4月30日(水):国際ジャズ・デー
夕暮れ時、リビングには軽やかなジャズのメロディーが響いていた。
「今日はジャズの日なんだって?」
キッチンでサラダを盛り付けていた結衣が、ふと思い出したように翔太に問いかける。
「そうそう、国際ジャズ・デーって言うんだってさ。仕事の合間にラジオで聞いたんだよ。」
ソファでくつろぎながら新聞を読んでいた翔太が、のんびりと答える。
「ジャズかぁ……あんまり詳しくないけど、なんかリズムがいいよね。」
大学の課題をスケッチしながら、愛が言葉を継いだ。
ちょうどそこへ、祖父の勝がリビングに入ってきた。
「ジャズはいいぞ。心がリラックスするからな。昔はよくレコードを聴いていたもんだ。」
その言葉に海斗が、目を輝かせて言う。
「おじいちゃん、ジャズって何?僕にもわかる?」
「もちろんだとも、海斗。ジャズっていうのはね、心で感じる音楽なんだよ。即興で自由に演奏するのが特徴で、演奏者の感情がそのまま音になって流れてくるんだ。」
勝は優しい目で孫を見つめながら語った。
「へぇー、自由な音楽なんだ。なんか楽しそう!」
海斗が嬉しそうに言うと、勝は小さく頷いた。
夕食のテーブルを囲む頃には、ジャズのリズムがより一層心地よく流れ、食卓の会話も弾む。
「パパ、仕事の疲れもジャズで吹き飛んだんじゃない?」
愛がいたずらっぽく翔太に話しかけると、翔太はニヤリと笑った。
「確かに。ジャズのおかげか、今日は肩が楽だなぁ。」
そんな中、結衣がふと口を開いた。
「音楽って不思議ね。こうしてみんなで同じ曲を聞いてると、家族がひとつになった気がする。」
澄江が微笑みながら頷く。
「ほんとにね。家族みんなが元気でこうして一緒にいられる。それが一番の贅沢だわ。」
食事が終わり片付けが済むと、勝が古いレコードをリビングに持ってきた。
「せっかくだから、昔よく聴いた曲をかけようか。」
レコードプレーヤーに針が落とされると、暖かなサックスの音が部屋を満たした。全員がゆったりとその音色に耳を傾ける。
「なんかこれ、映画のワンシーンみたいじゃない?」
愛が笑いながら言うと、翔太もそれに応えた。
「家族でジャズを聴くシーン、いいな。映画化してもらうか。」
海斗が突然立ち上がり、手を動かし始めた。
「僕、ジャズの指揮者になる!」
そんな彼の無邪気な姿を見て、みんなが笑った。
ジャズの優しいメロディーに包まれた夜は、山本家を静かに包み込んでいく。ゆったりとした時間が流れる中、勝が穏やかな声でそっとつぶやいた。
「ジャズは自由の音楽。家族もまた、自由にそれぞれの音を奏でながら、一緒に素敵なハーモニーを作っていければいいな。」