30、お茶会
父上がお茶に誘えだなんて珍しいので夕食後すぐウィンター王子に手紙を書き城へタイムに魔法で送ってもらうと30分で返事が届き明日お昼前に迎えに行きますと断言してあった。
「返事も予定も早くない?私は暇だと思われてる?確かに明日は予定ないけど。」
「いいえ姉さん王子はきっとストーキングをしてて姉さんの予定を把握しているんですよ。そんな男やめて僕といましょう。僕は見た目も中身も良いですし姉さんの意見を尊重しますし一番姉さんを理解してますし姉さんの全てを愛しています。」
「はいはい分かった分かった。ストーキングなんてそんなわけないでしょ。第二隊の隊長で王の後継者に急遽なったんだから忙し過ぎてそんな暇あるわけがない。」
タイムに言うとチッと舌打ちをした後、不機嫌そうに、
「そうですね多分父上が犯人だと思います。」
と言い部屋に戻ってしまった。
「父上が何故?」
謎は深まる一方だが私も眠り明日に備える事にした。
「ケイト様本日はお誘いありがとうございます。では参りましょうか。」
「ええ。」
11時きっかりにウィンター王子はいつもの近衛兵の制服で家に現れた。私は目についたレモン色のワンピースをクローゼットから引っ張り出し腕を通した。ウィンター王子と庭で初めて話をした時に着ていたドレスと同じ色だと思い出し何となくそれ以外目に入らなくなってしまったのだ。お茶会の会場は城の庭で2人だけでひっそりと始まった。王族なのに付いてくれる人もお茶をいれてくれるメイドも執事もいない。
「それにしても誘っていただけるなんてとても嬉しいです。」
「王子とお話ししたかったので。でもまさか2人きりとはびっくりですが。」
いつもの胡散臭い笑顔ではなく屈託のない笑顔に驚きつつ王子がいれてくれた紅茶を口に含む。とても美味しい。テーブルにはチョコのスコーンとローストビーフのサンドイッチ、ビーフカツのサンドイッチその横は何故かコーンスープとプリン、ティータイムのお供にしては異色過ぎるが全て私の好物。食器やランチョンマット、テーブルクロスは全て海のモチーフで統一されている。
怖いこのテーブル上には私の好きな物しか存在しない。そして目の前にはニコニコと楽しそうなウィンター王子が嬉しそうに紅茶を飲みながらスコーンをちぎって食べている。これはこれは本当に家族のほとんどを味方につけたようだ。あの表情に弱い事は母上から食の好みはコリンから海の事はきっと父上から。私は呑気に何も考えず王子とお茶をするだけと思っていたがどうやらここも戦場のようだ気を引き締めた方がいい。王子は入念に準備し場を制していて私は圧倒的にふりな状況だ。
「父上がタイムがいつも世話になっているからぜひ一緒にお茶をと言いまして。ご迷惑でなかったのなら良かったです。」
あくまで自分の意思ではなく父上に誘えと言われたと距離を置く。王子は悲しむ様子もなく分かっていたとでも言う風に頷き私の手を握る。
おいスマートなボディタッチを止めろ。
「迷惑だなんてとんでもない!そうだお茶や食べ物は全て俺が用意したんですお口に合いますか?」
えっこれら全て王子が?私は料理が全く出来ないので素直に尊敬してしまう。
「はい全て美味しいです。お料理もできるなんて王子は凄いですね。私、料理は全然なので。」
「よかったぁ心配だったので美味しいと言ってもらえて嬉しいです。気に入っていただけたのなら私が毎日作ってあげますね。」
なんだか今日の王子は素直に感情を表に出している。笑った顔が可愛らしくやはりタイムと同じ年齢なんだと安心した。
「そうだケイト様プレゼントがあるんです。どうぞ。」
そう言って私の好きな水色のリボンがあしらわれた白い箱を渡された。開けてみてくださいと促されるままにリボンを解くと中にはアロマキャンドルが入っていた。しかも私の大好きなバニラの香りのアロマキャンドル。
