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第1話 私達の婚約を破棄致しましょうか

異世界恋愛の挑戦第2弾です!

新作投稿しました↓

【十年前、確かに私はあなたを愛しておりました。】

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「アーリ、君は本当に使えないな。こんな何の取り柄も無い女が俺の婚約者だなんて父上は何を考えているのやら」

「なら、私達の婚約を破棄致しましょうか」

「は……?」


 浮かべていた嘲笑を消し、王宮の執務室で数々の書類に目を通す私に悪態をついていたのは、この国の王子。

 正確には王位継承権第一位オウグス・イリアム殿下だ。


「ずっと……そうずっと考えておりました。いい加減我慢の限界というものです」

「き、貴様何を言っている……?この俺との婚約を──」

「破棄しましょう、と申しているのです」

「なっ……!?」


 あぁ殿下ったら顔を青くさせて……ずっとあなたが望んでいた事ではないのですか?

 それともまさか私から──何を言われても言い返さない人形のような私から──このような申し出をするとは思いもよらなかったのでしょうか?


 オウグス殿下は強く机を叩き、語気を強めた。


「はっ……貴様やはり頭に何も詰まっていないらしいな……!この俺との婚約を破棄して父上が黙っていると思うのか……!?貴様だけではない、侯爵家もどうなるか!?」


 私は座っていた椅子から立ち上がり、鋭い眼光を浴びせる殿下の目の前に先程から確認をしていた書類を差し出した。


「殿下、既に陛下はこの件について理解を示しておられます。この書類に陛下がお持ちの刻印が刻まれているでしょう?」

「なっ……!?」


 殿下は慌てて私から書類を奪い取り、左から右へ素早く眼球を動かしている。


 はぁ……一体何をそれ程驚いているのやら。

 ずっと『使えない女』『感情の無い、俺にとってただの道具』『体付きしか取り柄がない』そんな風に言われ続けてこの数年を過ごしてきた。


 あなたが望んだ結末でしょうに。

 

 私が目を伏せてため息を溢すと、殿下は書類を破り床にばらまいた。


「み、認めんぞこんなものっ。ふはは、これで父上が認めたらしい書類とやらも消えた……!ア、アーリ……貴様こんな事をしてただで済むと思うなよ……!?貴様は俺が居ないと何も出来ん女だ!齢も16を越える……今さら貴様なぞ貰い手も──」

「──殿下」

「……っ!?」

 

 私はそっと手のひらを向け、殿下の言葉を遮った。

 そして抑揚の無い口調で淡々と告げた。


「此度の事、陛下は大変お怒りでございます。陛下直属の暗部がこの一年私達を見張り、私の心の磨り減り様はよくご存知です。婚約を解消した後の貰い手も心配要りません。全て陛下のご指示の下済んでおります。本日こちらへ参ったのは書類の最終確認と殿下、あなたへの最後のお別れの為です」

「……な……にを……」


 唖然と口を開け固まるオウグス殿下。

 私は破られた書類の紙片をかき集め、手のひらに魔力を込めた。 


「殿下……あなたは婚約が決まってからのこの数年間、私をきちんと見て下さいましたか?」

「見ていたに決まっているであろう!?」

「なら──」


 私の手の中の書類は、みるみる内に紙片と紙片はその輪郭を重ね合わせ、数瞬の後には元の形へと戻った。


「──私、結構魔法を扱うのが得意だって事もご存知ですわよね?」

「……!」

「……残念です。婚約が決まった頃、政略結婚とは言え本気であなたをお慕い申しておりました。ですが……今日までの日々は……あまりにも……!」


 涙は見せない。

 そう決めていたのに目尻には熱いものが込み上げて来ていた。

 溢してたまるものか、ただその一心でそれを押し留める。


「……さぁ、殿下にとって念願の瞬間ですよ。使えない女から解放されるんです。もう少し笑って下さいよ」

「……」


 殿下はもう何も言わずただ立ち尽くしている。


 何故……そんな顔をなさるのか、私には本当に分かりませんわ。

 殿下の命令で課せられた執務室での仕事も、完璧にこなしていたのに蔑まれ、学園では私が隣に居ると穢れが移ると遠ざけたのに。それも周りには気付かれないように。


 あなたの何もかもが私には分からない。


 だけどもう良い。

 これで終わりだもの。


「さよならです、殿下。どうかお元気で……」

「ま、待──」


 私はそっと執務室のドアを開け、殿下の言葉を待たずにきつく閉めた。

お読み下さりありがとうございます!


続きが気になる、面白い。

少しでもそう思って頂ける方がおられればぜひスクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆に評価やブックマーク、いいね感想等ぜひ願いします!!

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