表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来の彼方へ  作者: 中井田知久
23/26

章弘に会うこと(アテナイ人の幻想)

夜、リビングでご飯を食べている時、エリがクラブから帰ってきた。エリは僕の顔を見るなり、にやにや笑い出した。「ただいま」といつもより、明るく言った。「お兄ちゃん、いいことあったんでしょう。顔に出てるよ」と言った。僕は口篭り、テレビの内容に話題を移した。エリは笑った。


夢を見た。

僕とエリは螺旋階段を降りている。僕の手にはしっかりと真鍮でできた、鍵を持っている。今度こそ、章弘に会えると思った。エリは少し、厳しい顔をしている。これから、章弘に会うという緊張からか、口数は少ない。僕の方をみて、にこっと笑う。僕は階段を下りながら、不安を感じていた。松明は煌めき、時折、揺らめく。僕の心を表しているようだ。

やがて、木製のドアに辿り着く。僕は試しに、ガチャガチャと押したり、引いたりするが開かない。僕は真鍮の鍵を鍵穴に差し込む。すっと入った鍵を右に回す。カチャリと音を立て、鍵は開く。僕は観音開きのドアを一気に開ける。ぶわっと中の温かい空気が僕の顔に当たる。僕は一瞬、目を閉じる。


目を開けると、そこは、黄金の世界だった。

黄金色のすすきが風に揺られている。赤い太陽がじりじりと肌を刺す。僕はエリを見る。エリは僕の目を見て、頷いた。僕はそれに勇気付けられ、僕達の背丈程もある、すすきを

掛け分けながら、歩いて行く。すすきの花粉が辺りに舞う。太陽は動いていないのか、天から、僕達を赤く染めている。

やがて、一本の20メートルはあろうかと思われる、広葉樹が大きく聳え立っている。葉は緑で、時折、風に揺られては、またその姿を留める。その根本に金色の玉座があった。そこに座っていたのは、もう今では見慣れた、章弘だった。章弘はじっと、こちらを眺めていた。

「やあ。来たね。アテナイ人よ」

と章弘は、僕と同じ声で言った。気付くと、隣にはサチがいた。僕は驚いて、サチに向かって叫ぶ。「サチ」サチは、頭にはヴェールを被り、白い純白のウエディングドレスを着ていた。サチは虚ろな目で、僕を見る。僕だと、気付いていないかのように無表情だ。

「アテナイ人よ。そこに座りたまえ」と章弘は言った。僕と、エリは顔を見合わせる。えりも、その章弘の異常性に気付いている。

「お前達、頭が高い。我を敬え。我は神なり。我は王なり。そして、全世界を統べる。我の言うことは、全て真実なり」

と言った。章弘の顔は無表情で、目は虚ろで、僕達を見ていない。

「アテナイ人よ。何故、君達は、世界を憂いようとはしない。戦争はあちらこちらでおきている。テロリストは今も、人を殺め続けている。世界はあらゆるイデオロギーで満たされ、隣人が殺されようが、人は何も気づかないまま、明るく遊園地に行っている。何故、何も感じない。世界は悪で満ちている。お金の為なら、なにしてもいいのか? 金、金、金。人は金の為に、人を殺す。人を傷付ける。アテナイ人よ。そこに何も感じないのか?」

章弘は捲し立てた。僕は、それを聞いても、心は動かされなかった。狂っている。章弘は狂っているのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