「嬉しいです!これ大好きで昔からお気に入りなんです!王子ありがとうございます!」
嬉しくて少し大きな声でお礼を言うと王子はより一層笑顔になり、
「ケイト様の笑顔が見られて幸せです。」
と優しく言う。なんだか恥ずかしくなってきたので私もスコーンを食べているとウィンター王子がまた優しく微笑んだ。このままではまずいぞ、とにかく今はシーナそれだけを考える。
王子が楽しそうに最近読んだ本の話を始め同じ小説家の先生が好きだと言うことが分かった。これには素直にびっくりしていたのでまだ得ていない情報だったらしい。小さな革の手帳を取り出してつらつらと何かを書き始めた。
「あら王子何を書いてるんですか?」
何となく私に関する事なのだろうと分かっているがわざとらしく聞いてみる。
「これは…。」
王子が頬を赤らめ俯く。こんなウィンター王子見た事ない。どんな時でも表情を崩さない彼が。
「大丈夫ですか?お顔が赤いですが。」
「だ、大丈夫です!これは大事な事を書いておく手帳なんです!色んな事を忘れないように。」
「ふふっそうですか。」
幼い子供のように手帳を身体の後ろに隠してしまった事がおかしかった。
そんなゆったりとした時間を断ち切ったのは大きな人の声だった。
「ケイト!どこだ!」
「ホランド?」
どうやら声の主はホランドのようだ。まだ姿は見えないが私を探しているようなので椅子から立ち上がり声をあげようとすると王子に後ろから抱き締められ手で口を塞がれた。
「…ケイト様もう少しだけ一緒に。…ごめんなさい分かってますきっと緊急事態だ。……あの本当は一度も父様はケイト様と結婚しろと俺に言ってません。ただの俺の願望です。ずっと昔から俺だけがそうなればいいと思ってるだけなんです。今まで嘘をついててごめんなさい。愛してくれなくていいからお願いだから嫌わないで。」
今日この数時間で王子について分かった事がある。努力をして大人の中でさえ認められるように弱音を吐かず生きてきた王子だけどやはり子供だまだ18歳の子供。子供の時に甘えなかったから今になって甘え方が分からないただの子供。
そんな王子にどことなく自分自身が重なって愛おしく思った。王子が弱々しく私の口を塞いでいた手をおろし私を解放したので王子の方へ向き直る。
「王子、今度はいつにしますか?お茶ではなく何処かに出かけるのも良いですね。」
「えっ?」
王子が顔をあげて目を見開き私を見たので微笑む。王子はまた頬を赤らめ嬉しそうに頷いた。
「はいぜひ!何処でも!ケイト様と一緒なら何処でも!」
「ええ。じゃあ今日はこれで切り上げましょうか。そのサンドイッチとスコーンを頂いてもいいですか?」
「ええどうぞ!たくさん作ったので!」
どこから出したのか分からないバスケットに嬉しそうに詰め始めた時ホランドが現れた。
「ケイト!ああウィンター王子もお騒がせしてすみません。街の外れに魔物が現れたようで近衛兵は出動です。私も一緒に参ります。それで何故か第一隊の隊長がケイトも来てくれと。」
話を聞いて先に口を開いたのはウィンター王子だった。
「何故?ケイト様は近衛兵ではありません。そんな危ない場所へ行かせる訳には!」
「それが隊長は騎士学校時代は教官をされていたのですがケイトの腕をとてもかっていて。ケイトがギルドに所属しているのを知って報酬を払うから来てくれと。」
「ああそういう事ですか。ケイト様はどうされますか?」
「ご指名なら行きますよゼロとして。」
「じゃあ着替えを。」
王子が魔法でいつもの格好に着替えさせてくれた。
サイズがピッタリなのは母上かコリンに聞いたと言ってくれ頼む!
