3月23日(日):世界気象デー
「ねぇ、今日は世界気象デーって知ってた?」
朝食のテーブルで愛がスマホを眺めながら話し出した。
「世界気象デー?なにそれ、初めて聞いた」
トーストをほおばりながら海斗が興味津々で首を傾げる。
「世界中で気象について考える日よ。気候変動とか地球温暖化とか、大事なことを再確認する日なんだって」
結衣がコーヒーを注ぎつつ穏やかに説明する。
「へぇ~、ちょっと難しそうだけど、大事なテーマだよな」
翔太が新聞を畳んでうなずきながら話に加わる。
澄江も食卓を見回しながら頷いた。
「確かにねぇ、最近の天気はほんと変だものね。急に暑くなったり、急に寒くなったり、体調崩しやすいわ」
「僕、将来昆虫博士になるから、気候が変わると虫が減っちゃって困るよ!」
海斗は真剣な表情で訴える。
その様子を見て勝が微笑んだ。
「その気持ちはいいな、生き物にとって気象は本当に大事だからな」
その時、愛が少し不安そうな表情を浮かべた。
「私、大学で自然環境に関する授業があるらしいんだよね。ちゃんと理解できるかな……」
結衣が愛に優しく声をかける。
「愛ならきっと大丈夫よ。一番大事なのは、まず関心を持つことだからね」
「そうそう。あんまり心配しすぎないで、興味が湧いてくるはずさ」
翔太も穏やかな口調で応援する。
夕方、海斗が庭で何か熱心に観察している姿を勝が見つけた。
「海斗、何をしているんだ?」
勝が盆栽の手入れをしながら問いかける。
「雲の観察をしてるんだよ!学校で習ったんだ。雲の形が天気の変わるサインなんだって」
海斗は真剣な目で空を見上げている。
「素晴らしいな、昔の人はな、雲の形や風の向きで天気を予想したものだよ。自然との付き合い方を学ぶのはいいことだ」
勝が懐かしそうに語る。
リビングでは、愛が大学生活の資料を広げて結衣に相談を始めていた。
「新幹線通学、毎日早起きだし大変かな……最初は特に不安だな」
結衣が優しく励ます。
「最初は誰だって不安になるわよ。でも愛ならきっとすぐに慣れるから。新しい環境に踏み出す勇気が一番大事」
翔太がそこに入ってきて話をつなぐ。
「そうだよ、天気だって晴れの日も雨の日もあるだろ?人生もそれと同じ。どっちも楽しむくらいがちょうどいいんじゃないか?」
「お父さん、珍しくいいこと言うね!」
愛が笑顔を見せ、家族の空気が和らいだ。
夕食時、家族が再び集まった。テーブルには結衣が家庭菜園で育てた野菜を使った料理が並ぶ。
「こうして自然の恵みを食べると、気象の大切さをより感じるわね」
澄江がしみじみと言葉を口にした。
食後、リビングに家族が集まり、勝が静かに物語を語り始める。
「今日は特別な日だからな、気象をテーマにした冒険物語を話そうか」
「やったー!」海斗は大喜び。
「昔々、気象を自由に操る不思議な少年がいてな、その少年は雲を呼び寄せたり、雨を止ませたりできたんだ……」
勝の語る物語に家族全員が引き込まれる。
物語が終わると、愛がそっと言った。
「天気も人生も、結局は変化があるからこそ面白いんだね。不安になるのも、その変化の一部なのかな」