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37、決意


「姉さんこんな朝早くからどこへ?」


私はビクリと身体を震わせて声の方に振り返る。タイムが近衛兵の制服に身を包み少し冷たい瞳でタイムの客室の扉の前に立っていた。

タイムの客室の廊下を挟んで前が私の客室だった。


「タイムこそどうして?」


「折角だから朝の鍛錬に付き合ってもらおうと。」


タイムは私をじとーっと見ている。多分どこに行ったのか分かっているのだろう。でもだったら何故?


「どうして教えてくれなかったの?」


「ホランドは罪人です。罪人が残した財産など受け取らない方がいい。」


「じゃなくて!知ってたんでしょ!もっと前から!嘘をつかないで!」


タイム相手に怒鳴ってしまったのは初めてだけど感情の昂りを抑えられない。


「姉さんは人に興味が無い話をしましたよね。これは姉さんの事を調べたらすぐに得られる情報です。姉さんは自分に全く興味が無いんですよ。だから危ういんです!僕達が姉さんを取り戻そうとしたって姉さんにその気がなければ上手くいかない。僕分かってるんですよ昨日から姉さんずっと考えていますよねホランドと共に残るか王子と共に戻るか!駄目なんです!こうなると分かっていたから教えなかったんですよ!」


やはりタイムの洞察力と観察力は素晴らしいようだ。はっきりと言い当てられたのだから。そうよね皆がそう考えてくれているのだからしっかりしないと。


「分かったわ。戻ってくるライムの元から。」


「はい。お願いしますよ!ホランドは良い奴ですが今だけで良いのでご自身の事を1番に考えて下さい。」


「ええ。さあ鍛錬に行きましょうか?」


「はい姉さん。」


2人で鍛錬をしているとウィンター王子が現れて3人になった。1時間程でわざわざ父上が朝食だと呼びに来てくれる。4人で朝食をとった後、昨日の談話室での話の続きになった。談話室に入ると王以外にも数人増えていてその中にはダン将軍も居た。舞踏会で話をしたし目が合ったので会釈をするとそっぽを向かれてしまう。

見えなかった?不思議な感じがしたまま談話室の話し合いが始まり1番に口を開いたのはそのダン将軍だった。


「別にこんな女の1人や2人居なくなったところで痛くも痒くもない王子がわざわざ一緒に行かずとも良い!」


と私を人差し指で差しながら怒鳴った。あの日のダン将軍は幻想?夢幻だったのか?

ダン将軍が満足そうに怒鳴り終えるとウィンター王子はにこやかに例の手帳に何かを書き殴りタイムはノータイムで殴りかかり父上も王子と同様に何かを手帳に書き殴っている。

慌てて王や第一隊の隊長がタイムを取り押さえる。その間の数秒でダン将軍は制服がボロボロでヨレヨレになり顔にも数発入ったようで口が切れている。軍の実質トップをボコボコにするとはタイムは私を1番に考え過ぎなのでは?


「なんだ貴様は!宰相の息子か!不敬だぞ!」


タイムが止まったので王と隊長が手を離す。タイムは制服を整えながらダン将軍に近付き今度はそっと何かを耳打ちし始めた。ダン将軍も最初は不信そうに怒りに満ちた赤い顔でタイムの囁きを聞いていたがみるみる内に青い顔になりタイムの耳打ちが終わる頃には一回り小さくなりしゅんとしてしまった。

ここにいる全員がタイムにだけは逆らわないようにしようと決めた時バタンと扉が開いてサマー王子が入ってきた。


「どうした皆、暗い顔をしてしっかりしろ!さあ話を詰めていくぞ!」


遅刻したくせに1番明るい顔で入ってきてどんと私の前に座ったサマー王子が何だかおかしくて笑ってしまう。


「そうだケイト笑え笑え!辛気臭い顔はやめろ!さあ昨日どこまで話したっけ?父様!ほら説明して!」


本当にサマー王子は昔から変わらない、偉そうで誰に対しても態度が変わらない。


どれくらい経っただろうか昼食を昨日のサミと呼ばれた女性がワゴンで持ってきくれて軽くとり日が落ちたところでやっと作戦の流れの全てが整った。


流れとしては私と王子で馬車に乗り王都を出た所の小屋に止める。御者は小屋に着いたら馬だけを連れて馬車の中を見ずにすぐに王都に戻る。私が先に出て約束の場所まで10分程歩くライムが現れたら後からついてきていた王子がライムに話しかけ城の図面を渡し仲間にしてほしいと頼む。もし断られたら私のネックレスに付けた魔法石の力で転移してくる。どちらに転んでも王子が着いたという連絡を魔法石で父上に入れたら手紙を飛ばし始める。ホランドと話している間に王子はその場所を探りネックレスの魔法石に村人達が解放されたと連絡が入れば王子と一緒に王都に戻る。


上手くいくだろうか?皆が不安そうに考える中サマー王子はよしこれで明日はバッチリだなと笑った。結局、連絡は魔法石になったし。



約束の日の深夜、私は王子と共に馬車に乗り込んだ。私はいつもの格好で王子は完全にサマー王子だ。動きやくせ全てがサマー王子そのものだ。ぱあっと魔法がかかりすぐにサマー王子に変わる光景は魔法がつかえない私にとって不思議な光景だった。


「ケイト様、仮眠はされましたか?」


「少しだけ。王子はずっと準備をされてましたよね。お疲れでしょう起こしますので少し眠ってください。」


「いえそんなわけには。」


「今日は長い1日になります。少しは眠った方がいいです。」


頭を撫でて隣に座る膝枕をしてあげると目を閉じ穏やかな寝息を立て始めた。ウィンター王子は昨日も夜通し変身の魔法の練習をしていたので余程疲れていたのだろう。寝顔が子供のように穏やかで起こさないように馬車が止まる迄そうしていた。




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