3月21日(金):ランドセルの日
「ただいまー!」
玄関の引き戸が勢いよく開くと、海斗が元気な声で帰ってきた。ランドセルはいつもよりピカピカに輝いている。
「おかえり、海斗!随分元気だね。今日は何かあったの?」
キッチンで夕飯の準備をしていた結衣が顔を覗かせた。
「うん!先生が今日は『ランドセルの日』だって教えてくれて、みんなでランドセルをピカピカにしたんだ!」
海斗は胸を張って得意げにランドセルを見せる。
「へぇ、すごいじゃない!大切に使ってるのね」
結衣は微笑みながらランドセルを撫でる。
その時、階段の方から愛が降りてきた。
「何?ランドセルの日って?」
「今日ね、先生が教えてくれたんだよ。ランドセルを大事にする日なんだって!」
「ふーん、そんな日があるんだ。私も小学校の頃はランドセル大切にしてたなあ」
愛が少し懐かしそうに呟く。
すると、リビングで新聞を読んでいた勝が眼鏡を外して顔を上げた。
「ランドセルはな、元々は兵隊さんが背負ってたリュックが元になったんだぞ。昔は外国から取り入れた新しい文化だったんだ。」
「そうなんだ!なんかかっこいい!」
海斗が驚いて目を輝かせる。
その時、仕事から帰ってきた翔太がリビングに入ってきた。
「ただいま。なんだなんだ、ランドセルの話?」
「お父さん、ランドセルって兵隊さんが使ってたんだって!知ってた?」
海斗が嬉しそうに報告する。
「知ってるぞ。俺も昔おじいちゃんから聞いたことがあるよ。でも、そうやって大事に使う気持ちって大切だよな。」
翔太が微笑んで頷いた。
「ねえ、お姉ちゃんは何色のランドセルだったの?」
海斗が興味津々に尋ねる。
「私?赤だけど、実は青が良かったんだよね。でもお母さんが赤が似合うって言って……」
愛が少し照れ笑いを見せる。
「じゃあ僕も、次は青にしようかな!」
海斗が元気いっぱいに言うと、家族は笑い出した。
食事の時間になり、結衣がみんなに温かい料理を振る舞う。
「ランドセルの日だし、今日は特別にお祝いしましょうか」
食卓にはいつもより少し豪華な料理が並び、家族みんなでそれを囲んだ。
「海斗、ランドセルは6年生までだぞ。その後は自分の好きなバッグで通学するんだ。」
翔太が教えると、海斗はちょっと寂しそうな顔をした。
「でもね、海斗。ランドセルは卒業しても、その中に詰まった思い出はずっと消えないんだよ」
勝が優しく語りかける。
「思い出?」
「そうだよ。友達と遊んだこと、勉強したこと、いろんなことがランドセルと一緒に残っているんだ」
「じゃあ、僕のランドセルにもたくさん思い出を詰めるよ!」
「いいね、それ」愛が微笑んだ。「私も大学のバッグに、これから新しい思い出を詰めていくよ」
「ランドセルもバッグも、夢の箱ってことだね」
結衣がほっこりと呟くと、みんなが頷いた。
海斗は自分のランドセルを大切そうに見つめながら、小さくつぶやいた。
「夢の箱か。僕、絶対大切にするよ!」