持ちも自然と温かくなる。
「今日はママにサプライズしよう!」
海斗が朝食の席で元気に提案すると、家族みんながうなずいた。
結衣も「楽しみにしてるね」と笑う。
「庭のお花でブーケを作ろう!」
愛が目を輝かせながら言い、すぐに作戦会議が始まった。
「手作りのカードも用意しようよ!」
翔太の提案に、海斗も「僕、絵も描く!」と乗り気になった。
午前中、結衣には「今日はゆっくりしててね」と伝え、翔太と子どもたち、勝と澄江は庭へ出た。
- 勝が手際よく花ばさみを操り、バラ、カーネーション、ミニバラ、マーガレットなどを丁寧に摘み取り、
- 澄江が持参したリボンや包装紙で、ブーケを美しくまとめる係に、
- 愛と海斗は花選びに夢中になりながら、にぎやかに笑い合った。
「この赤いバラ、ママにぴったりだよ!」
海斗が真剣な顔で選んだ一輪に、みんなが微笑ましく頷いた。
さらに、庭に咲くラベンダーやカスミソウも加え、香り高い素敵なブーケが出来上がった。
その間、愛は色とりどりのペンを使って、メッセージカードを作成。海斗も真似して大きなハートと"だいすき"の文字を一生懸命書いた。
昼食後、いよいよサプライズタイム。
リビングに結衣を呼び出し、海斗がブーケを両手で差し出した。
「ママ、いつもありがとう!」
愛も「お母さん、大好きだよ!」と言いながら、自作のカードを手渡した。
翔太は、家族を代表して「毎日、家族のために頑張ってくれて本当にありがとう」と深々と頭を下げた。
勝と澄江も、「結衣さんのおかげで、この家はいつも温かいね」と優しく声をかけた。
結衣はブーケとカードを胸に抱きしめ、目に涙を浮かべながら「本当に、ありがとう。こんな幸せな母の日は初めてだよ」とつぶやいた。
「ママの笑顔が、家族みんなを幸せにしてるんだよ!」
海斗の言葉に、また結衣の頬に涙が伝った。
そのあとは、家族みんなで記念写真を撮り、ティータイムへ。
テーブルには、澄江お手製のスコーンと、翔太が買ってきた苺ジャム、紅茶が並び、ちょっとしたティーパーティーのような雰囲気に。
「このスコーン、すごくおいしい!」
愛が声をあげ、海斗も「おかわり!」と元気いっぱい。
ティータイムの間、家族それぞれが結衣との思い出話を語り、笑ったり、ちょっと涙ぐんだり。
- 海斗は「ママと動物園に行った日のこと」
- 愛は「ママが作ってくれた誕生日ケーキの思い出」
- 翔太は「結婚して最初に一緒に見た夕陽のこと」
結衣は一つひとつ頷きながら、「こんなふうに思い出を一緒に重ねてこれたことが、何よりの宝物だね」としみじみと話した。
リビングには、甘く優しい時間がゆっくりと流れていた。
夜、寝る前に結衣は小さな日記帳を開き、今日の出来事を静かに綴った。
「家族みんなにありがとう。私は世界一幸せなお母さん。」