我は永遠に生き続ける
「我は神なり。一切、全てのものを滅ぼし、もう一回世界を作りなおさなければならない。我はソクラテスを超えた。プラトンも超えた。キリストさえ、我の僕なり。我を敬え。我は、今日、ここにいる王女と結婚し、全てを手に入れる。我は永久に生き続ける。死は我には無い。永遠に神として世界を君臨し、永遠の平和をもたらすだろう」
エリは泣きだした。「お兄ちゃん」とエリは叫ぶ。だが、章弘の顔は無表情のまま、もう何も聞いてはいない。僕はエリを抱きしめる。エリはその場に崩れ落ちる。
「さあ、王女よ。我と一体となり、共に歩もうではないか」
とサチの手を取る。サチは、虚ろな目をしたまま、立ち上がる。「サチ」と僕は叫んだ。僕は、サチの元に駆け寄る。章弘は持っていた、黄金の杖で僕を叩く。僕はその場に転げる。
「不躾なり。我は神だ。我に従え」
僕は、また立ち上がる。
「章弘。お前は、本の世界に閉じこもったまま、自殺した」と僕は言った。章弘は僕の顔を見る。その目は虚ろだ。
「何を言っている。我は永遠に生き続ける」
「いや。違う。お前はあらゆる矛盾を解決しようとして、一人、部屋で考え続けていた。世界から逃げて」
章弘の耳には、もう、僕の言葉が届かないのか、黄金の杖を振り、
「ここでは、我は、何時迄も永遠だ。時さえ、もう感じない」
と言う。
「僕が、いや、俺がお前を殺してやる」
と言って、俺は背中に入れていた、包丁で、章弘の左胸を刺した。章弘は一体何が起きたか分からないかのように、一瞬止まる。そして、その瞬間、章弘の左胸から、鮮血が噴き出した。そして、章弘は、その場にスローモーションのように崩れ落ちた。口から血を吐き、
「我は神なり」
と一言言って、目を開けたまま、息絶えた。僕は、章弘の目をゆっくりと閉じ、口にキスをする。血の鉄分の味がする。章弘、お前も人間なんだよ。感情があるんだよ。喜怒哀楽を感じろ。と、僕は言った。章弘の顔は一瞬で、老化し、そして、肉の腐臭がして、骨だけになった。
俺は、サチの顔を見る。サチは無表情のまま、その場に立ち尽くしていた。俺は、サチの口にキスをする。サチの目から涙が零れ落ちる。サチの目に輝きが戻ってくる。
「元也」と言って、サチは僕を抱きしめる。僕は、サチを抱きしめ、涙が溢れてくる。サチ、君とずっと生きていたいと言った。サチは、泣きながら、何回も頷いた。僕達は二人で手を取り、エリの方へ向かう。エリは、
「元也お兄ちゃん、ありがとう」
と言って、僕の方へ駆け寄る。僕はエリを抱きしめる。エリは泣いたまま、「ありがとう」
と何回も繰り返した。僕はサチとエリと両手を繋ぎ、ドアへと向かった。太陽は一瞬で傾き、辺りは暗闇と化した。エリは松明に火を付ける。僕達は、また、すすきを掻き分け、ドアへと辿り着く。僕達、3人はドアの外に出て、戸を閉める。僕は鍵を掛ける。もう、この場所は無くなるだろう。僕達3人は、松明の光を頼りに、階段を上り始める。一歩、一歩、確かめながら。




