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4 魔王軍進軍する


「ゴリエス将軍がお目にかかりたいと」


魔族軍第一軍団の将軍ゴリエス。強大な魔力と統率力で、あたしの父である王に次ぐものと言われている。やれやれ、今度はどんなおべんちゃらを。


「これは姫さま、いつ見てもお美しく…」

「控えなさいっ!ゴリエス将軍。姫さまなどと。メティアさまは魔王になられたのですよ!」

「これは失礼しました、ファリエンド侯爵どの…」


あたしの取り巻きのひとり、ファリエンド。魔族の女侯爵でゴリエスと並ぶ実力を持つ。女のあたしが言うのも変だけど、うっとりするようなプロポーションにはいつもドキドキさせられる。


「わたしに謝罪などいらぬ。魔王さまにそれを言上しろ!」

「重ね重ねご無礼を…。いやこのゴリエス、戦場が長いもので作法を忘れましたか」

「調子のよい言い訳を」

「まあまあ、将軍も悪気があったのではないでしょうから」


なだめたのはアストレル。魔族軍騎兵団団長。こいつもあたしの取り巻きのひとり。『暴風の青髪』と人間に恐れられるほどその攻撃力は凄まじく、彼に率いられる騎兵団が通ったあとは、生きているものがいないと言われるほど熾烈な戦いをする。そしてそのイケメンっぷりも半端ではない。まあ、あたしの兄さんに比べたらなんてことはないけど。


「ようやく勇者を始末したご報告に、と。少々舞い上がってしまいました。ご無礼を、魔王さま」

「勇者か」

「魔族、魔獣あわせて五十万をかけてようやく討ち取りました」


まったく何考えてんのかしらねえ。五十万の命と引き換えに勇者ひとり、ってか?そんなに勇者が恐ろしいの?


「これでこの世界にいると推定される勇者はあと二人。魔王さまにおかれましては、もうすぐなんの憂いもなき世となりまする」


そうだった。魔王の天敵は勇者なのだ。勇者しか魔王を倒せない。しかしその勇者は、それこそ莫大な命の代償をもってすれば倒せないこともない。まったく神は無慈悲だ。どれだけの命を奪うつもりだ。いやそもそも神は人の感情さえ持っていない。慈悲など存在しないのだ。


「勇者の名は?」

「オルギス。勇者オルギスと名乗りました」

「丁重に葬ってやれ」

「いつもながら魔王さまの深い慈悲の心に、胸打たれる思いです」


魔族の、この魔王たるあたしに慈悲?とんでもない。あたしには一片の慈悲も愛も、この世界のものに感じない。だからあたしは目の前でひとがどれだけ死のうが、魔族がどれだけ死のうが気にならない。父だけはそれを知っていた。だから父もそう思ってあたしを魔王にした。最後の命を削って。この地上に、最後に立っているものは、あたしひとりだと知って…。


「全軍に命ず。進軍を開始せよ。この地をすべて燃やしつくすのだ」

「は!」


ゴリエス将軍とあたしの取り巻きの魔族どもは一斉に声をあげた。これから人間をひとり残らず殺しに行く、その雄たけびだった。


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