5月7日(水):粉の日
朝、いつもよりもほんのり甘い香りがキッチンから漂ってきた。焼きたてのパンのような香りに、自然と家族が集まってくる。窓を開けると、春の優しい風がカーテンを揺らし、まるで粉の日を祝福しているかのようだった。
「今日は『粉の日』なんだって!」
出勤前に新聞を読んでいた翔太が声を上げた。
「5(こ)7(な)の語呂合わせから、小麦粉や米粉など『粉』に感謝する日だそうよ。」
結衣がエプロン姿で説明しながら、ホットケーキミックスを取り出した。
「へえ、粉の日かぁ。じゃあ今日のおやつはパンケーキ?」
愛が寝ぼけ眼でリビングに現れ、目をこすりながら聞く。
「それもいいけど、どうせならもっといろいろ作ろうか!」
結衣が提案すると、海斗が目を輝かせた。
「僕、クッキー作りたい!」
勝も新聞をたたみながら微笑む。「粉から作る料理って、温かみがあっていいなあ。昔は家族みんなで団子を作ったもんだ。」
夕方になると家族が次々と帰宅した。
「今日は粉を使ったスペシャルデーにするぞ!」
翔太の一声で、夕食後に『粉まつり』が始まった。
リビングのテーブルには、家中から集められた粉類がずらりと並ぶ。小麦粉、米粉、ホットケーキミックス、片栗粉、お好み焼き粉……見るだけでわくわくする光景だ。
- 結衣と澄江は、家にあった米粉でお団子作り。三色団子に挑戦し、春らしい色合いに仕上げた。
- 翔太と海斗は、パンケーキタワーに挑戦。高く積み上げたパンケーキに、たっぷりのシロップとフルーツを飾り付けた。
- 愛は小麦粉でクレープを焼き、デザインアートに挑戦。細かい花模様や動物の形を器用に描いていく。
リビングには、甘い香りと笑い声が広がる。
「焦げたー!」
海斗が叫び、翔太も「まあ、これも味だ!」と笑う。
愛のクレープには、花の模様や星の形、さらには小さな家族の似顔絵まで描かれていて、勝が「これは芸術作品だな」と目を細めた。
「次はもっと立体的なパンケーキアートに挑戦しようかな。」
愛が楽しそうに言うと、海斗も「僕は顔を描く!」と張り切った。
「それなら僕は、お団子タワー作ろう!」
海斗が笑いながら宣言し、またみんなを笑わせた。
最後は、みんなで作ったスイーツを並べた『粉バイキング』!
「いただきます!」
色とりどりのお菓子を前に、家族それぞれが好きなものを手に取り、わいわいと盛り上がる。
翔太が、バターたっぷりのホットケーキを頬張りながら言った。
「粉って、いろんなものに変身するんだな。」
海斗は両手いっぱいにクッキーを抱えながら、「粉ってすごい魔法だ!」と目を輝かせた。
「粉一粒から、たくさんの幸せが生まれるのよ。」
結衣がやさしく微笑む。
勝もゆっくりと頷いた。
「目に見えない小さなものが、大きな喜びに変わる。それは粉も、人の心も同じだな。」