なんだか恥ずかしくなってローブのフードを被った。
「ケイト様顔を出してください勿体ない綺麗なお顔なのに。」
素でウィンター王子が言ったのでますます深くローブを被った。ホランドに連れられウィンター王子と共に近衛兵の屯所へ向かうと近衛兵の殆どがもう集まっておりタイムの姿もあった。目が合うと犬がしっぽをふるように嬉しそうに手を振ってくれるので私も手を振り返す。第一隊の隊長の話が始まったので手を振るのをやめて話を聞く。
「あーそのとりあえず第一隊から5人、第二隊から5人とそこのギルドから派遣された1人の11人で任務についてもらうので今から5分で話し合え。魔物は近隣の村を荒らし回った後、王都に来たようで腹もふくれているし魔力も充分で強く手も足も出ないようだ。はーい行く人ー?」
いやこの流れで手を挙げる者はいるのだろうか…って居た。私が行くと知って嬉しそうに笑顔で手を挙げた愛らしい馬鹿の弟が居る。
「よーしじゃあタイムだな。こっちへ。」
隊長に言われすぐに私の隣に来てピッタリと横にくっ付く。呆れたようにホランドも手を挙げた。
「ホランドありがとう。こっちへ。」
「じゃあ私も行きます。」
ウィンター王子が言うと第二隊から後を続いて数名の手が挙がり第二隊の5人は決定した。
「おーい第一隊は後4人誰だー。5分経つぞ!5分過ぎたらこっちで決めるぞ!」
子供か!と見ていると1人手を挙げた。筋肉隆々の若者で隊長に声をかけられる前に私の前に歩いてきた。
「うっす!ケイト先輩っすよね?自分ケイト先輩の練習試合全て見たっす。2年下だったんすけどずっと憧れてたっす。サマルっす。よろしくっす!」
「ありがとう。よろしく。」
急にグイグイこられてびっくりしたがいい子そうだ。その後は結局、隊長が数人選び11人で魔物がいるという場所へ移動した。王都と村を繋ぐ一本道の街道で、隠れる場所といえば脇の森位だ。先に第二隊が偵察へという流れなのだがタイムが私から離れようとせずウィンター王子がイライラとし始め仕方なく一緒に偵察に向かう。
「大きいな。」
第二隊の1人が呟く。確かに大きい3メートル程の身長がありそうだ。横にも大きいので力が強いが俊敏ではなさそうな魔物で顔が豚に似ている。街道の途中で酒盛りをしている大きな魔物を囲んで小さな魔物がたくさん楽しそうに酒をあおっている。
それにしても偵察をするのに木登りをさせられるとは思わなかったけど確かに木の上は葉で紛れられるし死角にもなっている。私もバスケットの中に手を突っ込みサンドイッチを食べながら辺りを見渡す。
「周りの雑魚、数が多いな。姉さん何食べてるんですか?ふざけてます?」
タイムが真面目な顔で言う。真面目な顔するなら手を離してくれ。それにふざけているのはどちらかというとお前だ。タイムが駄々をこねるのでさっきからずっと手を繋いでいる。
「一度第一隊の元へ戻りましょう。」
ウィンター王子が言い皆で木から降りた。木を降りる姿はなんともシュールで馬鹿っぽい。
「という事なんです。」
ウィンター王子が見たものを事細かに話し終えると第一隊が相談を始めた。第一隊は先陣を切り敵をバラバラにさせるという役割があるのでどのような作戦で行くのか話し合い始めた。第二隊も話し合いの行方をうかがっている。
「大丈夫っすよ!」
いきなりさっきのサマルが叫び私を指差す。
「だってあの戦姫がいるんすよ!戦鬼とも恐れられたケイト先輩っすよ!」
皆はキョトンとした表情でサマルを見て私を見た。この場でサマルだけが楽しそうに…いやサマルとタイムだけが楽しそうに私の強さや過去の試合の出来事を話している。
お願いこの2人を誰か黙らせて!恥ずかしくて仕方ない。正直もう帰りたい。
「とにかく皆大丈夫っす!ねっケイト先輩!」
こいつ。本当に。
「サマル落ち着け。とにかく俺が前に立つ。それで良いですよね隊長?」
