4月27日(日):世界デザインの日
朝の光が柔らかく差し込むリビングで、愛は机の上にスケッチブックや色鉛筆、マーカーを広げ、熱心に何かを描き込んでいる。その横で弟の海斗が、好奇心いっぱいに覗き込んだ。
「ねえ、お姉ちゃん。今日は世界デザインの日なんだって!何描いてるの?」
愛は手を休め、少し誇らしげな表情で答える。
「これは大学の課題でね、『家族をテーマにしたデザイン』を考えるの。でも、思ったより難しい。」
「家族をテーマって、僕たちのこと描いてるの?」
愛は笑ってうなずく。
「うん、家族の特徴を生かしたオリジナルグッズをデザインするんだ。たとえば、おじいちゃんの盆栽モチーフとか、おばあちゃんの刺繍の模様を使った小物とか。」
海斗がぱっと目を輝かせた。
「すごい!じゃあ、僕の昆虫も入れてよ!」
「もちろんだよ。でも昆虫デザインって意外に難しいんだよね。」
そこへ、ちょうど結衣が家庭菜園から収穫したばかりの野菜を手に、リビングにやってきた。
「おはよう、何の話?」
「ママ、聞いてよ。お姉ちゃんが家族モチーフでデザイン作ってるんだって!」
「素敵ね。それならママの家庭菜園の野菜もデザインに入れてほしいな。葉っぱとかトマトとか可愛いでしょう?」
愛が楽しそうに笑う。
「いいね、それも面白いかも!」
その会話を聞いていた翔太がソファから顔を上げた。
「そういえば、会社でもデザイン思考って流行ってるよ。仕事でもデザインって大切なんだよな。」
「デザイン思考ってなに?」海斗が首をかしげる。
「それはね、何か新しいものを作るときに、使う人の気持ちや生活を考えて作るやり方だよ。デザインっていうのは、見た目が良いだけじゃなくて、使いやすさや機能性を考えることも大切なんだ。」
その言葉に愛がうなずく。
「それ大学でも習ったよ。デザインって、ただ絵を描くだけじゃなくて、人の役に立ったり、生活を良くしたりできるんだよね。」
海斗が突然アイデアを思いついたように言った。
「じゃあ、お姉ちゃん!僕の昆虫コレクションを整理する箱、デザインしてよ!もっと使いやすくて、カッコいいやつ!」
愛は少し考えた後、楽しそうにうなずいた。
「それ、面白そうだね。昆虫の種類ごとに分けて、取り出しやすくて、見た目もおしゃれな収納ボックスにしてみようか。」
勝が新聞を畳みながら会話に入ってきた。
「そういう具体的な問題を解決するのが、デザインの一番面白いところだな。愛の勉強にもぴったりだ。」
「本当だよね。やってみよう!」
その日の午後、家族全員がリビングに集まり、『山本家オリジナルグッズ』をデザインするミニワークショップが始まった。
勝は盆栽用の道具ケースを希望し、澄江は刺繍の図案を活かしたハンカチや巾着袋を提案した。
結衣はキッチン用品に家庭菜園のモチーフを、翔太は仕事で使うノートの表紙を提案した。
愛はそれらをひとつずつ丁寧にスケッチし、色や素材を考えながらみんなのアイデアをまとめていく。
「こうやってみんなの声を聞きながらデザインするって、楽しいな。」と愛が言った。
海斗も自分の昆虫コレクションボックスのスケッチを見て、満足そうにうなずく。
「僕、将来デザイナーになっちゃうかも!」
その言葉に家族が笑った。
勝が穏やかな表情で言った。
「家族みんなで何かを作るって、本当にいいものだね。それこそが、生活を豊かにするデザインなんだろうな。」
夕暮れ時、愛のスケッチブックには家族それぞれの個性が溢れた作品が並んでいた。そのページを見つめながら愛は心から嬉しそうにつぶやいた。
「家族をデザインするって、こんなに素敵なことだったんだ。」