コンポ買ったった…トスっ…え?
結局あの後、家の窓からお隣さんを眺めて耳を澄ましみても
あの割れた音などなかったことのように何も起こらなかった。
お陰でやるせない気持ちもまま味噌汁なしのサーモン丼をかっこみ
悶々と明日の入学式に備えて眠りについた。
次の日の入学式が終わった帰り道…
「…ってことがあってな、ムカッチャッカファイヤーですわ和人くん?。
でもコンポ買えたからどうでも良くなって来たよ。」
「現金だなぁお主、そりゃ災難なこって。んでお隣さんに文句言いに行かなかったのか?
誰かしら文句タレに行きそうなのになー。」
今、学校帰りに友人の和人と電気屋に寄って俺のコンポを買った帰りである。
なんでコンポかって?そりゃ元実家に俺専用のコンポが無かったので
親に俺の誕生日プレゼント、お年玉を返上して手に入れたお金で買ったのだ!
なんせ俺は生粋のボカロ好きだからな!これで憂いなし!
部屋で高音質で聴ける!!ぐへへ
あ、脱線してた。
「そうだよなー。まだ引っ越したばっかでご近所の事はわからんけど誰もクレームしに行く事
無くて、心配だわ。暗黙の了解てきなの?そんなドラマ的匂いがプンプンする」
「ははっ、それドラマってより、ラノベの読みすぎだろお前の場合。」
「くくくっ、…そうかも知れない。」
「ブッ!急に真顔なるなや!」
とこんな感じで取り留めのないくだらん話で笑い合う、気の合う友人。
「そいえば、くじょう?ちゃん見たか?綺麗だったなー」
和人が振ってきた話題。「九条 芽衣」
入学式で生徒代表として壇上に上がり挨拶をした少女。いや美少女だ。
ゴールドブロンド色の上質な絹の様な髪を背中の中腹まで伸ばし
ハーフなのか、それでも日本人100人中99人は可愛い、美人と言わしめるだろう
日本人よりの顔で大和撫子と言って遜色ない容姿、所作どこぞのアイドルかと思うほどに
小さく存在感かがヒシヒシと伝わる顔に相まって、出るとこは出た抜群としか言いようのないプロポーション
極め付けわ、目だ。海の様に深く、透き通っておりなんでも飲み込まれそうなあの
暗めのブルーの瞳。
俺からしてみれば、あれ?二次元から出てきちゃったの?と問いかけたくなる。
完璧と言う言葉は彼女のために誂えた様な気がしてならない。
そう思わせるほどの存在感を放っている。
「綺麗だった…うん綺麗で可愛くわあったな。」
「ん?なんだ?えらいぱっとせんのぅ?もしかして初恋か?」
「せっかちな発想だな!ちがわい!あん子全然ニコリとも笑わんやんか」
そう俺は疑問だった彼女は全く笑う素振りを見せなかった。
まるで仮面でも被っているかの様に。
素顔でも隠すかの様に。
「はいはい、悪い悪い落ち着きなさい。なまってるぞ??てかそらは知らないのか?鉄仮面の美少女の話」
「中二病か?」
和人が歯をギリギリ鳴らしながら「もう教えないぞ!」とか怒ってきた別にお前の言ったわけじゃないのに
相変わらずだ。
和人を宥めたら教えてくれた話はこうだった、
曰く そいつは笑わない
曰く そいつはいつも1人
曰く そいつは手掴みで飯を食べる
曰く そいつわは感情がない
曰く この曰くってなんかカッコいいよね!
「……」
これはツッコんだら負けのやつかな?
ソワソワしながらどうしても気になったワードを和人に問いかけた。
「手掴みで飯食いはさすがにないだろ。和人の自作自演か?」
「違うぞ、これ本当の話だ。まっ、手掴みの話は目撃者が少数だから信憑性は皆無だけどな。
あとそんなつまらない嘘は俺はつかん。」
「ついて面白そうな嘘はつくって自白してんぞ。しかしまぁ少し気味悪いな。」
「わからんでもないぞ、俺だって半信半疑だし、あんな容姿じゃ想像つかん。
……あっわりぃ史恵から連絡きたわ」
「オッケー、んじゃまた明日な久茂によろしく。うまくやれよ!」
「ありがとよ!ほんじゃ!」
そう言って和人は去っていった。和人が会いに向かった相手は俺と和人の中学時代からの
共通の友達でもある「久茂 史恵」のところへだ。最近2人は良い雰囲気らしくよくこやって下校中に
お互いの実家で行き来し遊んでいる。たまに俺も混じることがあるが、二人の輪の中に入るのわ癪だし。
史恵は中学の時から和人のことが好きでよく相談なんか乗ったりして…もう今ではいつ付き合ってもおかしくない状況。むしろ早よ結婚しろお前ら、とツッコミたくなるくらい仲がいいのに…和人も史恵の
気持ち分かってるくせして「俺には俺のタイミングってのがある!!!」って真っ赤な顔して
言ってたっけ。まったく…それでもくすぶる気持ちを押さえて停滞して仲良く遊んでるのわ
まぁあの二人は幼馴染同士て言うこともあって両親公認での
付き合いがあることが大きのかも知れない。
恋愛かぁ…
そんな、まだ初恋も経験したことない空虚で取り留めのないことを考えながら帰っていたら…
トスッ
誰かがぶつかってきた。
軽く当たるくらいで今は密着している状態、流石に誰かもわからぬ人と気まずく思い
素早く後ろへ体を引いて頭を下げた。
「すいません!考え事しながら歩いていました!」
うわーーーーーーーーーーーーっ!!!!
めっちゃ女の人だった!なんならウチの学校の生徒だぞ?!この制服……
やばい、ただえさえ思春期真っ盛りの女子高生と接触事故起こしたんだぞ!
顔覚えられて明日校内の噂、晒し者に…!なんとしても誤解を解かねば!!
いや!俺がぶつかられたから俺悪く無くね?
自問自答の末、平静を装い声をかけて誤解を解こうと頭を上げたら…
「あれ?」
思わず間抜けな声を上げてしまった。
それも、そならざるを得ない。
だってぶつかってきた相手がさっきまで和人と話題にしてた「鉄仮面の美少女」。
九条芽衣 その人だったのだから。