命を吸う花Ⅳ
香織の掛け声と共にラビがプログラムを実行する。
「ラビちゃん!まずは吸血花について研究しているアメリカの研究機関のリストを出して!」
香織がラビに向かい指示を出す。
「おっけー!」
ラビの声がスピーカーから聞こえて来る。
聞こえてからすぐにリストが右上のモニターに表示される。
リストには50個以上の研究機関の名前があった。
「こんなにあるんだ、そうしたら所属人数の多い順でソートかけて多い機関に入っていくね!」
「おっけー!」
ラビの声と共に並び順が変わった。
「1番人数が多いのはUPRってところだね!」
「じゃあ早速にんじん作戦いくよ!」
香織はハッキングのターゲットを決めエンターキーを押した。
「にんじん作戦ってなんですか?」
八谷は香織へ質問をした。
「えーとね...」
香織は考えた、ハッキングの専門用語を出すと多分わからない為頭に浮かんできた単語を必死に噛み砕いた。
「にんじん作戦はね、ラビちゃんがシステムに入る為の偵察機みたいなものを相手のサーバーに巡らせる作戦だよ!」
噛み砕いた、意味合いは少し違って来るがなんとなく伝わるだろうと思った。
「Reconnaissanceですね。」
福原が答えた。
「あかりちゃんさすがだね!参謀って感じ!」
「とりあえずあと3分はにんじん作戦でラビちゃんに処理を任せて待ちでーす。」
香織は気持ちが高揚していた。
思わず実況をしてしまう。
初めて見られる自分のハッキング、今までは一人暗い部屋でヒソヒソとやっていた事を大胆にやれる場所自分を認めてくれる人がいるという事、昂った。
「そうしたら次はScannningですよね?」
福原は香織がわかりやすいように専門用語を使い話した。
八谷はなんとなくわかったがBOSSは完全にわからなくなった。
そして香織のモニターでは恐ろしいスピードで数列や英単語が流れていた。
「それはねラビちゃんが今同時に処理してくれてるよ!」
「にんじんを相手のサーバーに大量に投げて栄養って言う情報をたくさんもらってその情報って言うにんじんをラビちゃんが食べてデータを集めるって感じかな?」
香織は八谷とBOSSもわかるように説明した。
「なるほど」
と八谷が理解した。
BOSSはうんうんと首を縦に振った。
半分ぐらいは理解できたようだ残りの半分はわからなかった意地を張った。
にんじん作戦が始まってから約3分後データ収集が終わった。
「香織ちゃん!サーバー内のデータ一部に入れなかったよ!アクセス権を上げる必要があるね!」
スピーカーからラビの音声が聞こえる。
「あ〜だよねそりゃアメリカで1番の研究機関だもんね。」
「じゃあ上位のアクセス権奪いますか!」
香織は指を鳴らそうと手を折るが残念なことに鳴らなかった。
普段やらないからだ。
「ラビちゃん!ジャンピング作戦行くよ!」
舐めていた飴を噛み砕くのと共にラビの音声がスピーカーから流れてる。
「オッケー!」
画面に映し出されているラビ目が光る。
福原、八谷、BOSSは察した、ここからは喋りかけてはいけないと。
香織の集中力が最高潮になる。
ラビの音声の後香織の指がありえないスピードで動いた、正面のキーボードと左側に置いてあるキーボードを器用に使いタイピングを始めた。
真ん中2つのモニターに香織が打ち込んだプログラムが映し出される。
左側2つのモニターに相手サーバーのプログラムが映し出される。
香織は左側のモニターを見ながらタイピングを続ける。
「ラビちゃん!海外のサーバー出来るだけ作成して同時送信できるようにプログラムのコピーと同型プログラムの作成よろしく!」
「おっけー!右上モニターに作業状況を出すね!」
香織はラビに指示を出しながら相手サーバーに適したプログラムを作成する。
世界各国のサーバーから同時攻撃をする。
「よしできた!」
高速でプログラム作成を始めてから5分ほどで完成した。
後ろの3人はその間見惚れてしまった。
福原でさえ目が追いつかなかった。
頭がどれほど良くてもやっていることに理解ができなかった。
「こっちもできたよ!」
ラビの作業も終わったようだ。
「じゃあスタート!」
勢いよく香織はエンターキーを押した。
「ラビちゃん!奪取したアクセス権をモニターに出しつつ痕跡の削除お願い!」
「おっけー」
香織がラビと話している間に1つの顔写真付きのプロフィールが表示される。
「よしまず一個!」
そして次々と奪取したアクセス権がモニターに表示された。
「ラビちゃん!権限が大きい順にソートして弱目のアクセス権は削除していって!」
「おっけー」
アクセス権の奪取が30件を超えたあたりから香織の手が止まった。
後は全てラビがやってくれるからだ。
後ろの3人はモニターに目が釘付けになっていた。
「よしでた!」
「ラビちゃん!もう大丈夫!痕跡の削除をお願い!」
香織は目標のアクセス権を確保したのだ。
「おっけー」
「あかりちゃん!最上位のアクセス権手に入れたから後はサーバー内の情報抜き放題だよ!」
香織は後ろを向き福原を見て言った。
「もう終わったのですか?」
福原は少しの疑いが心をよぎった。
余りにも早すぎる。
実際に福原が見たことのあるハッキングとやり方、手順が違いすぎた。
タイピングの速度もそうだが情報取得までの時間異次元だった。
「うん!もう大丈夫!一回入り込めたら後は簡単だよ!」
「そうなのですか?」
「そうそう!もう相手サーバーにバックドアも仕込んだし、あらかじめハッキングに必要なプログラムは何万パターンと作ってあるしラビちゃんも手伝ってくれるしこのパソコンの処理能力も相当高いからね!」
香織のハッキングスタイルは特殊なのだ。
普通のハッキングであれば相手のサーバーに入る為にその場で相手のファイアーフォールやセキュリティを突破していく、そしてそれはかなりの時間が掛かるのだが香織の場合はサブのキーボードであらかじめセットされているプログラムを起こしメインのキーボードで相手のセキュリティに適した形へ変更をする。
そしてラビには手作業だと時間が掛かるcopy&pasteや数を増やす作業、痕跡の削除などの作業を任せている。
そして大量のデータを相手のサーバーに一気に送りつける。
それは同時に100人以上のハッカーから攻撃されているような事、それを一人でやってのける。
「いや恐ろしいですね」
八谷は驚きが隠せなかった。
BOSSはますますわからなくなり考える事をやめた頭に手を当て後ろの空いている席にもたれかかった。
「なるほど何となく理解できました、では早速データを見せてください。」
「はーい!全部の画面にそれぞれデータ出していくね!」
「お願いします。」
そこにはさまざまな研究結果があった。