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40 魔王の誤算

魔王軍の本陣は騒然となった。あっという間に魔王軍が半数にまで減らされたからだ。アストレルを筆頭とした参謀のやつらが気が狂ったように議論している。


「いったい何が起きている!人間どもの反抗戦か?」

「人間などどこにもいない!罠だ。罠がそこら中に!」

「落ち着け!罠で魔王軍が半数にまで削られるわけはなかろう!」

「しかし戦闘もしていないのだぞ?忽然とみな消え、いや溶かされてしまったと聞く」

「第三軍を迂回させよう。そうすりゃ敵の後方にうまく回り込めるかもしれん」


あーあ、こいつらほんとポンコツ。誰もその眼で見ようとしないで、状況だけで戦況を推測し、作戦を練っている。天才ならいざ知らず、凡庸なお前らが現場も見ずに作戦を立てる自体間違っているんだわ。それになに?かもしれん、って。ありえない。まったくどいつも死ねばいいのに。


「作戦は決まった?」


アストレルが直立し、こっちを向いた。いやあ、すごい冷や汗だこと。


「いささか難儀な敵に遭遇しているようです」

「いささかな敵に半数持ってかれてんの?マジうける」

「い、いや、敵の正体がつかめなくては…」

「作戦の立てようもない?」

「は、はい」

「じゃああたしが直接指揮を執るわ。いいわね?」

「はあ…」

「じゃ全軍、停止。いい?一歩もそこを動かないで」


これはあたしが間違っていた。トラップを仕掛けてくることは予想できた。だから全軍で向かわせた。たかだか五百人程度が仕掛けられる罠などたかが知れていると思った。ところが捕獲魔法陣は無尽蔵に埋設され、それを感知して避けて進めば大規模魔導で溶かされる。まるで誘導されている。あり得ない。たかが五百人で…たかが…。


「あっ!」

「いかがされました、魔王さま!」


ファリエンドが不安そうにあたしの顔を覗き込んでいる。


「数に、騙された」

「数に?ですか?」


そう、数に、だ。たかが五百と思っていた。ところが敵はその五百を千にも、一万にも変えたのだ。


「翼竜隊を。魔王軍の前面に展開させよ。そして進路の罠を焼き払え。空爆だ」

「かしこまりました」


うっかりしていた。敵に誰がいるか、忘れていた。あたしとしたことが。きっとあの魔導師だ。あいつがきっとかかわっている。完膚なきまでに叩きのめしたのに、まだそんな力が残っていたのか。あそこで深追いは承知で殺しておけばよかった。ああ、まだまだだな、あたしは。こんなんじゃお兄ちゃんに笑われてしまう。



翼竜の群れが森を焼き始めた。すさまじい炎と爆煙が巻き起こり。天を焦がしていく。終夜…朝までこれを続ける。それから大型翼竜による空挺だ。三千規模の空からの兵をどう防ぐ?町に直接降下させ、そこにいるやつらすべて皆殺しにしてやる。


「第三軍のエドメス将軍に伝えろ。町の横を流れる川の下流で待機しろ、と。町から逃げ出すやつらをひとり残らず捕獲しろとな。抵抗すれば殺しても構わん」


ファミーリアはまだあの町に送ってある。そこであいつが大声で言った。船で逃げる、と。逃がさん。絶対捕まえる。ようやく会えるかもしれないんだ。でも死んじゃったら?それはお兄ちゃんじゃないということだ。また他を探せばいい。それまでに人類は絶滅しているかも知れないけれど…。



魔王軍はまだ気がついていなかった。人類の未来をかけて諸国連合軍が動き出していたことを。一千万人の兵が、この地を目指して進んでいることを。


それは大魔導師エルガがその強大な魔法で安定空位転移魔導を構築していたことで可能になった。つまり巨大な空間転移陣をこしらえ、兵はそれで移動してくる。たちまち秘密裏に魔王軍の側面に展開していく。それはマティムのいる町への侵攻にとらわれ過ぎていたため、探知できないでいたのだ。もちろんエルガの巧妙な擬装もあったが。


罠を警戒しての魔王軍の森への空爆は、じつはマティムの巧妙な誘導による時間稼ぎだったのだ。魔王軍の翼竜隊が空爆する間、諸国連合軍の移動に十分時間を使える。




「魔王さま、あらかた罠は焼き払いました。あとはあのちっぽけな町に空挺を降下させるだけです」


そうアストレルは自慢げに言った。お前の発案でもないだろうに…何手柄たてたみたいな顔してるんだ?バカなやつ。あれだけの罠を仕掛けたやつだ。みすみす黙って空挺を降下させるわけはないだろう。きっと何か仕掛けてくる。だがそのときが勝負だ。あたしの大規模魔導で、一瞬で炭にしてやる。もちろん翼竜ごとな。


大型翼竜は魔族兵を背中に乗せ、大挙して町の上空に押し寄せて行った。



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