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3月22日(土):放送記念日

「みんな、今日は放送記念日だ!」

リビングのソファに座ってラジオを調整している勝が、嬉しそうに孫たちに声をかける。


「放送記念日って何?」

小学5年生の海斗が興味津々に聞く。


「NHKがラジオの仮放送を始めた日なんだよ。1925年、大正14年の今日、東京の芝浦で放送が始まったんだ。」

「へえー、ずっと昔からあるんだね」


リビングに入ってきた愛が言う。

「今はネットの時代だし、ラジオとかあんまり聞かなくない?」


それを聞いていた結衣が微笑んだ。

「でもラジオって、声だけだからこそ想像力が働くし、なんか温かい感じがするのよね。」


「その通りよ、結衣さん」と、澄江が刺繍をしながらうなずいた。


翔太が玄関から帰ってきた。

「ただいま。お、ラジオなんて珍しいな。」


「今日は放送記念日だから、思い出のラジオ番組を聞こうと思ってね。」

勝が微笑む。


夕食の時間。ラジオから懐かしい音楽と、穏やかなアナウンサーの声が流れ出す。

「これ懐かしい!昔よく聞いてた番組だよ。」と翔太が驚く。


「お父さん、こんなの聞いてたの?」愛が不思議そうに聞く。

「そうだぞ。昔はこのラジオを聞きながら宿題してたりしてな。」翔太は遠い目をする。


「私は料理するときによく聞いたわ。」澄江が微笑む。

「え、おばあちゃんも?」海斗はびっくりして目を丸くした。


勝が笑いながら説明する。

「テレビが普及する前は、家族の真ん中にラジオがあったんだ。みんなで一緒にラジオドラマを聞いたり、ニュースを聞いたりな。」


結衣が懐かしそうにつぶやく。

「声だけなのに、その場にいるような気がして、本当に楽しかったわ。」


「ふーん、面白そうだな。僕ももっと聞きたい!」

海斗がラジオに耳を近づける。


その時、ラジオから懐かしい音楽が流れ出した。勝が驚いたように言った。

「ああ、この曲…懐かしいな。おばあちゃんと初めてデートした時に喫茶店で流れていた曲だよ。」


「まあ、あなたったら!」澄江が顔を赤らめる。

「おじいちゃん、そんな昔のこと覚えてるんだね。」海斗が驚く。


翔太が感慨深げに言った。

「ラジオって、不思議と昔のことを思い出させるよな。」


勝が頷く。

「そうだね。そして、その思い出があるから次に進めるんだよ。愛も大学が始まるし、海斗も新学年になる。家族それぞれ、新しいステップに進む日が近い。」


「新しいステップか…」愛がつぶやく。

「うん、新幹線通学もちょっとドキドキするな。でも、頑張ってみる。」


「僕も6年生になるから、頑張らないと!」海斗も元気に言う。


「そうだな。ラジオみたいに、見えなくても大切なものっていっぱいある。新しいことに挑戦する気持ちもその一つだ。」翔太が言葉を重ねた。


放送記念日の夜、リビングに響く懐かしい音楽と家族の笑い声。


勝が穏やかに言った。

「思い出を胸に、また明日から一歩踏み出そう。いつだって家族が一緒だからな。」

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