5月5日(月):こどもの日
朝、山本家の庭には、色とりどりのこいのぼりが元気よく泳いでいた。柔らかな青空に映えるその姿を、海斗はわくわくした表情で見上げていた。
「やったー!こどもの日だ!」
リビングでは、澄江と結衣が朝から柏餅の準備に追われていた。柏の葉の香りが家中に広がり、幸せな気分を誘う。
「今日は子どもたちの成長を祝う日だ。海斗、元気に大きくなれよ。」
勝は新聞をたたみ、にこやかに声をかけた。
「うん!」海斗は勢いよく答え、そのまま愛に飛びついた。
「ちょっと、やめてよ!」
愛が笑いながら軽く海斗を押し返す。その様子に結衣もほほ笑み、朝のリビングは明るい空気に包まれた。
勝はさらに、海斗に昔話をして聞かせた。「おじいちゃんの子どもの頃は、紙のこいのぼりを作って、みんなで屋根に上げたんだぞ。」
海斗は「えー!手作り!?」と目を輝かせた。
午前中は、翔太と海斗で『秘密基地作り』に挑戦した。
「ここに柱を立てて……」
「屋根はブルーシートでどう?」
翔太が自分の子ども時代を思い出しながら、ホームセンターで買ってきた木材やロープを駆使して、庭の隅に小さな秘密基地を作り上げた。
「完成ー!」
中に入った海斗は、満面の笑みを浮かべた。内部には段ボールで作った机や、古いクッションを持ち込んで、まるで小さな城のようだった。
愛も興味津々で中を覗き込み、「意外としっかりしてるね」と感心しながら、壁に可愛い絵を描き加えた。
「この基地には名前が必要だね!」
海斗が言い出し、みんなで『こいのぼり秘密基地』と名付けた。
勝と澄江もベンチに腰掛け、そんな孫たちの姿を温かく見守っていた。
勝は、「基地に旗を立てたらどうだ?」と提案し、澄江は小さな旗を布で作って持ってきた。
昼食は、柏餅とちらし寿司でお祝い。
「いただきます!」
炊き立ての酢飯と彩り豊かな具材、もっちりとした柏餅に、家族全員の笑顔があふれた。
「すごいね、海斗!」
結衣が優しく頭を撫でると、翔太も「次は家具も作ろうか」と提案する。
「じゃあ、机とイスも作る!」
海斗は目を輝かせながら、新たな夢をふくらませた。
昼食後には、愛がこいのぼりの由来を調べて家族に披露した。
「こいのぼりは、鯉が滝を登って龍になるという中国の伝説が元なんだって!」
「へえ、知らなかった!」
翔太も驚き、勝も嬉しそうに頷いた。
「龍みたいに強くなれたらいいな!」
海斗は腕をぐっと曲げて見せ、家族みんなを笑わせた。
午後は、家族みんなで庭にテントを張り、小さな『こどもの日フェスティバル』を開催した。
- 柏餅早食い競争(翔太が惨敗してお腹をさすりながら笑う)
- こいのぼりクイズ大会(愛が圧勝し、海斗が悔しがる)
- こどもの日記念写真撮影(勝が昔ながらのフィルムカメラでも撮影)
さらに、海斗発案で『秘密基地探検ゲーム』がスタート。
家族が交代で秘密基地の中に隠した小さな宝物を探し出す遊びで、海斗が司会進行を務めた。
「はい、次はお姉ちゃんの番!」
愛が基地の奥から小さな木の実を発見して大歓声が上がった。
翔太と結衣は、そんな無邪気な子どもたちの姿に目を細めながら、そっと手をつないだ。
「今日、すっごく楽しい!」
海斗が叫び、翔太も頷く。
「毎日がこんなふうだったらいいな。」
澄江がそっと言った。
「でも、特別な日があるからこそ、普段の毎日も輝くんだよ。」
勝が静かに付け加えた。
「家族で一緒に祝えること、それが一番の宝物だな。」