表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/298

4月11日(金):ガッツポーズの日

「……できたああああああああっ!!」


リビングに響き渡る、海斗の大声。そして、両手を高く突き上げる“ガッツポーズ”。


「どうしたの、海斗。いきなりプロレスの勝利宣言かと思ったわ」

結衣がキッチンから顔を出して笑う。


「ちがうもん!宿題ぜんぶ終わったから、ガッツポーズなんだよ。今日は“ガッツポーズの日”なんだって!」


「へえ、よく知ってるじゃない」

ソファでくつろいでいた翔太が新聞をたたみながら応じる。「確か、ボクサーのガッツ石松さんが初めてやったから、そう呼ばれるようになったんだよな」


「うん!朝、学校で先生が話してたの!」


「で、何の宿題だったの?」

愛が2階から降りてきてスケッチブックを持ちつつ問いかける。


「理科の観察日記と、算数のプリントと、家庭科の“健康な朝ごはん”の献立考えるやつ!」


「健康な朝ごはんって……なんかタイムリーだね。今週ずっと野菜まみれだったし」

愛が笑う。


「お姉ちゃん、それは母さんの“世界保健週間”メニューのせいでしょ」

翔太がからかうように言う。


「おかげで今日のお弁当、彩りだけは完璧だったわ」


結衣が「彩り“だけ”ってどういうこと?」とツッコむと、リビングに笑い声が広がった。 


一方、勝は和室で盆栽に霧吹きをかけながら、静かに言った。


「いいねぇ。ガッツポーズ、わしも久しぶりにしたくなってきたよ」


「おじいちゃんが? 何に対して?」

海斗が目を輝かせる。


「ふむ……たとえば、“今朝の剪定がきれいに決まったとき”とか?」


「地味だけど、かっこいい!」


「わしにとっては、盆栽の“構え”が、ボクサーの“ファイティングポーズ”だからな」


「名言出た!」 


その後、夕飯を囲む時間。テーブルの上には、海斗が“家庭科の宿題”で考えた献立を再現した、野菜炒めと味噌汁、雑穀ごはんが並んでいた。


「ぼく、ちゃんと“バランスよく”考えたんだよ」


「これ、私のお弁当と同じ構成なんだけど」

愛がにやりと笑う。


「いいじゃない。健康第一よ」

結衣が微笑んで言った。


「じゃあ、みんなで今日の“がんばり”に乾杯ならぬ……」


翔太がグラスを掲げて言う。


「ガッツポーズで締めますか!」


全員が笑いながら、ひとりずつ“自分流ガッツポーズ”を披露していく。


「じゃあ、私から。“無遅刻3日目達成”ガッツポーズ」

「“野菜の皮むき1ミリ厚さ以内キープ”ガッツ!」

「“洗濯ものたたみ、今日こそ間違えなかった”ガッツ!」

「“ぼく、怒られずに一日終えた!”ガッツポーーーズ!!」


最後はみんなで大笑い。 


夜、愛が机でレポートに向き合いながら、小さくひとり言をこぼす。


「私の今日のガッツは……“提出物、締切5分前でセーフ”……かな」


そして、ペンを置いて、小さく拳を握る。


「ガッツ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