警視庁公安部公安零課Ⅱ
香織がトイレから戻ってきた。
戻したハンバーガーだった物は跡形もなく無くなっていた。
「誰が片付けてくれたの?ありがと」
香織はまだ元気が戻っていなかった。
胃がムカムカする、喉が痛い。
「香織も戻ってきた事だしもう少しだけ話をしようか、これで最後だから。」
BOSSは皆を見て言った。
そして全員にキャッシュカードと対策室に入る為のカードキーを配る。
「今渡したカードは現金500万が入ったキャッシュカードとこの対策室に入る為のカードキーだ、正面のロックは1週間後からナンバーも追加する、最初は荷造りがあるからね下手に怪しまれても困る。」
「500万だが各々の経費として必要な物を買ってきてくれ、俺には香織や八谷、福原の必要な物がわからないからな。」
「なんなら着服してくれても構わない。」
五十嵐の名前は出さなかった。
どうせ必要ないから、必要な物もなければ必要な経費でもないからだ。
それは五十嵐本人にもわかっていたから何も言わなかった。
「BOSS〜私別に500万なんて要らないよ?」
香織は受け取ったカードをBOSSに見せながら言った。
「今までハッキングして儲けたお金まだまだあるもん。」
香織は徐々に元気を取り戻していた。
「だろうな笑」
「だから着服してくれって言ったんだ。」
「これは我々警察組織からの前金だと思ってくれ、もう普通の一般人って訳ではないんだから。」
BOSSはおかしな事を笑いながら平然と言った。
「ふーん」
香織は理解した。
ここの仕事は簡単なことではない。
その為の前金だ。
命を賭けるのに500万は安すぎると思うが断ったら牢屋だしと楽観的に至極納得した。
「それでは今日はこれで終わるね。」
「次来てもらうのは2日後その時までに各々準備を整えて3日後には早速捜査ができるようにする、まずはあの"花"の調査だあれはルーファス預言の終焉の可能性がある。」
「郵送で荷物を送るときはさっき早川が言った通りにね。」
BOSSは総監の事を気付かぬうちに呼び捨てにしていた。
「それでは解散!」
BOSSの声と共に映し出されていたモニターが消える。
そして八谷が颯爽と席を立った。
「それでは2日後よろしくお願いします。」
対策室を出る前に声を皆にかけ退室した。
その次に香織。
「じゃあ2日後〜よろしくね〜」
香織は完全に元気を取り戻していた。
ただ内心は期待と不安がぐちゃぐちゃに混ざりあった心境だった。
まるで水面に浮かべた2色の絵の具を少しだけ混ぜた様な不安定な色の様だった。
そして心の中で決めた扉を出たら覚悟を決めると、 覚悟は決まった。
香織は対策室を後にした。
「それでは私も失礼します!」
五十嵐が声を上げ対策室を出た。
対策室には3人となった。
「冨田さん、いやBOSS永井さんのこと五十嵐さんに言わなくて良かったんですか?」
福原は問いかけた。
「そうだねそのうち話すよ。」
「言ったところであいつにはもうどっちでもいいのかもしれないがね。」
「さて我々も帰りますか、戸締りだけよろしくね。」
BOSSと早川は席を立ち同時に対策室を出た。
福原は白く広い空間に一人になった。
普段は顔色を変えない福原だが、思わずクスッと笑ってしまった。
まさか昔自分が想像した預言のこと、それが本当にあったんだ。
そしてその預言を自分が捜査するとは思いもよらなかった。
等々2日後からは捜査が始まる。
高揚感がとてもある。
まるで預言がある事を予言した私こそが預言者なのではないかそんな気がした。