何事にも意味はあるのです
サチと喫茶店を出た後、暫く、無言で二人で歩いた。道沿いの露店にはたい焼きが売ってあった。たい焼きの匂いがして、また消えていった。雪は断続的に降って、また積もる予感がした。サチは俯いたまま、何を考えているのだろう? 僕はこの先どうすればいいのか、分からなかった。
その晩、夢を見た。僕は真っ白な部屋にいる。見たことのある風景。木製の机と椅子があり、目の前には青い目をした名前のない彼がいる。
「気が付かれましたか?」
と彼は言う。
「貴方は一体、誰なんですか?」
「そのことは前にも申し上げましたが……」
「それはわかっています。僕は今、苦しんでいる」
青い目がしっとりとしている。彼は瞬ぎもせず、僕の目を捉えている。
「そう。それは分かっていました」
とその言葉だけを発した。怒りが僕の腹の中から、噴き出した。
「どういう事ですか?」
僕は声を荒らげる。彼は動揺もせず、言葉を続ける。
「それは言えません。貴方が探すのです」
「何を?」
その言葉に返答はない。もう言っただろうということだろうか? 僕は苛つく。彼のその態度にも、僕のこれからに対しても。
「何事にも意味があるのです。無駄と思えることが、大事な事であったり、大事な事と思っていることが、無意味なことであったり」
彼は淡々と言う。
「大事なことは、貴方はよく考え、行動することです。考えばかりが先に進んではいけません」
「僕には、どういう事か分かりません」
彼は、そこでにこりと笑う。
「また会いましょう」
と彼が言った途端、頭が眩むような、睡魔が襲ってきた。僕はしっかりと目を開けていたが、朦朧としてくる。彼の姿が朧げになった瞬間、僕は眠りに落ちた。




