表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/297

4月21日(月):民放の日

夕食後の山本家リビング。テレビからはバラエティ番組の賑やかな音が響いていた。


「ねぇ、今日って“民放の日”なんだってさ」と、愛がリモコンを握りながら言った。


「民放の日?それ、何?」とソファでゴロゴロしていた海斗が振り向く。


「1951年に、日本で初めて民間の放送局に免許が交付された日なんだって。つまり、今見てるこのテレビ番組が成り立ってるのも、その日があったからってこと」。


「へぇ、昔はテレビなかったの?」と海斗。


そのとき、勝が新聞をたたんで話に入った。「そりゃあそうだ。おじいちゃんが小学生のころは、まだ白黒だったからね。最初に見たテレビは、力道山がプロレスをしてるやつだったかな」


「白黒!? えー、つまんなそー!」と海斗が声を上げる。


「映像がカラーじゃなくても、想像力で補うのが楽しかったんだよ。音だけのラジオドラマだって、毎週楽しみにしてたくらいだ」


「それって、今のYouTubeみたいな感じ?」と愛が尋ねる。


勝は少し考えた後、ふっと笑った。「そうかもな。違うのは、みんなが一つのラジオを囲んで聴いてたってところだ。家族全員でな」


そのとき、キッチンから結衣が「ご飯の後片付け終わったよー。テレビ見すぎて目が疲れない?」と声をかけてきた。


翔太が「いや、今日は“民放の日”だから、ちゃんと見るのも一つの勉強ってことで」と言って、ビールを片手にニヤリと笑う。


「お父さん、さっきから言い訳ばっかじゃん」と愛が笑いながら突っ込むと、海斗も負けじと続けた。「でもさ、民放って何の略?民間放送?」


「そう。NHKみたいな国営じゃなくて、企業が運営してるテレビ局のことね」と愛がスマホで調べながら解説した。


「ふーん、じゃあコマーシャルいっぱいあるやつ?」と海斗。


「そういうこと。でも、そのおかげで無料でテレビが見られるんだよ」


勝がうなずいて「だから昔のCMも面白かったよ。ほら、“ピッカピカの一年生”ってやつ、覚えてるか?」と懐かしげに話すと、翔太がすぐに反応する。


「それ、めっちゃ覚えてる!あの頃はCMソングもよく口ずさんでたなあ」


「今はスキップするのが当たり前だけど、あの頃はCMもエンタメだったのよね」と結衣が加わる。


その後、テレビでは昭和の名作ドラマ特集が始まり、勝は画面を見つめながら「これ、昔、澄江と一緒に見たんだ」とぽつり。


「へぇ、おばあちゃんと?」と海斗。


「うん。放送は一週間に一度だけ。再放送なんてなかったから、観られなかったらそれでおしまい。録画もなかったしな」


「じゃあ、録画できるってすごいことなんだ…」と愛が感心する。


「便利になったけど、待つ時間の楽しみってのも、また違った味があったもんだ」と勝。


その言葉に、家族はしばし静かにテレビを見つめた。


ふと海斗が口を開いた。「ねぇ、僕たちも、昔のテレビ番組見ながら、家族で笑ってるって…将来の誰かにとっては“懐かしい記憶”になるのかな?」


翔太が笑いながら「そうかもな。じゃあ、今のうちに録画しとこうか?“山本家の思い出チャンネル”でも作るか」と言うと、愛がすかさず「それはちょっと恥ずかしいかも…」と顔を赤くした。


結衣がクスクス笑って言った。


「でも、家族で過ごすこういう夜が、一番のゴールデンタイムなのかもね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