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ブリーフィング

 翌朝。飛行場のドックにて、光輝なる星輪隊は一堂に会した。


「全員集まったな。さて、本日のブリーフィングを始める。今日の依頼を受けてきた」


 ラッセルが皆を見渡す。


「おーおー、働き者なこって。冬が来る前に蓄えておかなきゃダメだもんな」


 ロレンスが不機嫌そうに呟いた。


「なんだ、ロレンス。不服ならお前は残っても構いやしねぇぞ?」


 ラッセルがロレンスに目を留めた。


「いいや、隊の決定なら従うさ。話の腰を折ってすまない。さぁ、今日はどちらの空を飛ぶんだ? そこに空があるのなら、わたしはどこにだって向かうさ」

「ロレンス。空ならどこにだってあるだろう。アニキの行くところならどこにでもついて行くって言う意思表示のつもりかい?」


 スティッキーノがおどけて茶化した。


「スティッキーノ。悪い冗談だ。そいつは笑ぇねぇな。とても悪い冗談だ」


 ロレンスはますます不機嫌な表情になった。腕組みをはじめて壁にもたれかかってしまった。


「おいおいお前ら。じゃれ合うのはそのくらいにしておけ。話を続けるぞ。ヨヘイザとコヘイザが俺達の仲間となった。今日は彼らの初陣だ。だから慣れてもらうために今日は東へと行く」


 ラッセルの言葉に皆が目を丸くする。ロレンスがひゅーいと口笛を吹いた。


「おいおい、随分とお優しいリーダー様じゃねぇか。よりによって東かよ!」


 ロレンスはさっきまでの不機嫌な様とは打って変わってご機嫌になった。


「ラッセルの旦那。流石に初陣で東の空はないのではないですかね。どこまで行くんです?」


 ゴドウィンがヨヘイザ達の様子を見ながら口を挟んだ。


「なにかまずいのであるか?」


 ヨヘイザが空気を察した。


「まずいことなんて何もないさ。慣れてもらうには実戦に限る。なら、ハーピー達が侵略してくる東側地帯の空を、ちょっと目立つように飛んでやりゃあ良い。そうすりゃ一発だぜ!」


 ラッセルはそういうとにやりと笑った。


「な、何が一発なのであるか?」


 ヨヘイザは不安そうにしている。ラッセルの考えが見抜けないようだ。


「間違いなく来るだろうな。ハーピーの先遣隊共が!」


 ロレンスが半笑いで答えを教えた。


「そういうことだ。やつらは規模が小さいとはいえ魔法を使う。被弾すれば戦闘機といえどもただじゃあすまない。適度にひりついた空気の中を飛ぶことになろう!」


 ラッセルは最初から実戦に新人を投入するつもりなようだ。ただ空を飛ぶだけでは身に付かない戦場の空気と言うものを教えようとしている。

 ヨヘイザもコヘイザも真っ青になっていた。


「アニキも人が悪いや! ハーピーの足りていないおつむの使う魔法なんて、戦闘機にそうそう致命打なんて与えられないって。それを知っていて新人に相手をさせようというんだから!」


 青ざめる二人を見て、スティッキーノが笑いながら二人の肩を叩いた。


「風の魔法を使うやつらは恐れるに足りん。雷撃手は東方面の霊峰奥深くにまで行かなければ会うこともないだろう。つまり今回は深追いしない。俺達の領土に踏み込んできた脳足りん共の相手だけで良い。つまり、今回の相手は新人が童貞を捨てるにはちょうど良い鳥女達なのさ」


 ラッセルがにっかりと笑った。ヨヘイザとコヘイザ以外のメンバーもどっと笑った。ヨヘイザとコヘイザの二人はとても楽観できる心境ではないので笑えなかったのだ。


「ラッセルの旦那は無謀に見えて綿密な計画を立てるリーダーだ。間違いなんてないさ! ま、肩の力を抜きなさいな。今のは笑うところでありますぞ」


 ゴドウィンもポンとヨヘイザとコヘイザの肩を叩いた。


「いいねぇ。腕がなるねぇ。我らが祖国の空を我が物顔で飛び交う鶏がら女共に、思い知らせてやらなければな。ラッセル。どちらがより多くの鳥女を天国にイカせられるか勝負といこうじゃねぇか!」


 ロレンスはいかなる時でもラッセルと優劣を付けたがった。ロレンスが天に向けて親指を立てた。それを見たラッセルが地を向けて親指を立てる。そして二人は拳を突き合わせた。勝負にのるかそるかのジェスチャーである。


「俺はいつだって受けて立つぜ。テクニックの違いを見せてやろう」


 ラッセルはいつでも勝負を受けてたっている。そしていつでも勝つのだ。揺るぎない自信のもとで常に勝利し続ける。だからこの光輝なる星輪隊のリーダーを務められる。


「じ、自分達はまだ飛行機に乗るのも慣れていないのであるが!」


 ヨヘイザがようやくここにきて主張を始めた。


「わかっている。しかし、ただ空を飛ぶだけならば誰でも出来る。戦場を駆け抜けろ。敵を撃墜しろとまでは言わない。敵のいる空に慣れろ。それだけだ」


 ラッセルはそう言うと、タバコに火をつけた。

 各自が愛機に乗り込み始める。その光景をラッセルは眺めている。そして地面に吸殻を落とすと、足でもみ消した。

 次々に滑走路に走り出し、空に向かって飛び立ち始める飛行機達。最後にラッセルがカーチスP1に乗り込み、そして大空へと昇った。

 五機の飛行機が隊列を組み、空を東へと飛び立つ。

 ラッセルがラジオのスイッチを入れた。軽快な音楽が流れてくる。


「いい風だ。今日は雲一つない良い空模様。これなら鳥女に奇襲される心配もない。新人でもなんとかなるだろう」


 と、無線からロレンスの声が聞こえてくる。


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