謎人間の異文化コミュニケーション 2
「こちらの言葉が聞こえますか?」
(相手は武装してる……慎重にいかないとな)
「あぁ、聞こえる。ただお前が何者か分からないためそれ以上近付かないでもらいたい」
「分かりました」
(一番装備が豪華な人が代表して話してくれる感じか)
念のため半歩下がる
「話を聞いてもらえますか?」
「その前にお前が何者なのかを言え。でなければ此方は何も言わん」
(まぁそうだな)
「ヒュ……俺の名前はヒュウマです。記憶喪失で気付けばここに居ました」
(嘘は言ってない……よな?)
「そうか、お前は戦えるのか」
(……なんで戦えると思ったんだ?)
「いいえ、僕は記憶が無くなる前は知りませんが戦ったことは一度もないです」
「ほう、なら何故そんなに服が汚れている?数日はここに居ただろう。この辺りには猪くらいしか食べれる物は無いはずだ。猪をどうやって狩った」
疑いの目を向けられる
(やっっべぇぇぇ!!どうしよ、そんなのファロが…ってこいつらそれを討伐するために来てるんじゃん!)
「え、ええと……あそこに大きな木があるじゃないですか、あれがツリーハウスみたいになってて、その中に食料が入ってたんですよ!」
「その食料とは?」
「ヤワリンゴです!」
「は!?ヤワリンゴ!?」
「え?どうしました?」
(なんだ?急に驚いて、ヤワリンゴは言っちゃダメだったか?)
「おい!ヒュウマと言ったか、今すぐヤワリンゴを持ってこい!」
大声で命じられる
(こっわ……あ、やば…ヤワリンゴをツリーハウスに持ってくの忘れてたあの時一個木から取ってファロにあげて…その後なんもしてない…なんとかしてファロに使えて持ってきて貰おうかな)
「はい。では取ってくるのでここで待っててもらえますか?」
「分かった」
(やけに聞き覚えがいいな…さっきみたいになんか言ってくるかと思ってたのに)
「では」
・
・
・
「ファロ」
あまり大きな声を出さずに隠れているファロを呼ぶ
「マスター!よかった」
安堵の声を漏らしながら出てくる
「マスター、心配したよ」
「あーすまんファロ、あの人間達と話してたらヤワリンゴを持ってこいって言われちゃって……時間稼ぐからファロはあの木から取ってきてくれない?」
「分かった。でも無茶はしないでね、すぐ戻って見つからないように渡すから」
「おう」
「止まってもらおうか」
ビタッ
一瞬時が止まったような、一瞬心臓が跳ねたような気がした
後ろにさっき話していた人間が居る
尾行してきたのだろう、普通は鎧が擦れる音や草を踏む音で気付くはずだがヒュウマはかなりの緊張状態にあった。気付かなくても無理はない
すぐさまファロを隠す
「な…なんでしょうか?」
汗の流れと心臓の音が止まらない
「お前、さっきまでヌシと話していただろうやはり怪しいと思っていた」
「ま、待って下さい!見間違いかも……」
人間がなにか手首を振った。次の瞬間
ヒュオッ
「マスター危ない!」
矢が飛んできていた。しかしファロの暴風魔法がヒュウマを守るように展開したため助かると思われたが
「無駄だ、その矢は貴様の魔法に対抗するため風耐性が付いている」
「ぐぁっ…」
ヒュウマの脇腹に刺さる。そしてファロが一瞬同様した隙に
ヒュオッ
「あっ……ぐぅあぁぁ!!」
別方向から腹にも刺さった。さっきよりも深い
「よし、残るは貴様だけだ。アタナリア草原のヌシよ」