12月21日(土):冬至
冬至の日、山本家の居間はいつも以上ににぎやかだった。
「今日は一年で一番夜が長い日なんだって!」海斗がソファに飛び乗りながら叫ぶ。
「そうだな、海斗」と、祖父の勝が頷きながら新聞をたたむ。「冬至には『かぼちゃを食べると風邪をひかない』という言い伝えがあるんだよ。食べ物にも意味があるんだ」
「かぼちゃ? ゆず湯に入るのは知ってるけど、それも?」愛がスマホをいじりながら応じる。
「そう。かぼちゃには栄養がたっぷり。昔は冬に野菜が不足しがちだったから、保存が利くかぼちゃを食べて栄養を補ったんだ」と、勝がにこやかに説明する。
「でもさ、おじいちゃん。ゆず湯ってなんで?」海斗が目を輝かせて尋ねる。
「『ゆず』は『融通がきく』という語呂合わせで、悪いことを流し去る縁起物なんだ。体も温まるし、いいことづくしだね」
結衣が台所から顔を出す。「今日はかぼちゃの煮物を作ったから、みんなでいただきましょうね。それから、ゆず湯も準備するわ」
「お母さん、私が手伝うよ」と愛がスマホを置いて立ち上がる。「海斗、あんたも手伝いなさいよ」
「えー、なんで僕が!」と海斗は文句を言うが、勝に「これも冬至の一環だ」と軽く肩を叩かれると、渋々台所へ向かった。
一方、翔太は仕事から戻りながら、「お、いい香りだな」とコートを脱ぎながら居間に入る。「今日の主役はかぼちゃか?」
「そうなの!」結衣が笑顔で応える。「今年は家庭菜園で採れたかぼちゃだから、きっとおいしいわよ」
夕食時、テーブルには鮮やかなかぼちゃの煮物が並び、家族みんなが集まった。
「うわ、甘くておいしい!」と海斗が大きな口で頬張る。
「こういうの、ほんとに落ち着く味だよな」と翔太も箸を進める。
「冬至だからって食べるだけじゃなくて、こうして家族で集まれるのが一番いいんだよ」と勝がしみじみと言うと、愛が頷いた。
「確かにね。こういう習慣、大事にしたいな」
食事が終わると、勝が提案する。「よし、ゆず湯だ。さっき温めておいたよ。体の芯から温まろう」
海斗が嬉しそうに浴室へ駆け込み、「僕、ゆず湯初めて! どんな感じなんだろう?」と興奮して叫ぶ。
その夜、山本家の家族全員がぽかぽかに温まり、夜長のひとときを語り合った。「これが冬至の夜の楽しみってやつだな」