ホランドがサマルの肩を叩きウィンター王子に聞くが返事は必要ないと思っているのか返事を聞かずに歩いていってしまった。
「なんだアイツ王子に。」
「本当に。いつも無愛想だ。」
「王子の返事を待たないなんて不遜だ。」
「良いからお前達も準備を始めろ!」
ウィンター王子が叫ぶと皆が素直に返事をする。
「「「はい!」」」
第二隊は統率が取れているが第一隊はバラバラで心配だ。こちらについていった方が良いだろうな。
「ケイト様は私と一緒です。」
ウィンター王子が何かを察したように言う。
「うーんでも。」
「ケイト様は俺と。」
本当にこの表情には勝てない。ウィンター王子の捨て犬顔に負けているとサマルが慌てた様子で走ってくる。
「ケイト先輩!ウィンター隊長!まずいっす!ホランドさんが先に1人で行っちゃいました!」
「えっ!」
私は慌てて剣を掴み周りを見たが隊員達は慣れた様子でまだ準備を進めている。ウィンター王子がサマルに優しく微笑み説明し始めた。
「君は近衛兵に配属されたばかりだから知らないだろうけどホランドさんはいつも1人行動で割と勝手に動いてしまう事が多い。だから今は急いで準備を終えなさい。」
「はい!」
サマルが急いで準備を進める。
「ウィンター王子ホランドはいつもこんな感じですか?」
「ええ。だから隊長に任命されないんです。他の隊員を置いて行ってしまうから。」
「そうですか。じゃあ私も先に行きます。」
ウィンター王子とタイムが止めるのを振り切ってホランドの後を追う。
さっき魔物が居た場所に来ると話し声が聞こえてきたのでさっきと同じように木に登り話を聞く。
「あいつに伝えろ無理だと。」
「ぶひひ、俺様は連れて来いと言われただけだから関係ない。それにお前もあの方の言う事を聞くしかないのでは?」
「それは。」
ホランドがさっきの魔物と話をしている?どうして?
「俺は対価を差し出した!」
「ぶひひ、とにかくあの人間はもらって帰るよ。」
「駄目だ!」
ホランドが魔物に向かっていく。魔物は読み通り動きが遅いがホランドの剣を掴み5メートル近く投げ飛ばした。ちょうどそこにウィンター王子が駆け付けてくれて魔法で衝撃を緩和してくれたようだ。
魔物達がこちらの姿を確認すると隊列を組み村の方へ行かせないように道を封鎖し始めた。封鎖といっても小さな魔物の肉壁だが充分効果的な数だ。
「ホランドさん大丈夫ですか?戦えますか?」
「ああ勿論だ。」
「じゃあよろしくお願いしますよ。第一隊前へ!第二隊は後ろから魔法で雑魚を!」
「「「はい!」」」
私は時を見計らい誰にも見られずに木から降りた。ホランドが魔物と話を。
駄目だこんな話、絶対に他言できないがかといって解決策も見当たらない。ホランドが魔物と。まさか内通者?
「とにかく今はあの魔物を。」
視線を魔物達に戻すと第一隊は少し苦戦しているようだ。小さい魔物の数が多くその中の浮いている個体が毒を浴びせてくるので体力を奪われ大きな魔物まで攻撃の手が届いていない。
「ケイト様!ご無事ですか!良かった!」
ウィンター王子がほっとしたように声をかけてくれた。
「ああ。とにかく道を開くよ。」
そして小さい魔物の群れの中に飛び込む。あまり血が飛び散らないように踏み込みと同時に剣を振り抜く。周りの魔物がバタバタと地面に落ちた。そしてまた一歩と進み魔物が地面に落ちていく。これで怯えて逃げてくれればいいと思っていたが一匹も逃げてはくれないのでただ剣をふる。
「タイムの姉貴なんだよな?元王子の婚約者の。」
「おいおい王妃って柄じゃねえよ。」
「騎士学校時代試合は負けなしっすよ。」
「あの姿は確かに鬼だな。」
魔物が向かって来るのを受け流し、後ろから蹴り飛ばしその魔物の前にいた魔物ごと斬る。数は減ってきているが異様に村へ行くのを邪魔するので村の状態が気にかかり少しずつ村の方へ前線を押し上げる。
