34、選択
急いで王都に戻る。もうすぐ王都に入るという時にふわりと身体が持ち上がった。
「えっ浮いて…?誰だ!」
沿道の木よりも高くなった所でライムが現れたので思わず叫ぶ。
「何をした?ホランドに何をしたんだ!ホランドは簡単に裏切る男ではない!お前が何かしたんだろ!」
ライムを睨むが全く表情を崩さずに笑ったままだ。
「違うな。どちらかといえばお前が何もしなかった、というのが正しいのではないか?」
「は?」
「だってそうだろう。1番近い所で幼馴染みとして20年弱一緒に居たのに。俺と話しているのを見てホランドの話も聞かずに王都まで逃げ帰ろうとしている。あいつを1人残して。」
「そ、それは。」
「なんだ?」
「1度父上に相談しようと。」
「自由を得たいと言っていた割に二言目には父上、父上。そうやって色んな事から逃げ出してきたのだろう。今だってそうだホランドから逃げ出した。ちゃんとあいつを見て話も聞いてやらずに。」
「……そ。そんな事は。」
「ないか?でもまあ仕方ないか。お前は他人に興味が無いからな。見ていれば分かる。お前は自分に対するホランドの好意を分かっていながら無視し続けたのだからな。」
「違う!知らなかった!」
「とは言わせないぞ!お前に対するあの瞳分かっていたはず。お前のせいだ…お前のせいだよ!そもそもホランドが俺と関係を持ったのも俺達に情報を提供し続けたのもお前のせいだ!お前がホランドをちゃんと見てやらなかったからだ!お前が気にかけていればこうはならなかったのにその上ホランドを見捨てるとは最低だな。あははははは。」
「違うんだ。違う…違う。」
「それにホランドはお前を救う為に俺に対価を払っているんだ。お前は王子の毒味をしてよく寝込んだだろその時目が覚めるとホランドがいつもいなかったか?」
「そういえば毎回。」
「お前は元々毒には強い体質だった。まああの種族だからな。だけど2種類だけどうしても克服できない種類の毒があったんだ。化学薬品の毒と闇属性の毒この2つはお前の命を奪いかけた。その時ホランドが対価を差し出し俺が毒の効かない身体にしてやったんだ。」
「対価?」
「ああそれにさえ気が付かないお前は最低だ。ホランドの家は魔法使いの家系だそれにホランドは特別でとても強い魔力を持つ体質だった。家族みんながホランドに期待していたとても優秀な魔法使いになれるはずだった。」
「…魔法使いの家系?そうか!そうだご両親は魔法使いの養成学校の教官だった。」
どうして忘れているの?ライムの言う通り最低だ。
「お前を毒の効かない身体にする事の対価は治癒系の魔法以外全てを俺に捧げる事だった。それからホランドは家族に見放された。元々魔法使いの国に移住するはずだったんだ家族みんなでな。それなのに魔法使いの家系なのに魔法が使えなくなってしまったホランドを家族は罵詈雑言を浴びせ見捨てた。ホランドの両親は田舎に居るのではないホランドがお前に気を遣い嘘をついているだけだ本当はホランドを捨てて魔法使いの国に居る。家族の愛を犠牲にしてお前の命を選んだ。それに王都で一番腕のいい魔法使いにもなれたのにその夢も犠牲にしたお前の為に。」
「ホランド。」
「お前は王子の為に人生を犠牲にしたと思っているだろうがホランドの方がお前の為に全てを犠牲にしているぞ。ホランドの子供の頃の夢は魔法使いとしてお前を助ける事だったからな。ふふふっそれなのにお前はあははははケイトを捨てると言ったんだろ。ホランドが重い対価を払って繋ぎ止めてくれたケイトを本人の前で捨てると!」
「それは知らなかったから。そこまでホランドが。」
「無知は罪だ。」
「……そんな。ホランドが私の為に。」
「お前は俺からホランドを助ける事ができなかった。あの村人達も俺から助けられなかったが。今なら村人達は助けられるぞ!」
「どういう事だ?何でもする!」
「俺の元へ来いケイト。お前と村人200人と交換だ。」
「200人?」
「ああ以前に拐った村人も返そう。お前が俺の元へ来るならな!さあどうする?」
「私がお前の元へ。魔物の元へ。」
「考える時間をやる3日だ。3日後の朝日が昇る時間にここへ来い。」
ライムが腕をあげると消えてしまった。そして私もゆっくりと地面に着いた。
「……父上と王に相談しなければ。」
私は走って王都に入った。




