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リセット:The collapse of the world  作者: 不破いのり
19/52

命を吸う花Ⅵ

香織が手に入れたデータを対策室に残っている五十嵐以外のメンバー全員が目を通していた。

福原は淡々と資料に目を通す。

香織は次々と手に入れたデータと別の研究機関のデータの照合。

八谷は自分に必要なデータの抽出とまとめ。

BOSSは八谷の指示に従い資料のファイリングをしていた。

朝10時から始めた初の零課の捜査、時刻は12時になるところ白い花弁、吸血花を袋にパンパンに詰めた五十嵐が戻ってきた。

「ただいま帰りました!」

全員がしっかりと聞こえる大きな声で帰還を報告した。

「おかえりなさい。」

「おーかなり集めてきたな。」

BOSSは帰ってきた五十嵐の元へと向かい手に持っていたパンパンの袋を見て言った。

「はい!周辺を走り回り回収してきました!一応偏りの無い様にと既に赤くなっているものや半分ほど赤くなっているものなど色々回収してきました。」

五十嵐も刑事なのだ、ただの脳筋ではない。

五十嵐なりに起点を利かせてさまざまなパターンが必要と考えた為赤くなった吸血花も回収してきた。

「ありがとうございます。」

自分のデスクに座りパソコンを見ていた福原が五十嵐の方は見ずに言葉だけで礼をする。

五十嵐はパンパンの袋を持ち八谷の元へと歩いて行った。

「これだけ集めてきましたが足りますか?」

五十嵐は袋を八谷へ差し出しながら言った。

「そうですね、これだけ有れば様々な事ができるでしょう。」

八谷は差し出された袋を両手で受け取りそのまま無菌室の隣に置かれていたテーブルへ置いた。

「おー五十嵐さん帰ってたんですね!」

香織が遅れて反応した。

作業に集中していて五十嵐の帰還に気付かなかった。

「あぁただいま!」

五十嵐はその場で香織の方へと体を向かせ返事をした。

声が対策室中に響き渡り静かになったあと別の音が聞こえた。

ぐぎゅーっと五十嵐の腹がとてつもない音で鳴った。

大きな堅いに似合う大きな音だった。

香織とBOSSが大きな声で笑う。

「五十嵐さんめっちゃウケる〜普通そんな大きい音出ますか?笑」

「五十嵐お前どんだけ食いしん坊なんだよ!」

2人して腹に手を当て笑った。

香織は笑い過ぎて目から涙が少し出ていた。

八谷も表情にはあまり出なかったがクスクスと笑ってしまった。

ただ福原だけは微動だにせず資料を見続けた。

その姿を見たBOSSは少し心配になってしまった。

協調性が欠けている、皆が笑っているのに笑えない。

笑えないのならば笑わなくてもいい、ただこちらを見ない、まるで興味がない様なメンバーを捜査する為の道具としてしか見ていないそう感じてしまった。

そして脳裏に永井の姿が浮かぶ永井はなかなか笑えない人だったがただ皆んなの事は見ていた。

今思えばこの笑いがこの対策室に来て初めて笑った瞬間だった。

今日まで捜査の説明や重い話しかしていなかったから当然と言えば当然なのだがそれでも初めて笑えた。

心から笑えた。

嬉しかった、福原の事が心の中に引っかかるが今後もこんなふうに笑える日を大切にしたいとそう思った。

「さて時間も時間だ、五十嵐の腹の虫も限界の様だからご飯でも食べようか。」

BOSSは皆を見ながらご飯を提案する。

「すみません。」

五十嵐は少し恥ずかしがりながら謝る。

「わたしももう限界!」

「お腹すいた!」

香織はデスクを両手で叩きながら立ち上がった、朝からパソコンをずっとハイスピードで作業していて大量のエネルギーを消費していた。