ホランドがサポートにまわってくれて死角から狙ってくる魔物を斬ってくれている。第二隊は毒の治療に専念していて攻撃まで手が回らないようだ。魔物が斬っても斬っても現れるのでどこかにあの黒い穴があるようだ。大きな魔物も戦いの最中消えてしまった。
「ホランド多分サンラと同じ穴があるはずだ。きっと村に。」
「はぁはぁ、ああそうだな。」
とにかく今はホランドを信用し魔物を倒し続ける。足元に血溜まりができても返り血でローブがドロドロになっても前に進み続けると小さな魔物が後ろに下がり最初に確認した豚の魔物が現れた。
「ぶひひお前を知っているぞ。以前もこのように俺達を殺しまわった。」
「今すぐ退けばそんな事はしない。穴を塞ぎ帰れ。」
「それはできないなぁこの先の村を滅ぼす事が俺達の任務、だがそれも終わった。既に村人は全員俺達の手におちた。」
「なんだと?」
確かに酒盛りをしている時点で疑うべきだった。私達は遅かったのか。
「今頃あの方が村人を食べるか力だけを吸収しているだろう。今退けばそこにいる雑魚どもは見逃してやろう。だが女お前はここに残れ。あの方がご所望なのだ。」
今までの魔物とは違う冷静な魔物だ。あの方?まあサンラであれ程魔物を倒していれば魔物に目をつけられてもおかしくはない。
「ケイト魔物の話など聞く耳を持つな!きっとお前を惑わせる!」
「ぶひひ。うるさいぞ人間。」
「とにかく私の考えは変わらないここで退けば命は取らない。穴を塞いで帰ってくれ。」
「ぶひひ。だからそれは無理だそれに今更私やここの魔物を倒してどうする村人は既に。」
「なら戦うしかないか。」
「いいぞ女。かかってこい!」
「タイム!ケイト様が前に!」
「落ち着けよチビ。大丈夫だ。」
姉さんは道を開くと言って一番前で魔物と戦い続けている。ホランドも横で戦っているが姉さんについて行くのがやっとのようで肩で息をして時折膝をついている。それにほとんど姉さんが倒してホランドが倒し損ねた魔物さえも姉さんがとどめをさしている始末。
毒を癒してやった第一隊は復帰し姉さんの後ろに隠れ毒を庇ってもらって戦っている、姉さんは気付いていないが。
僕に落ち着けと言われてウィンターは何かを堪えて第二隊に命令を下した。
「私とタイムはあの前線で2人のフォローに入る。お前達2人は第一隊に毒が当たらないように魔法壁を交代で張り続けろ。もし毒が当たった者が出たらすぐに後ろに下がり毒を癒してやれ。残りの1人は応援を呼びに転移で王都に戻れ!」
「「「はい。」」」
3人は言われた通り動き始めた。
「タイム聞いていた話だとあの大きな魔物しかいないはずだった。それが蓋を開けてみればこの有様だ。」
「ああだが姉さんとホランドは何となくこうなると予想していたみたいだぞ。穴がどうとか話している。」
「そうか。」
ウィンター越しによく見ると最初にいたあの豚が姉さんの足元に横たわっていた。僕とウィンターが前線に向かう前に魔物の討伐は果たされた姉さん1人の力で。ホランドは少し離れた場所で疲れ果て座っている。第一隊の隊員は魔物を倒した姉さんを見てそれぞれ喜んだり驚いたりして士気が高まったのか活き活きと魔物を倒し始めた。
「ウィンター終わったようだ。姉さんが終わらせた。」
「なんだと!信じられない強さだな。第一隊の隊長が無理を言うのも納得だ。」
「ここにいるのが馬鹿ばかりで本当に良かった。気付いた奴がいるなら記憶を消さなくちゃならない。」
「なんだ急にどういう意味だ?」
「姉さんとずっと一緒に居るつもりならしっかり見た方がいいそして考えろ。姉さんは強いがあの豚はボスクラスだあんな一瞬で倒せる方がおかしい。サマルと盛り上げておいて本当によかった。」
「タイム?」
「姉さんは普通の人間じゃない。」




