4月26日(土):世界知的所有権の日
その日、愛はリビングで真剣な表情を浮かべ、スケッチブックを広げて鉛筆を動かしていた。
「ねぇ、お姉ちゃん。何描いてるの?」
弟の海斗が興味津々で覗き込む。
「大学の課題でさ、新しいデザインを考えなくちゃいけないの。でも、アイデアがなかなか浮かばないんだよね。」
「ふーん。なんか難しそう。」
海斗がぼんやりと答えると、リビングにいた勝が新聞を置いて声をかけた。
「今日は世界知的所有権の日だって、みんな知ってるか?」
「知的所有権?」と、海斗が首を傾げる。「それ、なに?」
結衣がキッチンから顔を出しながら微笑む。
「海斗、それはね、自分で考えたアイデアや作品を他の人に勝手に使われないように守る権利のことなのよ。」
「じゃあ、お姉ちゃんの描いた絵も?」
「そうだよ。」翔太がソファに腰掛けながら答える。「愛が一生懸命考えたデザインやイラストにも、ちゃんと権利があるんだぞ。」
愛はスケッチブックを持ったまま小さくため息をつく。
「でもさ、自分のデザインが本当にオリジナルなのかって、どうやってわかるのかな?」
すると勝が優しくうなずいた。
「確かにそれは難しい問題だな。でもな、自分が一生懸命考えたものであれば、そこには必ず自分だけの何かがあるはずだよ。誰かのマネじゃなくて、自分らしさを大切にすることが肝心だ。」
愛は考え込むように鉛筆を動かし、スケッチブックを眺める。
「自分らしさ、か……。」
すると、海斗が突然ひらめいたように手を挙げる。
「ねえ、お姉ちゃん!僕の昆虫図鑑のデザインしてよ!」
「昆虫図鑑?」愛が驚いて顔を上げる。
「うん!お姉ちゃんのイラストで、世界に一つだけの昆虫図鑑を作るんだよ!絶対誰も真似できないでしょ?」
その言葉に、翔太が面白そうに笑った。
「それ、いいアイデアだな。愛の絵なら、オリジナルの価値が出るし、海斗の知識も生きる。」
結衣も笑顔で頷いた。
「素敵ね!愛のデザインで、海斗が昆虫について解説を書くの。二人の力を合わせたら、世界に一冊だけの図鑑ができるわ。」
愛は少し照れながら、でも嬉しそうに微笑んだ。
「それ、面白いかも。海斗、本当に協力してくれる?」
「もちろんだよ!だって僕、昆虫のことなら誰にも負けないもん!」
勝がそれを聞いて微笑んだ。
「二人の作品なら、確かに知的所有権を主張する価値があるな。きっと素晴らしいものになる。」
「じゃあ、早速始めよう!」と海斗が元気よく叫んだ。
夕食後、愛は再びスケッチブックを広げ、海斗は図鑑や資料を机の上に並べて真剣に話し合っていた。
「まずはカブトムシかな?それともチョウ?」愛が尋ねると、海斗が興奮気味に答えた。
「カブトムシだよ!特にヘラクレスオオカブト!絶対カッコよく描いてね!」
結衣と翔太はその姿を微笑ましく眺めていた。
「二人とも、すごく楽しそうだな。」翔太が静かにつぶやくと、結衣は優しく頷いた。
「本当に。世界知的所有権の日にぴったりのプロジェクトになったわね。」
勝は盆栽を手入れしながら言った。
「大切なのは、自分の考えやアイデアを誇りに思うことだな。そしてそれを守り育てることだ。」