5月8日(木):世界赤十字デー
朝、リビングに降りてきた結衣を出迎えたのは、家族みんなの「おめでとう!」の大合唱だった。リビングには色とりどりのバルーンが飾られ、テーブルの上には小さな花束が置かれていた。
「わぁ、びっくりした!」
今日5月8日は、母・結衣の誕生日。そして同時に、世界赤十字デー。赤十字の創設者デュナンの誕生日にちなんだ、人道支援と優しさを称える日でもある。
「ママ、いつもありがとう!」
海斗が手作りのカードを差し出した。そこには大きなハートと「だいすき」の文字がぎっしりと書かれていた。裏面には、海斗が描いた『ママと一緒に冒険する絵』が添えられていた。
「わたしも描いたよ。」
愛は、自分でデザインしたイラスト入りのカードを手渡した。そこには、家族みんなが仲良く手をつないでいる姿がカラフルに描かれていた。
翔太と勝、澄江も、それぞれ感謝の言葉を書いたメッセージカードを用意していた。
「結衣さん、いつも家族を明るくしてくれて、ありがとう。」
勝が優しい声で言い、
「あなたの笑顔が、うちの太陽だよ。」
澄江がそっと手を握った。
結衣は、目を潤ませながらも、「ありがとう、本当に嬉しいよ」と一人ひとりに感謝を伝えた。
仕事や学校を終えた家族は、夕方、サプライズパーティーの準備に取り掛かった。
- 翔太と海斗がリビングに飾り付け。紙吹雪とガーランドを手作りした。
- 愛が手作りケーキにデコレーション。ベリーと生クリームで華やかに飾った。
- 勝と澄江が庭から摘んだ花をテーブルに飾り、香り豊かな空間を演出。
そして、すべてが整ったところで、結衣が帰宅。
「おかえりなさい!お誕生日おめでとう!!」
クラッカーの音とともに、リビングが一気に華やいだ。
テーブルの上には、家族みんなで作った料理と、愛が仕上げたイチゴたっぷりのバースデーケーキ。ミニサンドイッチ、サラダ、特製パスタも並び、小さなパーティーが始まった。
「すごい…こんなにしてくれるなんて…」
結衣は目に涙を浮かべながら、家族一人ひとりにハグをして回った。
「ママ、これからも元気でいてね!」
海斗の素直な言葉に、結衣は思わず笑顔になった。
翔太がグラスを掲げて乾杯の音頭を取る。
「これからも、結衣と一緒に、たくさんの笑顔を重ねていこう!」
夜、ケーキを囲みながら、家族で『ありがとうの時間』を持つことにした。
「結衣さん、あなたの優しさは、まるで赤十字みたいに、周りを温かくしてくれるよ。」
勝の言葉に、結衣は「そんな大げさな!」と照れ笑いを浮かべたが、嬉しそうだった。
「小さな思いやりが、世界を変えるんだよ。」
愛が静かに付け加えた。
「ママがいると、家の中がポカポカするよ!」
海斗も元気に続け、みんなが笑った。
リビングには、甘いケーキの香りと、優しい空気が満ちていた。外には星がきらめき、庭のこいのぼりも静かに夜風に揺れていた。
今日の感謝と祝福が、結衣の心に深く染み込んだ一日となった。
そして、海斗が小さな声でささやいた。
「ママがいてくれて、ほんとうによかった。」