超短期バイト
僕は書店で、アルバイト雑誌をみていた。世の中には、様々な職種があるんだと思った。元也の時は、居酒屋の店員をしていたが、何か、今の自分にはしっくりこない気がしている。僕は、超短期アルバイトをやってみようかと思い、雑誌を買った。
自分の部屋から、派遣会社の連絡先に電話する。電話が繋がると、低い男の声がする。
「短期バイトをしたいのですが」と告げると、素っ気なく、「では、今週の木曜日の午後2時に会社に来てください」と言った。少し、胡散臭かったが、行ってみようと思った。
僕は章弘の事を考えていた。章弘は、どんな生活をしていたのだろう? 本に囲まれ、何を考えていたのだろう? 僕は元也であり、章弘だった。暗い部屋の中でぼんやりと考える。エリは「心の殻に閉じこもって」と言った。エリの言葉が頭の中を駆け巡っていた。
僕はふと新谷の家を思い出す。元也の母はどうなったのだろう? 弟は? と思い、今まで連絡していなかったことを後悔した。
僕は元也の家に電話をする。呼び出し音とともに、また、ツーツーと電話は切れる。僕は胸騒ぎを覚え、また訪ねてみようと思った。
木曜日の午後2時に派遣会社に僕はいた。8畳くらいの部屋で、パソコンが2台置いてある。簡易の机と椅子に座り、僕は書類を書いていた。契約書に僕は判を押す。隣には、カップルで来たと思われる、大学生らしき2人組と、中年で疲れ果たしたと思われる男性が同じことをしていた。カップルが時折、会話をしている。僕は、責任者と思われる男性から、説明を受け、問題はありませんと答えた。そして、会社を後にした。仕事は後から、依頼するとの事だった。




