俺と私の『本音』2
「ふぅー…落ち着きました。ありがとうございました。それと…
よく分かりました。…夏目くんが私になーんにも魅力のカケラも感じていないと言う事に…」
「その言い回しやめてくんない!?敵に回す奴、多そうだからさ!」
かれこれ時間が経ち九条は落ち着きを取り戻した。
目元が赤いが、そんな冗談を言うんだもん、心配した気持ちを返してほしい。
えっ何その目、冗談じゃなかったの!?
そんな調子で翻弄される俺、さっきまで調子乗った発言が形無しである。
確かに九条じゃなくても俺に頼られたら、事情次第で助ける。
それを周りくどく言ったけけどさ。
そ、そんな頬膨らましてそっぽ向いても…可愛いとしか言いようがないぞ…。
「な、なぁ、機嫌直してくれよ!九条さんに魅力が無いわけないじゃん?」
なんか言わされてる感があるが大丈夫だろう。しばらくすると彼女は他所に向いていた首を
俺のもうへ向き直し、ちょっと口元を綻ばせている。
その口元をを見ていた俺はあからさまに同様した…だ、だって…
「……ふっ、冗談ですよ。多分…うん、もう私迷いません。夏目くんのこと信じます」
なんて言って、彼女は軽く微笑む、ボソッっと言った多分の言葉が気になる…恐らく九条は俺が聞き逃していると思うが俺の耳は確実に聞いていた。
それよりもだ、俺の前で軽くだが微笑んだのだ。
分かっていたけど、彼女の笑った顔は情けない話、俺の心臓のキャパ的に
見ていられないほど、破壊力満点だった。
神が直接手を加えたのでわないかと疑うほどに、整った顔のパーツの3つを動かすだけで大変な事になる。
目尻をちょっと下げ、いつもぱっちり開かれた二重瞼を半分下ろす。最後に薄ピンク色のプッルプルな唇を
緩ませて口角を上げれば…はぁ、ついついため息が出た。
(これは大変だ…)
これは比喩だが、学内で戦争が起こるかも知れん。
この笑みより控えめな顔で争いが起きた所を見たからこそ分かる。
こんなも振りまいていたら良い意味でも悪い意味でも死人がでそうだ。
そんな俺の思うもつゆ知らず、九条は俺のため息に反応してジト目でプリプリ怒り出した。
「なんですか?そのため息?失礼しちゃいますね!せっかくの乙女の覚悟なのに!」
こんなこと言い出した。これ怒ってんのか?それが最大も疑問だった。
まぁいいだろう、ちょっとタイミング的に乗っかったかも知れなけど…
彼女には近直、話とかないといけないことがあった。
「怒らせといて悪いんだけど俺も九条さんに話したいことが…」
「芽衣って…」
「ん?」
彼女が俺の言葉を遮った。ん?なんだ?
「…芽衣がいい…」
「ふぁ?」
話がわからず間抜けな声が出てしまう。
すると九条は顔を真っ赤にしそっぽ向いてのしまった。
「もぅ、いい…」
消え入りそうな声で言われて、謎の罪悪感に蝕まれた俺は「お、おう…」と
申し訳なさそうに返事をし、話を戻した。
この話は誰にも話すことなく墓まで持って行きたかった。
話し手の俺へのダメージでかい、もう思い出したくないそんな思い出。
でも九条には言わなきゃ。だってこんなにも似ているんだアイツと境遇が…。
このまま彼の二の舞になることが自分には辛くて、許せなくて…
頼った挙句、そうなってしまう前に…。
「えっとな…ふぅ…これは俺の幼馴染…だった…奴の話なんだけど…」
俺は包み隠しさず彼女に話した、絶対にも早まってもらわない為にも…
俺の最初の実家は九州にある小さな島だった。
人口の少なく、だが住む住民たちはみんな大らかで家族の様な温かな人達だ。
そして俺は3歳の時からの仲で…そうだなぁ、今でも、嫌この先ずっと、そう呼び続けるだろう。
彼は俺の「親友」であり幼馴染でもあった。子供の人口が少ないこの島では唯一の同学年の彼。
彼とは本当に遊んだことがな日がないくらい一緒の時間を過ごしていた。
親同士も仲が良く。良く片方の家でお泊りやらなんやらでよく行き来したものだ。
そう、あの日までは
俺が小学校5年の時だ。
親友の彼の両親が離婚したと、朝起きて自分の親から聞いた。当時の俺は離婚の意味が分からなくて
何が、悪いのか良いのか判断出来ないでいた。
その日、昨日まで遊んでた彼の帰り際に言った「また明日な!」の約束は果たされなかった。
同時に俺は両親の言っていた離婚と言う言葉が、良くないものだと感じた。
彼と遊ばなくなって一週間が過ぎようとしていた頃、彼は俺の家にやってきた。
いつものように屈託のない笑顔で「遊ぼうぜ!」と…
俺は怒っていた。
彼はこの一週間、学校にも来なくて
両親にも彼の家に行くことを止められ、泣き喚いてもダメだったのに
親も含め大人達に彼のことを聞いても、今はやめとけってだけだし…
俺がどんれだけ心配したと思ってんだ!!
それなのに良くも悪びれもせずにヘラヘラやってきやがって……
だから言ってしまったんだ俺は取り返しのつかない事を。
「帰れ!!」
そう言って俺は家の自室に戻った。
この時の自分を殺してやりたくなるほど、後悔するのに…
「はぁ…?何言ってんの?〇〇が死んだ?…」
彼と喧嘩別れした3日後、彼は森の中で遺体で発見された。
その事を両親は泣きながら俺に告げてきたのだ…
なんで!!、なんでなんでなんでおかしいだろ!!!!!
俺は狂って泣き崩れていたんだ。
あの日を思い出して。