「確かに少し空いてきましたね、ただ私たち全員手ぶらですがどうするんですか?」

八谷はBOSSへ質問をした。

全員何も持ってきてないのだ。

偶然なのか全員昼は食べないのか、そもそも捜査で昼ご飯を食べる余裕なんてあるのか八谷はわからなかったから何も持ってこなかった。

「では私は外で適当に食べてきますね。」

福原は席を立ち対策室を後にしようとしたところでBOSSは引き止めた。

「待て福原、こうして全員揃ってご飯を食べる事は今後めったにないかもしれない、出前でも取らないか?」

BOSSは唯一零課の捜査状況をわかっている。

零課では誰かが捜査に出ていて居ないのが当たり前なのだ。

それに初めて今のメンバーで捜査を始めた日どうせなら皆んなでご飯を囲みたいと思った。

そしてより団結を強固な物にするのには同じご飯を皆で食べることそれが手っ取り早い。

「わかりました。ではそのようにします。」

福原はBOSSの心情を察してすぐに立ち止まり自分の席へと座った。

「ありがとう、それじゃ何にしようか警察らしくカツ丼でもいいし蕎麦でもいいしなんなら寿司でもいいぞ!今日は俺の奢りだ!」

BOSSは福原が止まってくれた事に少しだけ嬉しく思って思わず言ってしまった。

「それなら私は寿司がいいです!」

五十嵐が大きな声でBOSSへ向かい言った。

「私は蕎麦アレルギーなので蕎麦以外なら。」

八谷は資料を手に持ちながらBOSSへ向かい言った。

「五十嵐さんごめんなさいわたし生物ダメなんです!」

香織は五十嵐の方へ向かい両手を合わせて手を差し出した。

「私は油濃いのがダメなのでカツ丼はパスでお願いします。」

福原は自分の席に座ったままBOSSへ向かい言った。

「こりゃ困ったな全部ダメか。」

BOSSは腕を組み首を傾げた。

「それならピザはどうでしょうか⁉︎」

五十嵐は自分の好物を大声で提案した。

「ピザか、それなら皆食べれるか?」

「ピザ!久々だしアリ!」

「そうですね、昼にしてはアレですが大丈夫ですよ。」

「少し重たいですが問題ありません。」

お昼ご飯がまとまった。

まさかここまでご飯が合わないとは自分が提案したものが全部拒否されたのはなかなか堪えるものがあった。

結局わかったのは五十嵐はなんでも食べれるのだろうと言う事。

そして対策室にある正面の大きなモニターにピザ屋のサイトが表示される。

「皆さんどれにしますかー?」

香織が操作して写していたのだ。

まさか捜査を開始して初めてモニターを使ったのがピザの注文とはBOSSは唖然として不思議な気分になった。

全員がその場で注文を香織へと伝える。

注文を終え各々がまた捜査へと戻り作業を続けた。

変わったのは五十嵐が訳もわからないのに香織の後ろで作業を見ているという事だけだった。

注文から1時間後頭のてっぺんが禿げた男がピザを持ち怒りながらやってきた。

「おい!五十嵐!ピザ届けるなら事前に言っておけ!」

禿げた男が来て早々激怒した。

総務部施設課の田中だ。

「あっすまないそれ俺だ。」

BOSSが田中の元へと歩きピザを受け取った。

「と、あっ室長か、事前に言ってくれないと困るよ施設課のみんなから変な目で見られるじゃないか。」

田中は一瞬名前を呼びかけたが堪えた。

「ごめんごめん、集中してて忘れてた笑」

「次からはちゃんと頼むよ。」

田中は渡し終えてすぐに帰った。

「BOSS、田中さんと仲いいんですか?」

八谷はBOSSと田中の会話で感じた事を質問した。

「あれ?言ってなかったっけ?俺あいつと同期なんだよ。」

「聞いてないですね、と言うことは警視総監とも同期なんですか?」

「そう言う事になるな早川とも同期だぞ俺は。」

BOSSはピザを持ち円卓テーブルに運びながら八谷の質問へ回答した。

