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はじめてのボス戦

「何が出ると思う?」

「奇妙に思っていたことがありまして」

「聞かせてくれ」


 ピストン駆動する巨大なポンプが立ち並ぶ大広間。

 歩みを進めながら、俺はシーラの話を聞いた。


「清浄な地下水道に比べて、現れるモンスターに不潔さを象徴するような特性が付いてますわ」

「そうだな」

「つじつまが合わないと思いませんこと?」

「……言われてみれば確かに」


 モンスター図鑑にあったように、地下水道のモンスターはほとんどが疫病やら猛毒やらを有している。

 あのモンスター群が不潔な下水道に現れるのであれば自然だが、実際の地下水道は清涼感の溢れる美しい場所だった。

 エリアとモンスターの関係がちぐはぐなのだ。シーラの言う通り、つじつまが合わない。

 言われるまで気づかなかった。


「なので、ここのボスにはその謎を解くヒントを期待しますわ」


 この『Dead Man's Online』の世界を解き明かそうとしているとてもシーラらしい立場からのコメントで、彼女は戦闘前の短い雑談を締めくくった。

 さぁ、答え合わせの時間だ。

 

「上だ!」


 俺たちの頭上。大口を開けた巨大なパイプから、滝のように水が放流される。

 どばどばと音を立てて放流された水は、やがて集まり巨大な塊へと変じた。

 

「濁り水!」

「大規模個体といったところですわね」


 デカい水。言ってしまえばそれだけ。

 内部の苔のような濁りが一致するので濁り水の同系統、ないしただの大容量版なんだろうが、これどうやって戦おう。

 そんなことを相談する暇もなく、分裂して小さな塊となった濁り水が攻勢に出る。

 

「とりあえず始末しますわ」


 シーラの眼光によって瞬殺。ダンジョン内で幾度となく行った流れだ。

 すると、今度は更に多い数で水が分裂。

 

「片方は俺がやる」


 シーラも同時に二体は対処できない。俺も濁り水との戦闘に参加する。

 まさにエトナの刃薬の出番だ。

 適当に刃薬を選び、新品の失敗作の刀身に垂らして塗布。種類は選ばん、どうせ全部なにが起きるか分からんからな。

 さて、何が起こるかな。

 

「光った!」


 無作為に選び垂らした刃薬は、果たして剣に青い稲光をもたらした。

 すぐさま近くに寄ってきていた濁り水を切り払えば、内部にテスラコイルのような電光が飛散し、濁り水は消滅した。

 有効だ、当たり効果を引いたぞ。

 

「また新手ですわ!」


 再び大水が体をちぎり複数の濁り水を呼び出す。

 数は4体。すぐさま斬りかかって数を減らしにかかる。

 土偶のシーラも念力とレーザーで濁り水を焼却、すぐさま打倒。

 また大水が体をちぎる。大元の塊は僅かにサイズを縮めていた。

 

「ボスが縮んでるぞ、耐久連戦ってことか?」

「数が増えていってますわ、手間取ったら押し切られますわよ!」


 濁り水の数は8。扇状に展開し前進してくる。

 シーラの射線を塞がないように、右端の水から斬りかかり数を減らす。

 今の俺の剣の状態なら濁り水を一撃で撃破できる。草でも刈るよう薙ぎ払いながら進んで手早く始末していく。

 

「どうやらわたくしの方が狙われているみたいですわー!」


 俺の最寄りの個体以外はシーラ目掛けて直進していた。浮遊するシーラは機動力に難がある。

 念力で固定し焼き払うシーラの戦い方は、安全な一方でやや時間が掛かる。

 安全で確実性のある戦法として頼ってきたが、敵の数が多い今は撃破に時間が掛かるため裏目に出ていた。

 土偶のもとへ鞭のようにしなり飛び掛かる濁り水。

 俺はそいつに向かって構え、【絶】で強引に近づいて蹴りで水を散らした。

 物理攻撃はダメージにならないが、向こうの攻撃を中断させられる。一人で濁り水と犬のように戯れていて発見した性質だ。 

 

「シーラを守るように戦ったほうが良さそうだな」

「お願いしますわ」 


 いやらしいことに、後衛を優先して狙う習性があるらしい。

 分裂、さらに数が多い。16。

 前衛の守りを物量で突破して陣形を瓦解させてやるという意思を感じる。

 後衛が落とされれば、前衛はぐるりと囲まれて数の暴力に飲み込まれる。

 前衛は後衛を守り、後衛は前衛の背中を守る。

 基本に忠実でなければ、このボスは倒せない。

 

 相手の陣形はハの字。開いた口をこちらに向けている。

 さりげにフォーメーションを組んできているのもいやらしい。

 対処をしくじれば、後衛もろとも囲まれる。

 

「シーラ、横に回り込もう!」

「熱線で牽制しますわ、押してくださいまし!」

「ま、任された!」


 シーラが薙ぎ払うレーザーで濁り水の前進をせき止める。

 俺は押すの? という動揺を飲み下し、その間に浮遊する土偶をオブジェクトのように手で押して動かす。

 シーラは素早く動けないが、俺が物理的に押してやれば話は別のようだ。

 浮遊しているので持ち上げる必要もなく、すいすい動かしてやることができた。

 側面に回り込んだあとは、シーラを背後に控えさせながら押し寄せる濁り水を撃破していく。

 広く展開されていれば囲まれていただろうが、俺たちはサイドを突いた。

 さっきと同じく8体の相手を二回すればいい。

 だが、ここで刃薬の効果が切れてしまった。思ったより効果が短い。

 

 すぐに別の刃薬を剣に塗布する。

 ぽこっ。

 剣の切っ先にコスモスの花が咲いた。

 

「遊んでいる場合じゃなくってよ!?」

「すまん!!!」


 エトナ。効果は保証できないって言ってたけど、これは困るって。

序盤のボス、雑魚敵の親玉がち

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― 新着の感想 ―
[良い点] これはヘドロと化した深みの教主たち。 周回すると処理が間に合わなくなるやーつ。
[一言] > 剣の切っ先にコスモスの花が咲いた。 > 「遊んでいる場合じゃなくってよ!?」 た、対人戦なら使い道ある(かもしれない)から……(震え声)
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