12月23日(月):東京タワー完成の日
「今日は東京タワー完成の日なんだってさ。」
祖父の勝が新聞を広げながら言うと、居間の炬燵の中にいた弟の海斗が目を輝かせた。
「おじいちゃん、東京タワー行ったことあるの?」
勝はニコニコしながら頷いた。「もちろんだ。完成した翌年に、友達と一緒に上まで登ったことがある。あの時は、あんなに高い塔ができるなんて夢のようだったよ。」
「どんな景色だったの?」海斗が興味津々に身を乗り出す。
「それがな、海斗。昭和の東京は今みたいにビルがぎっしりじゃなくて、スカイツリーなんて影も形もなかった。だから、ずーっと遠くまで見えたんだよ。富士山までくっきり見えたし、夜になると星が近くに見える気がしてね。」
「わぁ、すごい!」海斗の声が弾む。
台所からその様子を見ていた母の結衣が微笑みながら言った。「海斗、東京タワーには行ったことないけど、スカイツリーには行ったじゃない。」
「スカイツリーは行ったけど、東京タワーは違うんだよ!赤と白でかっこいいし、なんかロボットみたいでしょ?」
「ロボットねぇ。」姉の愛が部屋に入ってきて、炬燵の端に座る。「でも、最近は東京タワーよりスカイツリーの方が注目されてるかもね。」
「そんなことないよ!東京タワーは日本のシンボルなんだよ!」海斗がムキになって反論すると、愛はくすっと笑った。
「まあまあ、喧嘩しないで。」勝が笑いながら仲裁に入る。「東京タワーが完成した時、みんな誇らしく思ったんだ。あれは、日本が戦後から立ち直って、新しい時代に進んでいく象徴だったからね。」
「じゃあ、東京タワーって特別なんだね。」海斗がしみじみと言う。
「そうだとも。」勝は頷いた。「海斗もいつか、じっくり見てみるといい。写真や映像で見るのとは全然違うよ。」
その話を聞いていた父の翔太が、玄関から入ってきた。「ただいまー。何の話をしてるんだ?」
「東京タワー!」海斗が即答する。
「ああ、今日は東京タワーの日か。」翔太がコートを脱ぎながら笑う。「そういえば、会社の同期が来週家族で行くって言ってたな。」
「ねぇ、お父さん、僕たちも行こうよ!」海斗が勢いよく言った。
「お、いいじゃないか。年末のどこかで時間を作ってみるか。」翔太が快諾すると、海斗はぴょんと跳ね上がった。
「やったー!」
その様子を見ていた愛がポツリと言った。「東京タワー、イラストに描いてみようかな。」
「いいね。」結衣が笑顔で応じる。「愛が描いた東京タワー、きっと素敵だろうな。」
「お母さん、それってプレッシャーなんだけど。」愛は照れくさそうに肩をすくめた。