そして円卓テーブルへピザを置いた瞬間違和感を感じた。

「あれ?」

BOSSは気が抜けた声を出した。

目の前にあったのは透明な袋に入ったピザの箱8個だった。

それぞれが円卓テーブルへと向かいピザの中身を確認して自分の手にとって行った。

福原と香織は2人で1箱、八谷は1箱、そして1つがテーブルの上に置かれ残りの5箱は五十嵐が持っていた。

「ん?五十嵐もしかしてそれ全部食べるのか?」

BOSSは五十嵐が両手で抱え込む様に持っていたピザを指差しおどおどしながら聞いた。

その時心の中は胃が凭れる、俺の財布は?、どうやったらそんなに食べれるのか色んな気持ちがぐちゃぐちゃに混ざっていた。

「ええ!一応皆と少しずつシェアする形で基本全て私が食べますよ!」

五十嵐は清々しいほど元気があった。

「そ、そうか。」

BOSSは何にも言えなかった、奢りと言った以上男としてケチはつけれない。

ただひたすらに五十嵐にこの野郎と心の中で思った。

零課メンバーで初めて同じ食事を囲みながらご飯を食べた。

五十嵐はひたすらに口にピザを詰め込み、福原はちまちまと淡々と食べ、香織は福原に話しかけながら食べ、八谷は資料を片手に食べた。

先に食べ終わった八谷は福原に質問をした。

「福原さん、喫煙所ってどこにありますか?」

ピザを食べ終えて情報量が多そうな福原へ質問をした。

「警視庁には喫煙所ないですよ?」

案の定の答えが返ってきた。

「ですよね、わかりましたでは近くのコンビニまで行ってきます。」

八谷は一服を求め対策室を後にした。

「ところでなぜ田中さんから俺の名前が出てきたんだ?」

五十嵐は皆を見ながら特定の人に質問をするわけでもなく全員に質問をした。

「あそれわたしです。」

香織が反応した。

「わたしの名前だと田中さんがもしかしたら忘れてるかもしれないと思ったので五十嵐さんの名前使ったんですよ!」

「本当はBOSSの名前を連名で使うのがいいんですけど"田中BOSS"なんてやったらそれこそ笑い物ですもん笑」

香織なりにわかりやすい様に気を遣わせた。

それで五十嵐が怒鳴られたのは想像外だったが悪気は無かったので流して居た。

「なるほど、そう言うことか!」

五十嵐は納得した。

全員が食べ終わった所で福原が席を立ち口を開く。

「八谷さんが戻り、15時になったら香織さんが手に入れたデータの重要な所を纏めたミーティングをします。」

「今が13時30分なのでそれまで作業の続きをお願いします。」

福原は八谷以外の全員に向け指示を出した。

「福原俺はどうすればいい?」

五十嵐が福原へ質問をした。

「五十嵐さんは..吸血花の回収をまたおねがいします。」

「わかった!では早速行ってくる!」

福原は困った、吸血花は想像以上に五十嵐が回収してきたのでもう要らないのだが八谷にはBOSSが手伝って、香織の作業は手伝えるものではない、ましてや自分の手伝いには五月蝿過ぎる。

五十嵐の専門分野は体力勝負の現場だ、何れは必ず役目が来る、五十嵐にしか出来ない事が、ただ今はその時ではない。

対策室にいても邪魔だったので外に出した。

五十嵐はまた袋を持ち走って出て行った。

「ものすごいスピードで出ていきましたが大丈夫ですか?」

八谷が戻ってきた。

「大丈夫です。15時からミーティングを初めるのでそれまでは自分の作業を続けてください。」

福原が戻ってきた八谷の方を向き答えた。

「わかりましたそれでは作業に戻りますね。」

八谷はスタスタと自分の席へと戻り作業に戻る。

BOSSと香織もピザに手を合わせた後自分の持ち場へと戻った。

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