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さようなら世界
行方不明者が減少して久しい。
一昨年には数万件を超えた捜索願いも先週は二桁に留まった。警察の奮闘も虚しく事件の足取りも掴めなかった怪奇現象を未成年の少女達が解決していることは既に世間に知れ渡っている。
彼女たちは夜中に人知れず姿を現し、闇の中へ消えていくのだが、その一方、メディアに取り上げられアイドルのように活動する者もいるのだった。
彼女たちは自らを魔法少女と呼んだ。
魔法少女の活躍は連日テレビやネットで大々的に伝えられた。その熱気は日に日に増していくようだ。
ある時は世界を救うヒロインとして、ある時は新興宗教のように、そして、ある時はまるで奴隷を扱うように。
白鬼カンナ(しらきかんな)がメディアに露出したことは無い。カンナは誰かと話している姿さえ見せることはなかった。彼女は腰まである黒髪を夜空に輝かせ、その毛先が風になびくと颯爽と夜の中へ消えていくのだった。